高等学校化学I/非金属元素の単体と化合物/水素・希ガス
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水素
編集水素は、単体として宇宙で最も多く存在する元素である。通常は質量数が1のものをH、2のものをDと書き、質量数2のものは特に重水素と呼ばれる。地球上では単体ではなく、水(H2O)として最も多く存在する。単体(H2)は常温常圧で無色無臭の気体である。
- 製法
工業的には、石油や天然ガスを高温水蒸気と反応させて、得られる。他には、純粋な水素を作る場合は、水を電気分解する。
実験室では、塩酸や希硫酸などの強酸に、亜鉛などの金属を加える。水素は水に溶けにくいため、水上置換で捕集する。
- 主な性質・反応
- 空気中で容易に燃焼し、水になる。酸素との混合気体は爆発的に燃焼する。
- 2H2 + O2 → 2H2O
- 高温では還元性をもち、高温で金属などの酸化物を還元する。
- CuO + H2 → Cu + H2O
水素は、アンモニア、塩化水素、メタノールなどの原料である。
希ガス
編集希ガスは、18族に属する元素の総称である。
18族元素は価電子をもたないため、他の原子と結合したり、イオンになることがほとんどない。したがって、化学反応を起こして化合物となることがほとんどない。また、単体の気体として、原子1個で1つの分子を形成している。このような分子を単原子分子と呼ぶ。
希ガスには次のような物質がある。これらはいずれも無色無臭で、常温常圧で気体であり、空気中にごく微量含まれている。また、いずれも融点および沸点が低い。
- ヘリウム (He): 風船や飛行船を浮かせるために用いられる。また、すべての物質の中で、融点がもっとも低いので、超伝導など極低温の実験のさいの冷媒に液体ヘリウムが用いられる。
- ネオン (Ne): ネオンサインなどに用いられる。
- アルゴン (Ar): 溶接するときの酸化防止ガスに用いられる。
- クリプトン (Kr): 電球などに用いられる。
- キセノン(Xe): カメラのストロボなどに用いられる。
- ラドン (Rn): 放射能があり、放射線治療などに用いられる。
ヘリウム | ネオン | アルゴン | クリプトン | キセノン |
希ガスは原子単体で安定なため、普通は化合物にならない。希ガスに圧力を低くしてガラス管に封入し電圧をかけることで、それぞれ異なった色の光を放つ。そのため、電球やネオンサインとして用いられるものが多い。
ヘリウム | ネオン | アルゴン | クリプトン | キセノン |
※ 範囲外:
編集- ※ レーザーについて、実は『科学と人間生活』で啓林館が紹介しているが、さすがにエキシマレーザーまでは紹介してない。ここでいうレーザーとは、いわゆる「レーザー光線」とかのレーザーの事。
- ※ wikibooksでは、『高等学校工業 工業材料/機能性材料』でレーザー材料について説明してある。また、『高等学校工業 電子回路/電子回路素子』にもレーザーに冠する記述がある。
エキシマ
編集アルゴン気体とフッ素気体をつめた放電管に放電をすることで、波長197nmの紫外線を放出する。これは、不安定なアルゴンフッ素 ArF が一時的に生成し、それが分解して別々のArとFとに戻るさいに放出される光である。
この ArF の光の波長は197nmとかなり小さいので、半導体などの微細加工に便利なので、放電管に放電をしつづけることでArFの紫外光をレーザーの光源として活用して、半導体製造のさいの光化学反応の光源に使われている。
- ※ 第一学習社の『科学と人間生活』で紹介されている、集積回路などの製造などで使われている波長197ナノメートルの紫外線レーザー光の正体は、このArF(アルゴンフッ素)のエキシマレーザーのこと。
Arのほか、キセノンでも
- XeCl 波長 308 nm
- XeF 波長 351 nm
のように、ハロゲンとの不安定な化合物によってレーザー光が放出されることが知られている。
ArFもXeClも、ともに、希ガス原子とハロゲン原子との化合物である。このように、希ガスとハロゲン分子との(不安定)化合物とのことをエキシマ(Excimer)という。 エキシマは不安定であり、光を放出して、すぐに分解して、それぞれの原子にもどってしまう。
また、エキシマから放出された光をレーザー光として活用したものをエキシマレーザーという。ArFのエキシマレーザーは半導体製造などに利用されている。
なお、Ar2のエキシマの波長はさらに短く波長 157nm であることが知られているが、しかし酸素と反応しやすいなどの特性により過去に半導体産業では開発が難航したため、半導体産業ではAr2は半導体製造用の光源としては用いられていない。(※ 参考文献: 岡崎信次ほか、『はじめての半導体リソグラフィ技術』、技術評論社、2016年 初版 第2刷、91ページ、)
- 備考: 光の波長の測定の歴史
フッ素化合物
編集キセノンとフッ素ガスを混合した気体に放電または熱を加えることによって化合し、二フッ化キセノン XeF2 や四フッ化キセノン XeF4 や六フッ化キセノン XeF6 という結晶固体を生じ、その結晶固体の色は無色である。
これらのキセノン化合物は、常温常圧で固体である。
1960年代に、アメリカ合衆国の化学者パートレットが発見した。
実用面では、これらのキセノン化合物を単離するのは難しい場合が多い。(※ 参考文献: サイエンス社『工学のための無機化学』、2016年1月新版、)
上述の各種のフッ化キセノン化合物の加水分解により、 無色の固体の XeO3 や 無色気体の XeO4 などの酸化キセノンが得られる。これら酸化キセノンは不安定であり、爆発しやすい。
かつて人類は希ガスのことを「不活性ガス」(および相当する英語)と呼んでいたが、キセノン化合物が知られるようになり、現在では「希ガス」または「貴ガス」と呼ばれるようになった。
クリプトンとフッ素の混合気体に光照射することにより、二フッ化クリプトン KrF2 が発生する。これは固体であるが、不安定であり、水と反応して分解する。(ほかにも製法はあるが、本ページでは説明を省略。)