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心はどのような働きをしていますか。体と同じように、心も発達していくでしょうか?

本節も重要な内容となります。

キーワード 編集

知的機能・情意機能・感情・意思・社会性・自立・友達との付き合い

心の発達と大脳 編集

※思春期は心の発達のどんな時期になるでしょうか。

 
大脳の表面の作り

心は、知的機能情意機能社会性などの働きによって成り立っています。このような精神機能は全て大脳で行われます。思春期を迎えると、大脳は急速に発達します。特に前頭前葉はかなり発達します。前頭前野は思考・感情・意思・積極性・創造性など、よりよい人生を送るために大切な部分を秘めています。

大脳は様々な刺激を受けて発達します。多くの人との関わり・読書・スポーツ・自然体験など、様々な経験や学習を重ねると、脳の神経細胞同士の結びつきはより複雑になり、情報を素早く送るようになります。その結果、心のいろいろな働きを同時に実行したり、複雑な内容を考えたりできるようになります。

大脳の前頭葉は大きくなるまでに非常に長い時間がかかります。また、10代になっても発達すると考えられています。前頭極は、前頭葉の中で一番前方にあり、学習を続けられる人で発達します。

よりよく、上手く生きていくために発達した大脳
大脳新皮質は、脳の一番外側にある部分です。大脳新皮質は約140億個の神経細胞があります。その中でも、哺乳類の場合、環境に合わせて「上手く生きられる」能力が特に発達しています。大脳新皮質の前頭前野は、「よりよく生きていく」ための創造的な行為を調節しています。人間の前頭前野は他の動物よりもはるかに発達しています。

一般男性の脳の重さは約1400g、有名な科学者のアルベルト・アインシュタインは約1200g、チンパンジーは約400g、象は約5000gです。脳の大きさではなく、神経細胞の回路の豊かさが頭の良し悪しを物語っています。

知的機能の発達 編集

※知的機能はどのような状況で発達しますか。

心の働きの中でも、理解したり、記憶したり、言葉を使ったり、判断したり、推理したり出来る知的機能が見られます。例えば、言葉の発達は新しい単語を覚えるだけではありません。言葉を使って考えたり、説明したり、気持ちを伝えたり、まとめたりする力も含まれています。幼い頃は、自分で選んだり、大人(家族や周囲の状況など)から言われた内容に合わせて決めたりします。しかし、年齢を重ねると、自分の頭の中で考えたり、自分で判断したり出来るようになります。知的機能の発達は、様々な生活経験や知識を増やさなくてはなりません。

青年期を過ぎると、新しい内容に対応出来る力は少しずつ失われていきます。一方で、高齢になっても昔の知識や経験を使って対応出来る力は中々失いません。

情意機能の発達 編集

※情意機能はどのような状況で発達しますか。

 
感情は、生活経験や学習などから発達して豊かになります。5歳頃までに感情の基本がつくられます。

喜び・悩み・悲しみ・怒りなどの感情も心の働きに関係しています。様々な経験を重ねていくと、脳の機能も発達して、感情は複雑で豊かになります。また、人間関係が深まると、相手の気持ちを知り、思いやりも持てるようになります。また、その場面に応じて感情の表し方も変わります。

意思とは、目的を果たすために行動しようとする気持ちを表しています。言い換えると、人間は怒りや不安のような悪い感情を避け、喜びのような良い感情を感じたいから行動します。意思は、様々な内容に進んで取り組み、達成感や充実感、感動体験などを積み重ねると発達します。感情と意思を合わせて、情意機能といいます。情意機能も、様々な生活経験や学習の中で発達します。

社会性の発達 編集

※社会性はどのような状況で発達しますか。

社会生活を送る場合、親から独り立ちをしたり、仲間と一緒に行動したり、自分で責任を持って行動をするなどが求められます(社会性)。幼い頃の自分は、よく知っている家族に甘えながら生活します。しかし、年齢を重ねると、生活の場が広がり、行動の範囲や人間関係も広がります。その中で、様々な考え方や習慣を学ぶと社会性が高まります。人間は周りの人と仲良くなると、ますます一人になりたがります。

★社会性の例

  • 自ら進んで物事に取り組みます。
  • 集団の中で協調して行動します。
  • 自分の役割を果たします。
  • 相手を理解して思いやります。
  • ルールやマナーを守ります。

親や周囲の大人からの自立 編集

※思春期を迎えると、親や周囲の大人の関係はどのように変わりますか。

私達は、これまで親から守られて甘えられていました。しかし、思春期を迎えると親や周囲の大人に対して「子供のように見ないでほしい」「一人の人間として見て欲しい」のような気持ちが強くなります。このように、私達は、親に甘えなくなり、自立した大人になろうとします。

しかし、簡単に自立は出来ません。甘えたかったり、自立したかったり、親や他の大人と喧嘩したくなったり、無視したくなったり、自分の気持ちを上手く表せなかったりします。このような気持ちの浮き沈みは自立しようとする心も育ってきている表れでもあります。自立しようとすると、親や他の人と喧嘩しやすくなります(反抗期)。第一反抗期は幼児期に起こり、第二反抗期は思春期に起こります。

一方で、思春期を迎えても反抗しない人もいます[1]

友達との付き合い 編集

 
中学生の友達と写真を撮影

※思春期を迎えると、友達との関係はどのように変わりますか。

思春期を迎えると、悩み・不安・希望などを何でも話せるような親友が欲しくなります。自分と同じように感じ、考えている親友がいると、気分も良くなります。また、自分だけが恐怖や不安を感じているわけではないと気づきやすくなり、安心します。さらに、相手の考え方や価値観を知ると、自分を見つめ直すのに役立つかもしれません。

友達との付き合いは、楽しい経験もありますが、傷つけたり、傷つけられたりなど、苦しい経験もあるかもしれません。しかし、このような苦しい経験を積み重ね、乗り越えていくと、人間関係を築けるようになります。

資料出所 編集

  • 東京書籍『新しい保健体育』戸田芳雄ほか編著  2021年
  • 学研教育みらい『中学保健体育』森昭三ほか編著 2021年

ここに注意!! 編集

  1. ^ 思春期なのに反抗期がない!?“友達親子”で育った子が大人になって経験する苦難とは?