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はじめに 編集

通信制高校とはどんなところでしょうか。

小中学生の頃に不登校となったが、高校は卒業したいという子どもたちが通うところ? あるいは、若いころに高校に通えなかったお年寄りが、時間ができたため通うところ? あるいは普通の学校の枠に入りきらない天才(いわゆるギフテッド)が自由を求めていくところ?

そんなイメージを持つかもしれません。確かに、不登校児の受け入れ先という側面は間違いなくあります。少ないとはいえ中高年の方も通信制に通っているのも事実です。

しかし、通信制高校に通う生徒の大半は「普通の生徒」たちです。ずば抜けた技能を持っているような「特別な生徒」はまずいません。かつて不登校であったとしても、「できれば高校で再スタートを切りたい」と思っていることだけが、全日制の生徒たちと違う子どもたちがほとんどです。

ようこそ。10代の皆さんにはちょっぴり早すぎる「自由な学び」の世界へ。それ以上の年代の「学びをあきらめきれなかった」皆さんには学ぶことの楽しさを再び味わう機会を。

通信制と全日制の違い 編集

通学 編集

通信制と全日制の最大の違いは通学頻度でしょう。全日制は、毎日通うことが前提です(だからこそ「全日」制なのですが)。

一方、通信制は毎日学校に通う必要はありません。しかし、全く学校に通わずに済むところもあまりありません。大抵は通学日が設けられており、その日には学校に行く必要があります。これをスクーリングといいます。スクーリングについては後述します。

制服 編集

全日制との併設校の場合、全日制には制服がありますが通信制には制服がないことが一般的です。そのため、スーツなどの礼服を自分で買うように指示されることが多いです。

ただし、高校中退ないし転学で通信制に入学した場合には前の高校の制服でもよいとする学校もあります。

なお、スーツにしろ以前の高校の制服にしろ、普段のスクーリングでは着る必要はありません。あくまで、入学式・卒業式などの儀礼の場で着る程度です。

単位 編集

全日制・定時制・単位制も一授業当たりの単位が決められています。これらの高校は50分×35週を1単位とし、それが一定数になると(おおむね2~5単位)、単位取得と認定されます。

通信制は当然毎日通学するわけではありませんので、単位計算がちょっと異なります。通信制では、大体において、レポートの提出・規定回数のスクーリング出席・期末テスト合格の3つを満たせば単位認定されます。なお、これがどれか一つでも欠ければ単位は認められません[1]。また、レポートは全て提出すること、スクーリングも決まった回数出席することも必要です。これらも1つでも欠ける、つまり1回でもレポートの提出忘れなどがあると不可となります。

通信制の種類 編集

私立か公立か 編集

通信制高校はすべての都道府県にあり、かつ私立と公立があります。

公立通信制高校は、世帯収入が910万円未満であれば、「就学支援金」という補助金を受け取ることができます。そのため、授業料は実質無料となる場合が多いと思われます。ただし、公立の先生たちはどちらかというと事務的で、困ったことがあっても親身になってくれる保障がありません。

他方、私立通信制高校でも就学支援金を受け取れますが、支援金は年12万が限度である一方、授業料などが年に20万以上かかります[2](なお、学費は世帯収入によって上下します)。そのため、私立通信制高校は出費が多いのですが、その分、サポートは手厚いのが特徴です。ただし、私立通信制高校には、複数の件にわたって展開している広域通信制とよばれる高校もあります。そちらは後述しますが、サポートはアテにできません。

高等学院 編集

ところで、テレビで家庭教師派遣会社の最大手Tが「T式高等学院」というのをよく宣伝しています。この「高等学院」とは何でしょうか。

実は、これも通信制高校の「一種」ではあります。ただし、正確に言いますと「高等学院」は「高校(高等学校)」ではありません[3]。こうした学校の多くはサポート校と呼ばれ、専門学校・専修学校やT社のような教育関連企業が私立の通信制高校と連携して高校卒業までのサポートを行うことを目的としています。例えば、先ほどのT式高等学院はw:日本航空高等学校などと連携しており、レポートなどは日本航空高等学校などのものを利用します。

そのため、学歴的には「〇〇高等学院卒業」ではなく、〇〇高等学院と連携した「××高等学校卒業」となります。履歴書などで学歴を書くときには気を付けたい点です。なお、サポート校が専門学校・専修学校であった場合には独自の卒業証書も出してくれる場合があります。その場合には高校卒業資格は「××高等学校卒」、追加の学歴として「△△専門学校卒(または修了)」となります。

どの高校を選ぶか 編集

通信制高校はオンライン化と非常に相性が良いため、最近は複数の県をまたぐ広域通信制も増えてきました。

しかし、通信制高校は公立高校か地元の実績のある私立高校に併設されているものを選ぶのが無難です。というのも、IT化に伴って広域通信制高校が雨後のタケノコのように増えてきた一方で、そうした高校での不祥事も発生しています[4]。無論、全ての新設広域通信制高校が不祥事を起こしているわけではありませんが、やはり、急増とマンモス化(例えば、有名なN高は2万人の生徒がいる)は教員の質を低下させている可能性が十二分にあります。

