地政学(Geopolitics)は国際政治の動向を地理的な視点から観察する学問である。人間は地表上に生活しているが、地表には陸地と海洋から構成されており、人間の主要な生息地は陸地である。地球上にはユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸、南極大陸の七大陸がある。特にユーラシア大陸は地上最大の大陸であり、ランドパワーを有する大陸国家の拠点となりうると考えられている。

一方で海洋は食料生産や交通などの面で沿岸部に居住する人間の重要な地域であった。海洋は北太平洋、南太平洋、インド洋、北大西洋、南大西洋、北極海、南極海に大別される。海洋はシーパワーを有する海洋国家が海軍力を以て支配しうる地域として考えられている。ランドパワーを持った国家とシーパワーを持った国家はその勢力が交わる部分、すなわちユーラシア大陸沿岸部のリムランドで衝突することになるため、ユーラシア大陸の沿岸部は武力衝突の危険性が比較的に高いと考えられる。

地政学的な視座によれば人類史はこのランドパワーとシーパワーが世界覇権を争奪する歴史であったと考えられている。近代における南下政策を推進するロシア帝国に対して封じ込め政策を展開した大英帝国や冷戦期において共産圏拡大を企図するソヴィエトとこれを阻止するために封じ込め政策や軍事介入を行ったアメリカがその代表的な事例として挙げることが出来る。

軍事力はそれぞれのパワーの根本的な役割を担っており、すなわち陸地で作戦して陸上優勢を獲得する陸上戦力はランドパワー、水域で作戦して海上優勢を獲得する海上戦力はシーパワー、空域で作戦して航空優勢を獲得する航空戦力はエアパワー。また軍事力は人員や装備などの有形戦力や戦略・戦術や指揮統率や士気などの無形戦力などにも分類される。関連する産業や地理や軍事技術なども含める場合があり、その総体がパワーとして呼ばれるものである。