そうは言っても、時に関することを述べたくなったらそれは出来ます。ロジバンにはその為の十分すぎるほどの cmavo が用意されているのです。それでは「ジャンがバーを10時に出て、スーザンが11時に来た。」という内容を考えてみましょう。前の授業でやったように一番正確に述べるのなら、こうです。

la .jan. cliva le barja ti'u la .jaucac. .i la la .suzyn. klama le barja ti'u la .feicac.
小ネタ:既に述べたように、「.i」はロジバンで文同士を分かつために使われます。文末のピリオドが発声されるバージョンだと思ってください。

しかし実際の時刻がさして問題でもなかったら、次のように言えます。

ba lenu la.jan. cliva kei la .suzyn. klama le barja
ジャンが出た後スーザンがバーに来た。

または

pu lenu la .suzyn. klama le barja kei la .jan. cliva
スーザンがバーに来る前にジャンが出た。

(ところで、どちらの文もジャンがバーを出たとは明示していないことに注意してください。全ては明示しないで文脈に頼るという形式です。)

「ba」「pu」「kei」の意味は何でしょうか?kei については、以前やったのを思い出してもらえれば幸いですが、nu で始まった句を終わらせる終端子でした。そしてご想像の通り、ba は「後」(未来・以後を表す balvi から採られた)で、pu は「前」(過去・以前を表す purci から採られた)です。

このように ba や pu を使うときはいつでも、ある出来事の時を別の時と比較しているのです。我々が最も頻繁に使う比較対象は、「話者の今現在」です。もしメイン bridi の出来事を今現在と比較したいのでしたら、sumti を省いてふさわしい時制の cmavo を使うだけで表現できます。なので、ジャンの去った後ではなく今後スーザンがそのバーに来ると言いたいのでしたら、こうです。

baku la .suzyn. klama le barja

baku は後で・以後のような意味です。ku は ba を la .suzyn. から分けるために必要です(ba ku と離しても全く同じです)。同様に、ジャンが以前に去ったことは次のようになります。

puku la .jan. cliva
注:ここで実際に何が起こっているのかというと、ba が sumti を開始して ku がそれを終了しているのですが、sumti それ自体は省略されています。ba ku は「ba...ku(何かの後)」という意味です。ここでもし ku がそこに無ければ、ba がその後に続く sumti を何だろうと呑み込みます。なので例えば「ba la .jan. cliva」は「ジャンが出た後」でなくて「ジャンの後、出た」となってしまうのです。

それではここで、スーザンがそんなに不運でなくて、ジャンが出るときに到着出来たとしましょう。その場合次のように言うことが出来ます。

ca lenu la .jan. cliba le barja kei la .suzyn. klama le barja
ちょうどジャンがそのバーを出るときにスーザンがそのバーに来た。

ca も gismu から来ていて、この場合は「cabna(~と同時に)」です。なので別の言い方はこうなります。

lenu la .jan. cliva le barja cu cabna lenu la .suzyn. klama le barja
ジャンがそのバーを出たのはスーザンがそのバーへ着いたのと同時だった。
注:これらの文の中で ku と kei には違いがあります。ku は ca を文の残りから分け、kei は出来事の範囲を終了させます。先ほど「ca lenu la .jan. cliva le barja ku kei ku ~」と言うこともできたはずです。この場合最初の ku は le barja に、kei は nu la .jan. cliva le barja に、2番目の ku は lenu la .jan. cliva le barja に係ります。そして構文が非曖昧なので、「lenu la .jan. cliva le barja ku ku ~」とだって言えたのです。

もし ca に続く sumti を省略したなら、結果生じる caku という句は「話者の今現在と同時」を意味します。つまりは「今」ということですね。

caku la .suzyn. klama le barja
今スーザンがそのバーへ行く。
小ネタ:ところで、「今何時」と聞きたいときのもっと普通な言い方は「caku ma tcika」になるでしょうね。

今や pu(~の前)、ca(~の時)、ba(~の後)という、時に関する言葉を手に入れましたが、これらは目的に応じて zi、za、zu という言葉に変更することが出来ます(一連の cmavo には、-i,-a,-u という並びをとるものがあります。AEIOU の並びには従っていません)。意味はそれぞれ、短・中・長 時間程度です。なので puzi は「ちょっと前」で、puza は「或る程度前」で、puzu は「しばらく前」となります。この「しばらく」がどのくらい長いかは何を扱っているかに依ります。例えば考古学の話の最中でしたら千年単位で、電車に乗りそびれた話をするのでしたら分単位となることでしょう。

それでは今度は、不運なスーザンが数分差でジャンに会えなかったとしましょう。その状況はこう表現します。

bazi lenu la .jan. cliva kei la .suzyn. klama le barja

そしてもしあなたが、もうちょっとの差でジャンに会えなかったねと伝えねばならない立場にいたのでしたら、次のように言うことが出来ます。

puziku la .jan. cliva le barja