また、広域通信制は生徒のサポートが十分ではありません。というのも、たいていの場合はキャンパスとは名ばかりの、ビルの一室などを間借りしている程度でせいぜい全国展開している塾と同程度の規模しかなく、その上教員も一日2・3人程度(しかも、パートタイムで低賃金というのもあってかやる気も低い)しかいないことが珍しくありません。当然、何かあったときの対応はほとんど期待できません。特に、発達障がいや不登校などで心理的なケアやサポートが必要な生徒は、広域通信制は基本的に向いていません

広域通信制に向いている人は、次のような人です。

  1. とりあえず高校卒業という学歴だけが欲しい人。
  2. 目標が明確で、自分が何をしたいか・何をするべきがが明確な人。

どちらも共通することは、通信制高校でのサポートを必要としない人です。言い換えると、進学・就職共に全く興味がないか、逆に進学・就職の目標のために邁進していてそれに関係のないものは一切不要という人でしょう。

サポートが欲しいという人は、サポート校か、通信制に詳しい人がいる塾・家庭教師・フリースクールを利用してもいいでしょう。後述しますが、完全に独学で通信制を卒業する人は2~3割ほどしかいません。

入学 編集

入学時期 編集

通信制が高校中退生(ないし、留年から退学のおそれがある生徒)の受け皿になっている側面があるため、4月と10月の年2回入学を認めているところが多いです。そのため、通信制では卒業式と入学式が2回行われることがあります。

入学試験 編集

入学試験はありません。中学校の調査書と入学届、その他必要書類を用意すれば合格です。一応、面接を課すところもありますが、これも不合格になることはほとんどありません。

通信制高校での生活 編集

日常 編集

スクーリングの日以外は自由です。文化祭や体育祭といった学校全体の行事もありますが、これも全日制と違って参加の義務はありません[5]。これが通信制高校の最大の特徴と言ってもいいでしょう。

その自由な時間をどう過ごすかはあなた次第です。

その時間に、自分のしたいことをしましょう。大学入試・あるいは就職に向けた勉強、アルバイト、趣味、なんでもいいです。しかし、将来の自分を見据えた行動をとりたいものです。

スクーリング 編集

登校日です。しかし、これもすべて出席する必要はありません。学校によって授業ごとに所定の登校回数が指示されます[6]。その回数分登校・授業に出席すればOKです。

部活動・生徒会 編集

通信制の生徒も部活に参加することができます。ただし、通信制の場合は毎日登校するわけではなく、かつ全員が集まることが少ないため、参加できる部活動には制限があります。大抵は全日制対象と通信制対象の部活が別となっており、かつ通信制対象の場合には大人数が集まるスポーツ(野球やサッカー)はなく、卓球やバドミントンなどの個人競技中心です。

ただし、広域通信制には場所の確保が困難なことから部活動そのものがないこともあります。

また、生徒会活動にも参加できます。生徒会も全日制と通信制が分かれていることがあります。

学校行事 編集

通信制のみの生徒を対象とした行事はなく、全日制と同時に行事に参加することとなります。しかし、前述のように、出席の義務はありません。とはいえ、もしあなたが少しでもいろいろな人に接したいと思うのでしたら、やはり可能な限り出席した方がよいでしょう。

なお、修学旅行だけは通信制の生徒はそもそも参加できないことが多いです。これは、修学旅行には学校に毎月修学旅行費を積み立てることを義務化していることが多く、通信制の生徒はその積み立ての義務がない分、参加も不可能になるためです[7]

通信制高校での学習 編集

学習の流れ 編集

大体の通信制高校は前期・後期制と単位制をとっています。

まず、前期開始前にその年度にとる科目を決めます。

決定すると、選択した科目のレポートを配布されます。このレポートを期日以内に提出していくことが単位取得のための条件の一つとなっています。

そして、科目ごとに決められた時間数だけスクーリングに参加しなければなりません。スクーリングでは小中学校や全日制・定時制のような一斉授業はありません。例えば「国語総合」の授業ならば「国語総合」のレポートをしたり、返されたレポートについての質問をしたりすることが大半です。あるいは、「国語総合」の教科書や学習書を黙読します。学校によっては補助テキストや問題集を購入させることもあり、スクーリングの間にこれを解いてもかまいません。とにかく、スクーリング中はその科目の自習をするものだと思ってくれてもかまいません。

スクーリングに所定の回数参加し、レポートも期限内に全て提出したら期末試験を受けられます。これに合格すれば、単位を認定されます。なお、期末試験のみが不合格になっても救済措置が多いため、試験が受けられる状態ならば何とかなることが多いのが実情です。また、災害などで試験が中止になる場合もあり、その場合は試験無しで合格ということもあります(ただし、追加レポートの提出を求められることもあります)。

