高等学校農業 植物バイオテクノロジー/組織培養の施設・設備と機器・器具
施設の構造
編集施設の構造は、一般に、実験準備室と無菌室(クリーンルーム)と培養室との、3つの部屋がある。
実験準備室では、機器の洗浄や、薬品の保管などの、無菌環境を必要としない操作を行う。
無菌室は、植物材料や培養材料の殺菌や、外植体の摘出・置床などの操作を行う。(つまり、無菌室が、いわゆる「無菌操作」を行う部屋になる。)
一般に、クリーンベンチを用いて、無菌室での無菌操作が行われる。
培養室は、培養体を培養するための部屋であり、空調や照明が取り付けられており、培養のための生育に適した環境に調整される。一般に、培養室の温度は、培養中は20℃〜25℃に調整される。
クリーンベンチ
編集クリーンベンチは、紫外線を出す殺菌灯によって、雑菌を殺菌しながら、装置内で実験を行えるようにする装置である。
クリーンベンチを使用する1時間前には殺菌灯を点灯しておき、使用時には殺菌灯を消灯する。また、クリーンベンチ内には、フィルタによって、ホコリや雑菌などが取り除かれた空気が、送り込まれている。
使用する1時間前には、クリーンベンチの送風を起動しておく。
使用の際、殺菌液として、70%エタノールを、器具類や周囲の床面やクリーンベンチ内に噴霧しておく。
クリーンルーム
編集実験によっては、クリーンルームという、清浄度の特別に高い実験室で、実験をすることがある。
クリーンルームに入室するには、クリーンルーム用の専用の白衣、または専用の作業着があるので、そのクリーンルーム用の白衣・作業着に着替えなければならない。また、その白衣や作業着は、清潔でなければならない。
頭髪などが実験材料に落ちるのを防ぐため、普通は、専用の帽子をかぶる。(その専用の帽子も、クリーンルーム用の白衣・作業着に含まれる。)
また、土足厳禁である。専用のスリッパや専用の作業靴があるはずなので、それに履き替えてから、入室する。
入室時、作業室の前室として「エアシャワー」といって、上方から、排気口のある下方に向かって、きれいな空気を流すことで、通行人のホコリを落とす設備のある実験室もある。
オートクレーブ
編集オートクレーブとは、高圧蒸気滅菌器ともいい、器内を高温(ふつう121℃)・高圧の蒸気で満たして滅菌する機器である。培地や純水の滅菌に用いる。
使用後の洗浄など
編集使用後の器具には、洗浄が必要である。
ビーカーなど一般のガラス器具の洗浄方法と、定量容器の洗浄手順とが、異なる。
- 一般のガラス器具(ビーカーなど)の洗浄
- 1) 事前に、オートクレーブで培地や内容物ごと、滅菌する。
- 2) 使用後の実験機器は、まず、培地などの内容物を捨てる。(この培地は、事前にオートクレーブで滅菌されている。)
- 3) そして、中性洗剤をふくむ水をもちいて、ブラシやスポンジを使って、よく洗浄する。
- 4) 水道水で、しっかりすすいで、洗剤を流し落とす。ガラス器具なら、すくなとも、ガラスの表面に水滴がつかなくなる程度までは洗浄しなければならないのが、目安(めやす)である。仕上げに、純水(実験室にある蒸留水でよい)ですすいで、乾燥させる。
- 5) 乾燥後、清潔な収納棚に収める。
- 6) (これで終わり。以上が、一般のガラス機器の洗浄方法である。)
- 定量容器の洗浄
※注意 定量容器の内部は、ブラシなどで、こすってはいけない。
- 1) 使用後は、まず水につけておき、内部が乾かないようにしておく。
- 2) 洗うときは、中性洗剤の溶液につけておく。
- 3) 水道水でよくすすぎ、さらに純水(蒸留水)でそそぐ。
- 4) 自然乾燥させる。(熱乾燥しない。) 自然乾燥中にホコリが掛からないようにするための「乾燥棚」(かんそうだな)を用いるのは構わない。
- 5) (これで終わり。以上が、定量容器の洗浄方法である。)
- 新しく購入したガラス機器のおろしかた
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機器、器具
編集- ろ過滅菌器
酵素液などの、熱に弱い物質をふくむ溶液を滅菌する場合、オートクレーブでは滅菌できない。 このような、熱に弱い溶液を滅菌する場合、ろ過滅菌器が用いられる。
ろ過滅菌器のしくみは、フィルターを通して(孔径は0.2μmていど)、雑菌を排除するという原理である。
- 分注器
調整の終わった培地を、一定量ずつ分け注ぐための機器が、分注器である。
寒天などが固まらないうちに、すばやく分注する必要がある。また、使用後は、寒天などが固まらないうちに、温湯を用いるなどして、すみやかに洗浄する必要がある。
- マグネチックスターラー
培地を調整する際、試薬を溶かすために、かくはん する必要がある。マグネチックスターラーは、かくはん するための装置である。