中学校保健体育/休養・睡眠と健康

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睡眠と休養は、私達の健康にどのような影響を与えますか?

キーワード 編集

疲労・休養・睡眠

疲労の現れ方 編集

※疲労がたまるとどうなりますか?

長期間の学習・運動・作業は疲労を招きます。また、高温・多湿のように活動しにくい環境にいても疲労を招きます。疲労がたまると、正しい判断をしにくくなり、ミスも増え、作業能率も下がります。疲労の種類として、身体的疲労と精神的疲労の2種類があります。激しい運動や激しい作業を長時間続けると、身体的疲労に繋がります。筋肉などの疲れ・眠気・不安・頭痛・肩凝り・目の疲れ・痛みなどは、全て身体的疲労の症状です。長時間考えたり、悩んだりすると、精神的疲労につながります。疲労の感じ方は、学習・運動・作業量・作業効率・周辺環境などに大きく左右され、個人差もあります。

★疲労の現れ方(日本産業衛生学会産業疲労研究会の資料より作成)

疲労の分類 主な症状
眠気感 眠い・横になりたい・あくびが出る・やる気が乏しい・全身がだるい
不安定感 不安な感じがする・憂鬱な気分・落ち着かない気分・いらいらする・考えがまとまりにくい
不快感 頭が痛い・頭が重い・気分が悪い・頭がぼんやりする・目眩がする
だるさ感 腕がだるい・腰が痛い・手や指が痛い・足がだるい・肩が凝る
ぼやけ感 目がしょぼつく・目が疲れる・目が痛い・目が乾く・物がぼやける

現在、仕事や受験勉強などで精神的緊張が続いているので、疲労やストレスがたまりやすくなっています。また、生活習慣の乱れから疲れやすく、ストレスも溜まりやすくなります。休まずに学習・運動・勉強などを続けると疲労がたまります。そして、体の抵抗力が低下して、病気になりやすくなります。また、高血圧・心臓病・脳卒中・胃潰瘍・鬱病などの健康障害につながりやすくなります。鬱病では、中々寝付けなかったり、一日中気分が落ち込んだりします。ここ数年、鬱病のような気分障害の患者は増加しています。また、集中力や判断力が失われ、重大な事故に繋がりやすくなります。

休養・睡眠の効果 編集

※休養・睡眠はどのように取りますか?

睡眠を科学する
睡眠は深い眠りに入る時と入らない時があります。睡眠初期の深い眠りでは、成長ホルモンも多く分泌されます。成長ホルモンは、大きくなるためにも、疲労から回復するためにも大切です。また、深い睡眠は、脳内の老廃物を取り除く仕組みを通常の約10倍も働かせ、人々の健康維持に役立てています。したがって、睡眠は人間に欠かせません。

心や体の疲労を回復させるために、しっかり睡眠をとりましょう。人によって睡眠時間は違います。例えば、15歳から17歳を中心に、2日間の起床時間を通常より3時間遅くすると、体内時計が45分遅れます。また、睡眠不足と思う人の数を調べると、40代では3人に1人が睡眠不足と感じています。このように、日中あまり眠くならず、朝、気持ちよく目覚めるように睡眠時間をしっかりとっておきましょう。そして、休日でも変わらない生活を送るように心がけましょう。

睡眠の役割としては、次の通りです。

  • 1日の疲労を回復させ、元気を取り戻します。
  • 体の損傷部分を修復したり、体の抵抗力を高めたりします。
  • 精神を落ち着かせ、心と体の疲労を回復させます。

★よく眠るための知恵(厚生労働省)

