取り消す


自然言語を使っている私たちは普段、言い間違えても、あまり訂正はしません。しつこくなることを避けるためです。だいたい実際に発せられた言葉というよりは、文脈によって相手の言うことを判断しています。そして訂正する場合でも、最後から何語目を訂正する、などという言い方はしません。


例えば、


「ダウンロードして、学んだのは、いくつかのエスペラントの語彙。じゃなくて、ロジバンの語彙だ。」


「ロジバンの語彙だ」と訂正しているわけですが、この「ロジバンの語彙」が取り消すのは「エスペラントの語彙」だろう、ということは、私たちは文脈によって分かります。しかしもし、「いくつかのエスペラントの語彙」までを取り消すつもりだったら、どうでしょう?あるいは「ダウンロードして、学んだのは、いくつかのエスペラントの語彙」という文の全部を取り消すつもりだったら?そこまでは普段考えません。


しかしロジバンにおいては、どれを訂正するのか、明らかにすることは可能です。

そんなことをしていたらロジバンが使いづらい、と思うかどうかは話者次第ですけれど、精確に指摘したいと思えばできる、ということです。


si は、直前の一語を訂正したい時に使います。

sisi なら、最後の二語を訂正したい、ということです。


上に挙げた文なら、大雑把にこうなります。

.i mi te benji je cilre loi bangrnesperanto valsi
si si lojbo valsi.


si の問題は、訂正したい語が最後から何語目になるのか数えあげなければならない、ということです。これはわずらわしくなる時もあります。


sa はこれとは違い、まとまった句を打ち消す時に使います。そして、 sa の直後に来る語( selma'o )と同じ語が使われた箇所にまで文をさかのぼって、それから始まる句を訂正します。

.i mi te benji je cilre loi sa .i mi cilre loi lojbo.

「ダウンロードをして、学んだのは…、いや、学んだのはロジバンです。」


sa の後に .i があるので、つまり、前の .i で始まる文を全部( sa も含めて)取り消して、言い直しています。


.i mi mrilu fi do ca le prulamdei sa ca la reldjed.

「君にメールを送ったよ、昨日。じゃなくて、火曜日だ。」

訂正するのは ca で始まる ca le prulamdei 「昨日(の間に)」です。


(チャットにおいて、 文をいい終わってから、間違えた語を再び言い、それに si を付けて、正しい語を言って、訂正する、というやり方を見受けることがありますが、厳密に言うと、これは si の本来の使われ方ではありません。)