ここでは漢文の再読文字を解説する。なお、「読み方」のふりがなは平仮名、送りがなは片仮名としている。また、二度目に読むものも平仮名としている。
再読文字のルール
編集- 再読文字は返り点に関係なくまず副詞として読む。その後、返り点に従って、下から戻って動詞・助動詞として読む。
- 書き下し文にするときははじめは漢字で、次の読むときは仮名で書く。
- 送り仮名ははじめに読むものは右に、後で読むものは左に書く(ただし、ここでは横書きのため、はじめに読むものは上に、後で読むものは下、返り点の後に書くようにしている。その他の送り仮名のルールは返読文字と同じである。)。
再読文字一覧
編集未
編集- 読み方:いまダ〜せズ
- 訳:まだ〜ない
- 例文:未レダ成ラ。→未だ成らず。
- まだ完成しない。
- 例文:未レ ルダ聞二カ好レム学ヲ者一ヲ也。→未だ学を好む者を聞かざるなり。
- まだ学問を好む者を聞かない。
将・且
編集- 読み方:まさニ~(セ)ントす
- 訳:これから(または「いまにも」)~しようとする。いまにも~になろうとする。
- 例文:日月如レク流ルルガ、老イ将レニ至ラント。→日月流るるが如く、老い将に至らんとす。
- 月日は水が流れるように進み、老いがいまにもやってこようとする。
- 例文:趙且レニ伐レタント燕ヲ。→趙且に燕を伐たんとす。
- 趙(国名)がいまにも燕(国名)を攻撃しようとする。
当·応
編集- 読み方:まさニ~(ス)べシ(「す」は直前に読む言葉につける)
- 訳:当然~すべきだ。~しなければならない。(義務)
- 例文:当二 シニ勉励一ス。→当に勉励すべし。
- 努力して励まなければならない。
応
編集- 読み方:まさニ~(ス)べシ(「す」は直前に読む言葉につける)
- 訳:~すべきだろう。きっと~だろう。(強い推量・推定)
- 例文:応レ シニ知二ル故郷ノ事一ヲ。→応に故郷の事を知るべし。
- きっと故郷のことを知っているだろう。
須
編集- 読み方:すべかラク~(ス)べシ(「す」は直前に読む言葉につける)
- 訳:ぜひ~する必要がある。かならず~しなければならない。
- 例文:須レ シラク惜二シム少年ノ時一ヲ。→須らく少年の時を惜しむべし。
- ぜひ若い時代を大切にする必要がある。
宜
編集- 読み方:よろシク~(ス)べシ(「す」は直前に読む言葉につける)
- 訳:~するのがよい。
- 例文:過チテハ則チ宜レシク改レム之ヲ。→過ちては則(すなは)ち宜しく之を改むべし。
- 間違えたならばいさぎよく、これを改めるのが良い。
猶・由
編集- 読み方:なホ~(スル)ガ(または「ノ」)ごとシ(または「ノごとシ」)(「(スル)ガ」または「ノ」は直前に読む言葉につける)
- 訳:ちょうど~と同じようなものだ。あたかも~のようだ
- 例文:過タルハ猶レ シホ不レルガ及バ。→過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし。
- 行き過ぎはちょうど、足りないことと同じようなものだ。
盍
編集- 読み方:なんゾ~(セ)ざル(「セ」は直前に読む言葉につける)
- 訳:どうして~しないのか
- 例文:盍レ ルゾ反二ラ其ノ本一ニ矣。→盍ぞ其の本(もと)に反(かへ)らざる。
- どうして根本に立ち返ろうとしないのか。