  1. ぐっすり眠って心も体も健康に。
  2. 朝食をしっかりとり、睡眠もしっかりとり、適度に運動しましょう。
  3. ぐっすり眠ると、生活習慣病の予防になります。
  4. 睡眠後に休養をとるのは心の健康に重要です。
  5. 昼間の眠気を防ぐために、年齢や季節に合わせて睡眠をしっかりとりましょう。
  6. 睡眠の質は、室内環境も影響します。
  7. 若年世代は夜更かしを避けて、体内時計の時間も合わせましょう。
  8. 労働世代の疲労回復と生産性向上のために、毎晩睡眠をしっかりとりましょう。
  9. 熟年世代は、健康的な朝晩の生活習慣を守り、昼間に少し運動をすると、夜もしっかり眠れます。
  10. 眠くなったらすぐに寝て、規則正しい起床時間を心がけましょう。
  11. 異常な睡眠習慣に気をつけましょう。
  12. 眠れない時は、医師に相談しましょう。

そこで、睡眠をしっかりとるための工夫を紹介します。

  • 日中に少し運動しましょう。
  • 就寝前に食べ過ぎないようにしましょう。
  • 就寝前に部屋の明かりを消しましょう。
  • 毎日同じ時間帯に寝て生体リズムをあわせましょう。

★眠りやすい生活習慣(文部科学省)

  1. 生活習慣を見直して、体内時計を合わせましょう。
  1. 朝食を食べて、日光を浴びます。
  2. あまり寝すぎないようにしましょう。
  3. 毎日軽い運動を始めましょう。
  4. 就寝の3時間から4時間前に入浴しましょう。
  5. 夜食を控えましょう。遅い時間の食事は2回に分けましょう。
  6. 寝る場所をもっと快適に。
  7. 布団の中でデジタル機器(タブレットやゲームなど)を使わないでください。
  8. 早寝早起きをすれば、必要な睡眠時間をとれます。
  9. 平日と週末の睡眠習慣を大きく変えてはなりません。

睡眠とともに、しっかりと休養を取りましょう。休養は体や心の疲労を回復したり、緊張状態を和らげたり、元気を取り戻すために重要です。入浴や軽い運動をして血行を良くしたり、ただ楽しんだりするのが休養の取り方です。

パソコンや情報ネットワークなどの使用と疲労
同じ姿勢で、パソコン・テレビ・ゲーム機・携帯電話などの画面を見ていると、目の乾き・肩凝り・腕のだるさなどを感じます。また、夜更かしにつながりやすく、興奮して中々寝付けません。さらに、姿勢の悪化・インターネット依存などの影響も心配されています。予防するには、次の方法があります。
  • 室内と画面の明るさを合わせます。
  • 画面の位置と椅子の高さを変えます。
  • 利用時間を決めて、30分から60分ごとに休憩しましょう。
  • ストレッチなどをして体をほぐしましょう。
  • 出来るだけ画面から目を離すようにしましょう。
  • 長時間作業を行わず、時々体を動かして緊張をほぐしましょう。
  • 夜間は使わないようにしましょう。

健康を保ち、向上させるため、個人の年齢・生活環境などに合わせて、休養や睡眠をきちんととらなければなりません。中学生は体も心もまだ成長中なので、大人よりも多くの睡眠をとらなければなりません。

また、快適な休養と睡眠の方法を見つけましょう。

睡眠をしっかりとるとよい結果を生む【発展講義】
スポーツ選手の意識調査で、体調管理のために「しっかり眠るのが大切」が84.5%に上りました。その平均睡眠時間は8時間4分です。スポーツ選手の平均睡眠時間は10歳以上の日本人の平均睡眠時間(7時間40分)より約25分長くなっています。夜遅く食べなければならない時は、夕方に軽く食べるようにしましょう。

大学生の長距離ランナーが合宿中の厳しいトレーニングを行うため、毎日10時間から12時間の睡眠が欠かせません。アメリカの研究結果によると、バスケットボール選手が毎日10時間睡眠を習慣づけると、シュートの成功率と走力も向上しました。

このように、睡眠をしっかりとると、活動しやすくなり、成績も向上するようになります。

資料出所 編集

  • 東京書籍『新しい保健体育』戸田芳雄ほか編著  2021年
  • 学研教育みらい『中学保健体育』森昭三ほか編著 2021年