この単元では、イオン同士が結合する仕組みと、結合したイオンからなるイオン結晶について学ぶ。

イオン結合

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 生成されたイオンには大きく分けて陽イオンと陰イオンがあった。これらのイオンは静電気力(クーロン力)で引き合って結びつく。このようにしてできた結びつきをイオン結合という。例えば、陽イオンのNa+と陰イオンのCl-はイオン結合をしてNaCl(塩化ナトリウム)となる。

イオン結晶

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イオン結晶の仕組み

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塩化ナトリウムNaClのイオン結晶の模式図

 個体のNaClは、同じ数のNa+とCl-が交互に並んだ構造になっている(図を参照のこと。紫色の球はNa+を表し、緑色の球はCl-を表す。)。このように、多くの粒子が規則正しく配置されている個体のことを結晶といい、そのうち、イオン結合によるものをイオン結晶という。イオン結晶は、全体としては電気的に中性となる。イオン結晶を表すには組成式が用いられる。組成式は化学式の一種であり、同じく化学式の一種である分子式との違いは、物体がイオン結晶を取るか否かである。(つまり、H2Oは分子式であり、NaClは組成式である。)このような違いが存在するのは、分子には区切りがあるのに対し、イオン結晶には区切りがないためであり、イオン結晶を化学式で表すのに最小単位を取ろうとしたためである。  粒子同士の結合のうち、イオン結合は強い結合であるため、イオン結晶は融点が高く、硬い。しかし、外部からの力には弱い。これは、外部からの力によって結晶がずれ、陽イオンや陰イオン同士が隣り合うことで反発するためである。また、結晶のままでは電気は導かないが、水溶液にしたり、融解させると電気を導くようになる。


イオン結晶の構造

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塩化ナトリウムNaClの単位格子

 結晶を構成する粒子の規則正しい配列構造を結晶格子といい、この結晶格子の最小の繰り返し構造を単位格子という。右の図は、塩化ナトリウムNaClの単位格子を表しており、Cl-に最も近いNa+の数は6であり、このように、ある粒子に最も近いほかの粒子の数を配位数という。NaClにおけるNa+とCl-の配位数は、ともに6である。  図より、塩化ナトリウムの単位格子に含まれるイオンの数は、点に 個、辺に 個、面に 個含まれているため、次のようになる。
Na+:   Cl-: 
よって、それぞれ4つづつあるので、イオンの数の比は Na+:Cl-=1:1 となり、組成式はNaClとなる。


金属結晶

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金属結合では、原子は規則的に配列をして結晶を作る。金属の結晶の配列を結晶格子(crystal lattice)といい、その結晶格子の最小となる単位を単位格子(unit cell)という。 その結晶は主に3種類ある。列記すると、

  • 面心立方格子 (face-centered cubic)   Al, Cu, Ag, Ni,Au, Pt など
  • 体心立方格子 (body-Centered Cubic )   Fe, W, Ba、およびアルカリ金属のLi, Na,K, など。
  • 六方最密構造 (hexagonal close-packed )  Zn, Mg, Co など

である。

単位格子中の原子の数

体心立方格子

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体心立方格子構造

単位格子の中に1個の原子があり、単位格子の立方体の8頂点にあるそれぞれの原子は単位格子の中に  存在する。

したがって、単位格子中の原子の数は

 

面心立方格子

立法体の隅の原子は、格子に属する部分の大きさが球の である。これが8か所ある

面の中央の原子は、大きさが、球の   である。これが6か所ある。

したがって、単位格子中の原子の数は

 
六方最密構造の原子数

六方最密構造の所属原子数は、図から分かるように、2個である。

配位数

結晶構造において、1個の原子にもっとも近い原子の数を配位数(coordination number)という。配位数は、結晶格子の種類によって決まる。配位数を計算する際には、単位格子内の原子だけでなく、隣接する格子の原子も考慮する必要がある。

面心立方格子の配位数

面心立方格子では、配位数は12である。単位格子の図を見ると、面心に位置する原子は8個の隣接原子と接触している。しかし、単位格子の図だけでは、隣接する格子にある原子も含めて考える必要がある。具体的には、単位格子を中心に4つの近接原子が省略されているため、面心立方格子の配位数は12である。

体心立方格子の配位数

体心立方格子の場合、単位格子の中心に位置する原子に注目する。体心立方格子の中央の原子は、周囲の8個の原子と接触している。したがって、体心立方格子の配位数は8である。

六方最密構造の配位数

六方最密構造では、単位格子内の中央の原子に注目すると、計算が簡単になる。単位格子内では、中央の原子は9個の隣接原子と接触している(6個の上面の原子と、下面の3個の原子)。そのため、配位数は12である。

原子半径

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体心立方格子の原子半径の求め方

密度を求めるには、単位格子の1辺あたりの長さを知らなければならない。もし、原子半径 r と、単位格子の1辺あたりの長さ l には、図からわかるように、次の関係がある。

体心立方格子の場合、原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、図のように三平方の定理より、

 

よって

 

である。

 
面心立方格子の原子半径の求め方

面心立方格子の、原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、三平方の定理より、

 

である。

充填率

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単位格子中に原子の占める体積の割合を 充填率(じゅうてんりつ) という。充填率を計算で求めるには、定義どおりに、単位格子中の体積を、単位格子の体積で割れば、求まる。

  • 体心立方格子の場合

まず、単位格子中の原子の体積は、以前の節で説明したように、原子2個ぶんの体積である。

つまり体積は、

 

である。

そして、 体心立方格子の場合の原子半径rと、単位格子の1辺あたりの長さ l との関係式は、前の節で計算したとおり、

 

なので、代入するなどして連立方程式を解けば、充填率が求まる。

充填率 =  

よって体心立方格子の充填率は 68% である。

  • 面心立方格子の場合
充填率 =  

よって面心立方格子の充填率は 74% である。

アモルファス

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