Ag は白色の金属光沢をもつ金属である。すべての金属の中で、熱伝導性と電気伝導性が最も高い。

銀の単体
銀の単体

銀イオンの水溶液は無色であるが、水酸化ナトリウム水溶液、または少量のアンモニア水を加えると、酸化銀(I) Ag2O の褐色沈殿を生じる。

2Ag+ + 2OH- → Ag2O↓ + H2O

この沈殿に、さらに過剰のアンモニア水を加えると、沈殿が溶けてジアンミン銀(I)イオン [Ag(NH3)2]+ を生じ、無色の水溶液となる。

Ag2O + 4NH3 + H2O → 2[Ag(NH3)2]+ + 2OH-

銀イオン水溶液にクロム酸水溶液を加えると、クロム酸銀の赤褐色沈殿を生じる。

2Ag+ + CrO42- → Ag2CrO4

銀イオン水溶液に硫化水素を通じると、硫化銀の黒色沈殿を生じる。

2Ag+ + H2S → Ag2S↓ + 2H+
  • ハロゲン化物イオンとの反応

銀イオン水溶液に塩酸HClを加えると、塩化銀の白色沈殿を生じる。塩酸に限らず、ハロゲン化水素の水溶液を加えると、ハロゲン化銀の沈殿を生じる。

Ag+ + Cl- → AgCl↓(白色)
Ag+ + Br- → AgBr↓(淡黄色)
Ag+ + I- → AgI↓(黄色)
  • ハロゲン化銀

フッ化銀 AgF 以外は、水に溶けにくい。塩化銀、臭化銀は、アンモニア水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、シアン化カリウム水溶液全てに、錯イオンを形成して溶ける。水溶液はいずれも無色。ヨウ化銀はそもそも溶解度が非常に小さく、いずれにも溶けない。(水に対する溶解度は10^-8mol/L、アンモニア水に対する溶解度も10^-5mol/L程度と、非常に小さい。) (Wikipediaの「ハロゲン化銀」のページも参照のこと)

また、ハロゲン化銀は、光を当てると、分解して、銀が遊離する。この性質を感光性(かんこうせい)という。カメラ(アナログカメラ)の写真は、この性質を利用している。カメラのフィルムには臭化銀などが感光剤として含まれており、その感光性から写真を撮影することができる。

塩化銀の沈殿にチオ硫酸ナトリウム Na2S2O3 水溶液を加えると、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオンを生じ、無色の水溶液となる。

AgCl + 2Na2S2O3 → [Ag(S2O3)2]3- + 3Na+ + NaCl

イオン化傾向 編集

銀はイオン化傾向の小さい金属であり、塩酸や希硫酸には溶けない。しかし、熱濃硫酸や硝酸といった酸化力の強い酸には溶けて気体を発生する。

熱濃硫酸: 2Ag + 2H2SO4 → Ag2SO4 + 2H2O + SO2
濃硝酸: Ag + 2HNO3 → AgNO3 + H2O + NO2
希硝酸: 3Ag + 4HNO3 → 3AgNO3 + 2H2O + NO↑