ここからややこしくなり始めます。ロジバンにおいては、空間も時と同じように「時制」となります。これは、伝統的な文法が「前置詞」と呼んでいたものと時制とに全く違いが無いからです。多くの言語では「~より以前に」のような言葉と「~た」のような言葉を完全に別物として扱いますが、ロジバンでは同じです。どちらも出来事を時にはめ込むのです。「に」「で」のような空間の言葉は英語では前置詞として表れ、決して時制にはなりません。しかしロジバンでは、それらを時の言葉のように扱えるのです。すなわち、出来事を空間にはめ込むのです。もしお望みならば、ロジバンでは(既にアインシュタインがそうしたように)時を次元として扱えるのだと言うこともできます。

ti という言葉を覚えていますか?これは ti ta tu シリーズの一部で、ざっくばらんに言えば「これ」「それ」「あれ」という意味です。もし物でなく場所の話をしているのでしたら、 「vi」「va」「vu」(「ここ」「そこ」「あそこ」)を使います。繰り返しになりますが、これもあなたが話題にしている対象によって定義されます。もし医者に診てもらっているときに ti と言えばつま先を指すかもしれませんし、宇宙の話の最中に ti と言えば、きっと太陽系のことなどを指すでしょう。よって次のように言うことが出来ます。

viku mi gunka
ここで私は働く。

「ここ現在より前に」を意味する puku を以前見ましたが、同様に viku は「ここ現在のすぐ近辺で」すなわち「ここで」を表します。もし話者と場所を関連付けたくなくて、他のものを関連付けたければ、そのすぐ近辺で起きた出来事を言うために sumti の空の値を同様に埋めることが出来ます。もちろん、 vi va vu は de'i や ti'u のように sumti tcita として働き、bridi に新しい sumti を加えます。例えば次のように。

vi la paris. mi gunka
パリで私は働く。
vu le mi zdani mi gunka
私は自宅から遠いところで働く。
va lenu la KEnedis. se catra kei mi gunka
ケネディが殺された所からそこそこ離れた所で私は働く。
注:もし kei が最後の文に無かったら、mi が gunka でなくて catra の sumti となるので、聞き手は「ケネディが私に殺された所から…」という風に解釈してしまいます。

もし何かと何かが全く同じ場所で起きることを強調したいのでしたら、「bu'u(~と一致する)」を使います。

mi sanli bu'u lenu la KEnedis. se catra
私はケネディが殺されたちょうどその場所に立っている。

時の cmavo とまさに同じように、場所の cmavo も selbri にくっつけれます。というのは例えば、「viku mi gunka」という代わりに「mi vi gunka」と言えるということです。

もし vi などの場所と ri'u のような言葉とを組み合わせれば、もっと生産的になります。ri'u は「~の右」を表す場所の cmavo ですから、ri'u vi ku は「ここ現在の右にあるすぐ近辺で」を意味します。何をしたかというと、「何かが自分に関連して起ったと言ってはいるものの、それを探すべき方向も言った」ということなのです。例を挙げましょう。

la bil. sanli ri'u vi ku
la bil. ri'u vi sanli
ビルがちょうど右に立つ。

そして vi や bu'u と同様に、これらの cmavo を明確な sumti とともに使えば、何かに関連したことがどこで起きるのか言うことが出来ます。

la bil. sanli ri'u vi la meiris.
ビルがメイリの右に立つ。

ri'u のような働きをするクラスの cmavo が出てきましたが、これらは FAhA 型の cmavo と呼ばれます。このクラスには名前の元になった fa'a (~の方向に)や、 to'o (~から離れて)、 zu'a (~の左)、 ne'a (~の隣)、 ne'i (~の中)などがあります。(場所の全ての cmavo は The Complete Lojban Language の第10章で紹介されます。)

FAhA cmavo は方向を示しはしますが、その方向への動作は示しません。そのための分離用 cmavo が第7章で出てきます。

時と場所を組み合わせることもできます。例えば mi vipuzu gunka と言えば、「私は ここ・以前・長時間程度 働く」つまり「私は昔ここで働いていた。」となります。似たような言い回しで ku を組み込んで puzuvuku とすれば、「昔遠いところで」となり、おとぎ話や伝説の語り始めに使えることでしょう!

日常の話に戻ると、これらの時と場所の cmavo は質問するのにとても使いやすいものです。ca ma は「何と同時?」つまり「いつ?」(より単純な代替の ti'u や di'e はあります)となります。同様に vi ma は「何の場所で?」つまり「どこで?」となります。