高等学校農業 植物バイオテクノロジー/組織培養の基礎

苗条原基編集

培養の際、液体培地を適切な回転速度で、回転させながら培養すると、茎の先端みたいなのが、何個もびっしり詰まった苗条原基(びょうじょう げんき)になる。 それぞれの茎みたいなのが、べつべつの苗に育つので、培養で苗を大量生産したいときに、苗条原基による方法が効率的である。

培養について編集

植物体を培養すると、たとえ遺伝子組み換え実験をしてないのに、もとの植物体と比べて染色体の数が増減した個体があらわれたり、倍数体があらわれる場合がある。このような、培養による遺伝子変異を、培養変異(ばいよう へんい)という。

分化と脱分化編集

植物の茎を切って、土などにさしておくと、切り口に根ができることがある。

このように、植物は、一度ある器官になっても、別の器官に変わることができる。

植物の細胞が、根や茎や葉などの器官になることを分化(ぶんか)という。


一般の植物でも、ときどき、なんらかの事情で、本来は芽ができない場所に、芽ができることがある。このような、本来とは違う場所にある芽を、不定芽(ふていが)という。 植物の切り口にできる芽も、不定芽である。

いくつかの植物では、受精を経ていないで、胚ができる場合がある。受精を経ないで出来た胚を不定胚(ふていはい)という。

カルスによる培養でも、芽や胚ができる場合もある。カルスの培養によって出来た芽も、不定芽という。カルスの培養によってできた胚も、不定胚という。

本来、根ができない場所にできた根を不定根(ふていこん)という。同様に、カルスの培養によってできた根も不定根という。


カルスを培養する際、添加する植物ホルモンの種類と量により、どのような組織に分化するかを制御できる(※ 高校理科(生物科目)の範囲内)。

高いオーキシン濃度で、さらに低いサイトカイニン濃度という条件では、カルスは根に分化する。

いっぽう、高いサイトカイニン濃度、および、低いオーキシン濃度では、カルスは芽に分化する。


植物の切りかけを培養すると、カルスが出来る場合があり、植物がカルス状態になることを脱分化という。 一方、そのようなカルスからふたたび、芽や根や茎や胚などの器官に分化することを再分化という。

培養編集

摘出・置床編集

培養する部位を植物体から切り取ることを摘出(てきしゅつ)という。 培養するために摘出した部位を外植体(がいしょくたい)という。

摘出した外植体を、培地に植えつけることを置床(ちしょう)という。

これらの操作は、雑菌が混入しないように無菌状態で行わなければならない。そのため、クリーンベンチを用いて、これらの操作を行う。

このこともあり、これらの操作を無菌操作という。


外植体こそが、これから培地で培養されて、栄養を補給される物体である。そのため、外植体のことを「培養物」や「培養体」という場合もある。

培養編集

培養には普通、期間が数週間から数ヶ月かかる。その間、培地の栄養分が消費されて不足たり、排出された有害物質が蓄積するので、必要に応じて培地を交換しなければならない。

そのため、新しい培地に、培養物(元・外植体)の移植を行う事になる。

新しい培地に植物体の移植をすることを継代(けいだい)という。そして、(新しい培地への)移植後の培養を継代培養という。つまり、継代して培養することを継代培養という。

一方、植物から摘出して外植体を置床したばかりの最初の代の培地での培養を初代培養という。

培地編集

培地には、養分をふくんだ溶液のままの液体培地と、その溶液を寒天などで固めた固体培地がある。

液体培地の場合、酸素が不足しやすいので、振とうしたり、かくはんして、酸素を補給する必要がある。そのため、液体培地では、回転装置や振とう装置のついた培養装置で、培養を行う必要がある。

一方、固体培地の場合、酸素の不足はないが、栄養分が不足しやすく、また有害物質が植物体のちかくに蓄積しやすい。

培養の環境条件編集

温度は普通、20℃〜25℃にする。これは、培養中の培養室の温度条件と同じである。


順化編集

培養によって得られた植物体は、最終的には、一般の苗で生育できるようにしなければならない。

しかし、いきなり一般の苗に植え替えると、植物体が環境に適応しきれず、枯れてしまう場合がある。

なので、少しづつ、光や温度・湿度を調節しながら、培地の材料も近づけていくことで、環境を近づけていく。

このような操作を、順化(じゅんか)という。

植物が、自ら光合成をできるようにするのが、順化のおもな目的である。