和歌では、音や調べを整えたり、意味上の面白みを表現するために、修辞法と呼ばれる特別な言葉の技法を用いる。

ここでは、4 つの修辞法について記述する。

枕詞(まくらことば)

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5 音で特定の言葉の前におく。音を整える効果を持つ。一般的には枕詞自体には意味が無いと考えているので訳さない。

(例) 玉葛(かづら) 実ならぬ木には ちはやぶる 神ぞつくといふ ならぬ木ごとに (万葉集、巻二、101)

(意味)美しい葛のように実のならぬ木には、すさまじい(←訳してますが、一応、教育上は訳さない決まり)神がつくといいます。 すべての実のならない木に、あなたという木にもね。(←女性に送った歌なので、こういう意味があったという)

太字の「ちはやぶる(千早振る)」が、「神」と「宇治」につく枕詞

他に…

あしひきの(足引の)→山

くさまくら(草枕)→旅

ひさかたの(久方の)→光・月・空

あかねさす(茜さす)→光・日・昼・朝日

たらちねの(垂乳根の)→母

など…

序詞(じょことば or じょし)

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7 音以上で、何らかの言葉を導き出すために前につける。かかる関係は固定していない。「……の」の形は多い。前半に景色の描写、後半に人物・心情の描写があれば序詞がある可能性が高い(前後半が逆転する場合あり)。導く方法は、比喩・同音反復・掛詞の3つある。訳す場合は「……のように」など、訳に生かす。

(例) あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を 一人かも寝む

(意味)山鳥の垂れ下がった尾のように長い夜を、私は一人で侘しく寝るんだろうね。

太字部分が序詞で、「長々し」にかかっている。「あしひきの」は枕詞でもある。

掛詞(懸詞・かけことば)

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一つの言葉に二つの意味を持たせている。同音異義を利用。

(例) もみちはの ちりてつもれるわかやとに 誰をまつ虫 ここらなくらむ

(意味) 紅葉の葉が散り積もる私の住処の周りで、誰を待っているのだろうか松虫が、ここそこらで鳴いているようだ。

太字の「まつ」が掛詞で、「誰を待つ」「松虫」と、二つの意味を持たせる言語遊戯的な技巧。

縁詞(えんし・えんご)

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歌中の主要語に縁のある語を意識的に読み込む。

(例) 鹿山 うき世をよそに 振り捨てて いかになりゆく わが身なるらむ(新古今、西行)

(意味)今鈴鹿山だ。憂き世を自分に合わないものと振り捨てて、これから私はどうなっていくのだろうか。

太字「振り」と「鳴り」が、中心語「鈴」の縁語になっている。