動機


「髪をひっぱった事件」では、何かが何かを引き起こす、という物理的な原因が問題なのではありません。ここでは「髪をひっぱる」が「サリーはなぐる」を引き起こすのに三つの段階がある、と考えられます。


一。ジョイがサリーの髪をひっぱった。

二。これが、サリーになぐることを決意させた。

三。サリーはなぐった。


ロジバンでは、この二番目の段階があることに注目します。人は一般的に、自動的に衝動に従うのではなく、動機となることがあって行動に移るものです。全てを物理的原因で済ませることは、人は感情や行動を律しないという認識になる恐れもあります。抽象的な自由意志を信じるか信じないかにかかわらず、認知や感情が関わる反応の時には物理的な理由と(とりあえず)区別することが実際的です。


さて、動機を表す gismu は mukti ( x1 (~ということ)は x2 (~ということ)を引き起こす x3 (~にとっての)動機となる)です。ですから、こう言えます。

lenu do lacpu lei kerfa [pe la salis.] cu mukti lenu la salis. darxi do [kei la salis]
「あなたが(サリーの)髪の毛をひっぱることは、サリーがあなたをなぐるということを(サリーに)動機づける。」

x3 は普通は要りません。 x2 (出来事)の中の行動者がそれを起こすことを決意したことは、普通は明らかだからです。


x3 を抜かしても尚、少々ぎこちないので、sumti tcita にしてみます。 mu'i 「その動機となるのは~」を使うと、こうです。

la salis. darxi do mu'i lenu do lacpu lei kerfa
「サリーはあなたをなぐる、その動機となったのは、あなたが髪の毛をひっぱったこと」
つまり、
「サリーがあなたをなぐったのは、あなたが髪の毛をひっぱったから(、それが動機だよ)。」