高校化学 銅
銅(Cu)は赤色の金属光沢をもつ金属である。展性・延性に富み、電気伝導性・熱伝導性が大きいことから、電線、調理器具、装飾品等、幅広く用いられている。
銅は空気中で風雨にさらされると緑青(ろくしょう)と呼ばれる青緑色のさびを生じる。たとえば名古屋城の屋根や、アメリカの自由の女神などは緑色をしているが、これは緑青によるものである。
(※ 範囲外? )緑青について、第二次大戦前のかつては、緑青は毒性が強いと考えられていた。しかし、戦後、動物実験などによる検証の結果、緑青に毒性はほとんど無いことが分かった。
製法
編集銅の鉱産資源は、化合してない単体が産出することもあるが、ほとんどは黄銅鉱( )などの鉱石として産出する。 銅の鉱石を加熱してニッケルや金などの不純物を含む粗銅(そどう)を作り、これを電解精錬することにより純度の高い銅が得られる。電気精錬では、硫酸銅(Ⅱ)水溶液を電解液として、陽極には粗銅板を、陰極は純銅版として電気分解をすると、陽極の粗銅が溶解して銅(Ⅱ)イオンを生じ、陰極には銅が析出する。
- 陽極:
- 陰極:
陽極の下には溶液に解けなかった不純物がたまる。これを陽極泥といい、金や銀などを回収することができる。
化学的な性質
編集銅は塩素と激しく反応して、塩化銅(Ⅱ)を生じる。
銅はイオン化傾向が小さく、希硫酸や塩酸には溶けない。しかし、硝酸や熱濃硫酸(濃硫酸に加え加熱したもの)といった酸化力の強い酸には溶けて、銅(Ⅱ)イオンを生じる。
- 希硝酸:
- 濃硝酸:
- 熱濃硫酸:
水溶液の性質
編集銅(Ⅱ)イオン( )水溶液は青色をしている。これに水酸化ナトリウム水溶液、またはアンモニア水を少量加えると、水酸化銅(Ⅱ)( )の青白色沈殿を生じる。
これに、さらにアンモニア水を過剰に加えると、テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン を生じて溶け、深青色の水溶液となる。
化合物
編集酸化物
編集水酸化銅(Ⅱ)を加熱すると、黒色の酸化銅(Ⅱ)( )を生じる。
酸化銅(Ⅱ)は黒色であるが、高温で加熱すると赤色の酸化銅(Ⅰ)( )となる。
酸化銅(Ⅱ) | 酸化銅(Ⅰ) |
硫化物
編集銅(Ⅱ)イオン水溶液に硫化水素 を通じると、硫化銅(Ⅱ) の黒色沈殿を生じる。
銅と硫酸の化合物である硫酸銅(Ⅱ)五水和物( )は青色の結晶である。水に溶かすと青色の水溶液となる。これを加熱すると白色の硫酸銅(Ⅱ)無水物 の粉末となるが、水を加えると再び青色となる。この反応は水の検出に用いられる。
銅の合金
編集銅は、さまざまな合金の原料である。
- 黄銅(おうどう、ブラス)とは、銅と亜鉛との合金である。
- 青銅(せいどう、ブロンズ)とは、銅とスズとの合金である。
- 白銅(はくどう)とは、銅とニッケルとの合金である。
- 洋銀とは、銅と亜鉛とニッケルの合金である。
黄銅(金管楽器) | 青銅(ブロンズ像) | 白銅(100円玉) |
- 十円硬貨は銅に、亜鉛3%と錫2%を含む青銅である。
- 五円硬貨は黄銅である。五円硬貨の質量は 3.75 g であり、これは一
匁 に等しい。 - 五百円硬貨には洋銀が使われている。