高等学校古文/読み方が複数ある漢字・漢字が複数ある読み方
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ここでは、いくつもの読み方のある漢字といくつもの漢字がある読み方を紹介・解説する。漢字は一般的な音読み順に並べている。
いくつもの読み方のある漢字
編集悪(アク)
編集- 「わろシ・あシ」:悪い・みにくい。
- 「にくム」:憎み嫌う。
- 「いづクンゾ・いづクニカ」:疑問・反語。
為(イ)
編集- 「つくル」:作る。
- 「なス」:行う・思う・する。
- 「なル」:成る。
- 「をさム」:治める・習う。
- 「ためニ」:~のために(理由)。
- 「たリ」:断定の助動詞「たり」。
- 「る・らル」:受身の助動詞「る・らる」。
已(イ)
編集- 「すでニ」:すでに・とうに・もはや。
- 「やム」:終わる・やめる。
- 「はなはダ」:はなはだ。
- 「のみ」:限定の終助詞。
以(イ)
編集- 「ゆゑ」:理由(名詞)。
- 「おもフ・おもんミル」:思う・振り返って考える。
- 「もっテス」:~を用いる・告げる。
- 「もっテ」:手段・方法・材料を示す前置詞「~で、~を使って」。または原因・理由・条件を示す前置詞「~によって」。
焉(エン)
編集- 「いづクニカ・いづクンゾ」:文頭にあり、疑問・反語をあらわす。
- 「ここニ・これヨリ」:指示代名詞。文末にあるときは読まないことが多い。
- 「(読まない)」:断定。
- 「えん」:修飾語を作る接尾語。
乎(コ・オ)
編集- 「か」:疑問・反語・呼びかけ。
- 「や・かな」:詠嘆。
- 「(読まない)」:「於」「于」と同じ前置詞。
- 「こ」:修飾語を作る接尾語。
見(ケン)
編集- 「まみユ」:お目にかかる。
- 「みル・みユ」:見る・見える・思う。
- 「あらはル」:現れる。
- 「る・らル」:受身の助動詞「る・らる」。
故(コ)
編集- 「ゆゑ」:理由(名詞)。
- 「ゆゑニ」:理由を示す接続詞。「ゆえに・だから」。
- 「ふるシ」:古い。
- 「ことさらニ」:わざわざ。
- 「もと」:かつて。
哉(サイ)
編集- 「かな」:詠嘆。
- 「や」:疑問・反語。
之(シ)
編集- 「これ・こノ」:これ・この(指示代名詞・連体詞)。または強意。
- 「ゆク」:行く。
- 「の」:主格・連体格・同格の助詞「の」「が」。または、比喩「のような」。
而(ジ)
編集- 「(読まないが、下の語にテ・シテ・モを送る)」:順接の接続詞。
- 「しかうシテ・すなはチ」:順接の接続詞。
- 「しかレドモ・しかモ・しかルニ」:逆説の接続詞。
- 「なんぢ」:あなた。
者(シャ)
編集- 「もの」:人・物・事・所を示す。
- 「は」:主語を強調する。
- 「こと」:体言を名詞化する(形式名詞)。
- 「(読まない)」:時を示す語につく。
若(ジャク)
編集- 「ごとシ」:~のようだ。
- 「しク」:~に及ぶ・当たる・~と同じ。
- 「もシ」:仮定の副詞。
- 「なんぢ」:あなた。
- 「かクノゴトキ」:このような。
如(ジョ)
編集- 「ごとシ」:~のようだ。
- 「しク」:~に及ぶ・当たる・~と同じ。
- 「もシ」:仮定の副詞。
- 「ゆク」:行く。
且(ショ)
編集- 「かツ」:並列の接続詞。または状態の副詞。
- 「しばらク」:しばらく。
- 「まさニ~ントす」:再読文字。「これから・いまにも~しようとする」。
夫(フ)
編集- 「か・かな」:詠嘆。
- 「そレ」:発語。
- 「かノ」:指示の連体詞。
也(ヤ)
編集- 「なり」:句末にあり、断定をあらわす。
- 「なり・や」:句中にあり、語勢を強める。
- 「や」:呼びかけ・反語・感動・詠嘆。
- 「や・か」:疑問・反語。
与(ヨ)
編集- 「あたフ」:与える。
- 「くみス」:味方になる・する。
- 「あづかル」:関係する・参加する。
- 「ともニ」:ともに・いっしょに。
- 「よリハ」:選択・比較。「~より」。
- 「と」:並列。「~と」「および」。
- 「や・か・かな」:疑問・反語・詠嘆。「歟(か)」と同じ。
いくつもの漢字がある読み方
編集ここでは読みも意味も同じだが、漢字だけが異なるものを挙げる。
いフ
編集訳は「言う」。
- 言
- 道
- 謂
- 云
- 曰
こたフ
編集訳は「答える」。
- 応
- 対
- 答
つひニ
編集訳は「ついに・とうとう」。
- 遂
- 終
- 卒
- 竟
なんぢ
編集訳は「君・お前」。目下の人などに使うくだけた二人称。
- 汝
- 女
- 若
- 而
- 爾
ゆク
編集訳は「行く」。
- 行
- 往
- 之
- 徂
- 適
- 如
同音異義語
編集すなはチ
編集- 則
- ~ならば・~すれば
- 即
- すぐに
- 便
- すぐに・たやすく
- 乃
- そこで・ところが
- 輒
- ~するたびに・そのたびに
のみ
編集※以下のように微妙な違いはあるが、現代語訳ではすべて「のみ」「だけ」と訳せばよい。
- 已
- 最も基本的な「のみ」
- 而已
- 「已」を強めたもの。
- 而已矣
- 「矣」をつけることで断定的なニュアンスを加えて「而已」よりもさらに意味を強めたもの。
- 耳・爾
- 「而已」の音「ジイ」を借りた当て字。
まタ
編集- 又
- さらに・その上・またもや
- 亦
- ~も同様に・~もまた
- 復
- ふたたび・かさねて
- 還
- ふたたび・元に戻って