体育 編集

すでに述べたように、スクーリングは基本的に自習ですが、例外があります。それが体育です。体育だけは自習とはなりません。しかし、通信制には病気や高齢などで運動ができない生徒がいることがあります。そのため、通信制の体育の授業は準備体操・ストレッチを行い、その後は軽い運動をするということがほとんどのようです。

NHK高校講座の利用 編集

ほとんどの通信制高校では、生徒への配慮の一環[8]としてスクーリングの代わりにNHK高校講座の視聴が認められる場合があります。この場合、一定回数(1~3回)の視聴と内容のまとめレポートの記述をもって一回のスクーリングとして認定されます。ただし、スクーリングのすべてをNHK高校講座視聴で置き換えることもできません。大体においてスクーリングの三分の一から半分までが置き換え可能とされています(この辺りは学校ごとに異なります)。

学習内容 編集

全日制で学ぶことに比べれば、全体的にとても易しい内容です。基本的に教科書とそれに付随する学習書を見ればレポートは書けるようになっています。進学校中退生ならば自学できるレベルです。

全日制との教科書難易度比較(2021年現在)
教科 比較難易度
国語総合 やや易しい
日本史・世界史 やや易しい
地理 やや易しい
現代社会 やや易しい
倫理, 政治・経済 同~やや易しい
数学I 非常に易しい
数学A 非常に易しい
数学II 非常に易しい
英語 非常に易しい
理科(基礎) 易しい
理科(専門) 同~やや易しい
家庭総合
保健・体育
芸術

それは同時に、進学などのためには通信制だけの学習では量が全く足りないということを意味します。

サポート 編集

「全くの独学により3年間で卒業できるのは20%~30%[9]」と言われているようです。

前述のように学習内容は全日制と比べれば非常に易しい内容ではあるのですが、不登校で学習のブランクが大きい生徒や中高年の学びなおしとしては決して易しいとは言えないのもまた事実です。

そのため、塾や家庭教師、フリースクールなどのサポートを受けながら通学するのが最も安全と言えるでしょう。

その後の進路 編集

進学について 編集

大学 編集

結論から言うと、通信制高校の勉強だけで大学入試(一般入試)を受けても合格することはほぼ不可能です(いわゆる「名前を書くだけで合格」と揶揄される大学は別)。もちろん放送大学をはじめとする通信制大学は書類選考だけなので合格できます。また、推薦入試やAO入試でも合格する可能性もあります。しかし、いずれにしても、入学してから非常に苦労します。

履修していない科目(例えば数学Bなど)や不足している内容は独学すればいいと思うかもしれません。しかし、高校内容の独学は現実にはほぼ不可能だと思ってかまいません。例えば、数学であればいわゆる「白チャート」が標準的な高校教科書に準じた内容となっています。それをざっと見ただけでも圧倒されることでしょう(逆に「この程度か」と思うのでしたら、通信制向きかもしれませんね)。

そのため、大学進学を考えているのでしたら、高校1年のうちから塾などを利用してサポートを受けることを考えておいた方が賢明です。

ただし、地方在住で芸大進学を目指すなら通信制は選択肢としてアリと言えます。というのも、芸大入試は実技が最も重視されます。そのためには、良い師匠につく(特に音楽系)ことや美術系予備校に通うことのほうが重要だからです。しかも、地方の場合、有力な芸術系高校が極めて少ないという現実があります。そのため、師匠の下での練習や予備校での制作に費やしたいという場合、通信制の方がより多くの時間をかけることができるからです。もちろん、各県の国立大教育学部[10]や東京芸大のように学科試験も重視するところを受ける場合には、あまり賢明とは言えませんが。

短大・専門学校 編集

短大や専門学校ならば入学試験がそれほど厳しくないので、そのままでも入学できることが多いかもしれません。しかし、基礎的な知識や学力に差があるのも事実ですので、できれば高校3年のうちに塾・予備校・家庭教師などを利用して基礎的な力をつけておきたいところです。

出典・脚注 編集

  1. ^ ただし、2022年現在、新型コロナウイルスの流行に伴い、期末テストを追加レポートに置き換えている学校が多く見られます。
  2. ^ https://www.tsuushinsei.net/article/shiritsutokoritsunogakuhinohikaku.html
  3. ^ 唯一の例外がw:早稲田大学高等学院・中学部
  4. ^ https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE28D6I0Y1A920C2000000/
  5. ^ ただし「体育祭に出れば体育のスクーリング回数に組み込む」といった扱いがなされる場合もあります。
  6. ^ おおよそ50分授業×2~10
  7. ^ こうした制度の学校は、場合によっては旅費をまとめて全額負担するなら参加可能とすることも稀にあります。
  8. ^ 例えば、対人恐怖症で人前に出られない・高齢で登校が難しいなど
  9. ^ https://www.tsuushinsei-navi.com/tsuushinsei/souiten.php
  10. ^ 地方大学の場合には大抵、国立大教育学部が芸術家育成の場所となっています。

参考 編集