高等学校世界史探究/文明の成立と古代文明の特質 学習のポイント

 人類の祖先(猿人)は、500万年以上前に地球上に誕生しました。その後、人類は原人・旧人へと進化していきました。そして、4万年前から1万年前にかけて、ようやく私達とほとんど同じ骨格をもつ新人が現れたと考えられています。この長く狂ったような時間の中で、人々は食料を集め、狩り、釣りをしていました。文字もなく、残されたものは呪術的な意味を持つ絵画や彫刻だけでした。この時代を先史時代といいます。

 約1万年前、人々はようやく農耕を始め、動物を飼い、村に住むようになりました。ここで、獲得経済から生産経済への大きな変化が、人類の生活の中で起こりました。旧石器時代が終わり、新石器時代の始まりです。西アジアや地中海東部では、初めて農耕や牧畜が行われるようになりました。新石器時代最古の集落として知られるイラクのジャルモ遺跡では、人々は主に小麦を栽培し、ヤギや羊を飼育していました。紀元前5000年頃、小麦の栽培とヤギや羊の飼育が主な活動でした。同じ頃、これらの活動はユーラシア大陸やアフリカ大陸に広がり、それぞれの地域の気候に合うように変化していきました。

 中でもナイル川、ティグリス川、ユーフラテス川、インダス川、黄河、長江の周辺では、灌漑農業の必要性から大規模な集落が形成されるようになりました。青銅器などの金属器の登場は、より多くのものを作れるようになると階級が形成されるようになりました。貴族階級は大きな集落をまとめ、都市をつくりました。都市は部族の神を祀る神殿を中心に構成され、貴族階級は農耕や牧畜をする平民や、強制的に連れて行かれた奴隷を支配しました。この時、いわゆる都市国家が成立しました。各都市国家は寺院の税金や貿易を記録するために文字を思いつきました。金属器の使用、都市国家の成立、そして文字の発明が文明の最初の兆しと考えられています。こうして、人々は文字による記録の時代、すなわち歴史時代に移り、古代文明の盛衰を見ていきます。

先史時代の年代測定
 文字による記録が残っている現在、私達は過去の人々がどのように生活し、何を考えていたかを理解出来ます。ほとんどの人は、この後の時代を歴史時代と呼んでいます。それ以前は先史時代と呼ばれ、そのほとんどは考古学的な調査から得られています。古い人類の文化の痕跡が見つかっても、それが何年前のものか(絶対年代)を把握するのは非常に難しく、研究上とても重要です。考古学以外の科学技術の進歩により、これらの遺物が何年前のものか、より正確に把握する方法がたくさん出てきています。なぜなら、それらは地中から何層にもわたって掘り起こされる場合がほとんどだからです。ここでは、一般的な方法を紹介します。

層位法

下の層から発見されたものは、上の層から発見されたものよりも古いという考え方です。しかし、その年代を知るためには、他の年代がわかっているものと比較する必要があります。

年輪年代学

木の年輪は、気象などの経年変化を表しています。カリフォルニアには樹齢7000年の松の木があります。

放射性炭素()年代測定法

生物中の放射性炭素と非放射性炭素の量は変わりませんが、放射性炭素は生物が死んだ後、一定の割合で分解されます。この性質を利用して、骨や炭化した木や食べ物に含まれるから、死後何年たったかを推定出来ます。1940年代にこの方法が発明されましたが、年齢が高いほど誤差が出やすいという指摘がありました。しかし最近、宇宙線の変化による違いを補正する方法が見つかり、精度が上がってきています。

熟ルミネッセンス法

土器に含まれる放射線の量を測定すれば、土器になる前の時期がわかります。このほか、氷河の末端の堆積物を見る氷縞粘土法、岩石の出来方を見る火成岩法(カリウム・アルゴン法)などがあります。