刑法第98条
条文
編集(加重逃走)
- 第98条
- 前条に規定する者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は2人以上通謀して、逃走したときは、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。
改正経緯
編集2023年改正
編集2023年刑事訴訟法改正に伴い、以下のとおり改正。(施行期日未定:2025年(令和7年)5月までに施行予定)
- (改正前)前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が
- (改正後)前条に規定する者が
2022年改正
編集以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
解説
編集本罪は、
- 裁判の執行により拘禁された既決若しくは未決の者又は勾引状の執行を受けた者が、
- 拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、
- 暴行若しくは脅迫をし、又は
- 2人以上通謀して逃走した場合
に成立する罪である。2の損壊とは物理的損壊を意味し、合い鍵等で損壊せずに開錠した場合を含まない。また4の通謀といえるためには全員が1の身分を有していなければならないと解されている。
参照条文
編集- 第102条(未遂罪)
- 未遂は、罰する。
判例
編集- 東京高等裁判所昭和29年7月26日判決
- 加重逃走罪が既遂となるためには、単に、留置場における看守巡査の目を離れただけでは足りないのであつて、看守させている向島警察署長の実力支配を脱して始めて既遂となる
- 窃盗、詐欺、加重逃走未遂(最高裁判決 昭和54年12月25日)
- 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪における実行の着手
- 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪については、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、実行の着手がある。
- 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪につき実行の着手があつたとされた事例
- 未決の囚人が、逃走の目的をもつて、拘禁場である木造舎房の房壁に設置された換気孔の周辺のモルタル部分を削り取り損壊したが、脱出可能な穴を開けることができず、逃走の目的を遂げなかつた場合には、加重逃走罪の実行の着手があつたといえる。
- 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪における実行の着手
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