異奇普通究修考

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作成: 2007-05-11

なんともなし随筆的に。

私がウィキブックスでアカウントを作成したのは、かなり前、ウィキブックスができたばかりのことで、メモによれば2004年8月1日らしい。それよりも前に英語版のウィキブックスを覗いたことがあったかもしれないが、どうも記憶が定かでない。ここで何ができるのか、私に何ができるのか、少々考えてみたが、どうも難しそうで、またやりたいこと、やれそうなことはウィキペディアで十分なように思えて、手をひいてしまった。その後、尻馬に乗って生体分子の研究法に箸をつけたものの、だいたいこういうものは既にウェブ上に散在するし、そもそも信頼性が重要であるから書籍を参照するし、研究室によって流儀がさまざまであるからして、需要や意義が見いだせずに興味を失ってしまった。まあ、言い訳めいているが、そんなわけで、深入りする前にウィキブックスから遠ざかっていた。

それでもRecentchangesはときおりぽちぽちと眺めてはいて、どうもうまくいっていないらしいことは見て取れたが、今年に入ってとうとうアクティブな管理者がまったくいなくなるという。以前ウィクショナリーは一時閉鎖を選択したが、あれはあれで大変だった。ウィキブックスはその前になんとか手を打ちたいという、意気込みというほどのものではないけれども、そういうたぐいのものが動く。ウィクショナリーがまずまず軌道に乗ってきているし、一つウィキブックスでも掃除当番くらいは引き受けようと考え、管理者になった次第。立候補したあたりからより詳細を見てみると、なかなか、砂漠に木を植えるような、はたまた。思ったよりも壮絶だなあ、などと思う。しかしそれを言えば、ウィキペディアだってなかなかに壮絶である。そんなわけで、管理者になってみたものの、一人少々意気込んだところで急にどうかなるものでもあるまい、と呑気に構える。ウィクショナリーが「まあまあうまくいっているよ」と言えるまで、2年ほどかかったわけで、同じくらいは見ておく方がよいかもしれない。

ウィキブックスのゴール

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ウィキブックスの目的はフリーの教材を作って配布すること

さて、随筆はこれくらいにして、ウィキブックスのゴールについて考えてみたいと思います。問題解決にあたって私は「理想はシンプルに、対応は柔軟に」を信条としています。シンプルな理想を掲げると方向性が定まって対応もやりやすくなります。ウィキブックスの目的は何かというと、「教科書や解説書」をつくることです。そこはシンプルでいいんじゃないでしょうか。いろいろな教科書や解説書を作り、フリーの教材として配布する。それがウィキブックスの理念であり目的じゃないかと思います。

ところで、ウィキブックスはウィキペディアやウィクショナリーよりもその信頼性が高くなくてはなりません。なぜならウィキブックスは教材であるからです。ウィキペディアやウィクショナリーは基本的に個人で利用するものです。ところがウィキブックスは教師が生徒に対して用いることを念頭においています、たぶん。ゆえに、ウィキブックスに誤りがあったとき、個人利用よりも影響が大きくなります。これをウィキブックスを使う教師の責任にしますか?究極的にはそういうことになるでしょう。しかし、それを信頼性を高める努力を怠る理由とするならば、ウィキブックスの存在理由はないに等しいことになります、と思います。そもそも使ってもらえるだけの質に高めるのは大変な努力が必要です。無論、最初から完全であることは不可能ですし、各々ができることを行い、積み重ねて行くのがウィキのやりかたです。それでも、教材を配布することをゴールとする以上、我々は非常に高い山の頂を目指していることを忘れてはいけません。

ウィキブックスの特徴

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ウィキブックスでは個々の教科書が構造化され完結する

唐突ですが

「ウィキペディアの目的は 信頼されるフリーな百科事典を創り上げることです ——それも史上最大の 質も量も最高の百科事典を — 基本方針とガイドラインより」

をウィキブックスに置き換えてみます。

「ウィキブックスの目的は 信頼されるフリーな教科書や解説書を創り上げることです ——それも史上最大の質も量も最高の教科書や解説書を」

後半の「史上最大の質も量も最高の教科書」は何かちぐはぐですね。これがウィキブックスとウィキペディアの違いだと思います(強引な展開ですかね?)。つまりウィキペディアは個々の項目が完結した単位で、全体として一つの百科事典を作っているのに対して、ウィキブックスは個々の教科書が内部で構造化されて完結することが求められている。そんなわけで、ウィキブックスでは、ウィキペディアやウィクショナリーよりも大幅に高度な知恵知識が必要になります。その教科書全体を見渡す知識と適切に構造化する力、あなたにはありますか?私は、自信を持ってYesとは言えません。

ウィキブックスのやり方

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じゃあ、構成をどうすれば良いか。最も単純かつ可能であれば最も好ましいのは、そういうことができる知識と能力のある人ががんばることです。しかし、私なんかは指をくわえて待つしかない。どうにか考えてみると、一つの解は教科書の構成を自分でやらない。例えば、コンメンタールで網羅するのはその端的な方法だと思います。法律の条文はすでに構造化されているので、構造を考える必要がない。同様に、老子を一つ一つ解説して行く、徒然草を、源氏物語を、新約聖書を etc... ただ、これは解説していく方は膨大な作業量です。あとは、英語版などから翻訳する。英語版にはいくつか完成した教科書があります。Wikijunior などは見本を作るためのとっかかりとしては良さそう。

もう一つの解は、簡単な構成からやってみる。限られた分野の小さいスケールで習作を作ってみると良いかもしれません。子供向けウィキブックスであるウィキジュニアは、自分で構成を考える上でもとっかかりにいいんじゃないかと思います。もちろん、子供向けならではの難しさがあるので、甘く見てはいけませんが。そのままパクるともちろん問題ですが、やはり定評のある教科書は参考にすべきでしょう。一人で難しい場合はプロジェクト形式でとりかかってみるというのもあります。ただ、現状では参加者を募るのも難しいかもしれません。

……かきかけ、というか考え中

参加者を募る

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ウィキブックスには参加者が必要

ウィキブックスはウィキですから、参加者が必要です。いかに competent な人材が高いモチベーションをもって参加するか。ウィキメディアプロジェクトが抱える課題ですが、これが結果につながります。どうすればそういう参加者が集まるかというと、一つは実際に良いテキストを作ってみせることが先なんじゃないかと思います。ニワトリと卵の後先なのですが、隗より初めよということで、誰かがやる気を出して卵を生み出さなければなりません。そこから正のフィードバックが始まることになります。もう一つは負の方向へのフィードバックがかからないように保守することです。これは信頼できる管理者を増やすことがそれにあたると思います。きちんと保守されていれば全うな利用者が安心して参加できるようになります。それから姉妹プロジェクトと連携することも参加者を増やすことになると思います。これについては次の節で考えてみます。

……かきかけ、というか考え中

姉妹プロジェクトとの連携

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ウィキブックスにはウィキペディアをはじめとしていくつかの姉妹プロジェクトがあります。これらとは排他的に競合するのではなく、互いに補完しながら発展していくべきです。ただ、実際にウィキペディアウィクショナリーウィキニュース、ウィキブックスと参加してきて、参加するプロジェクトごとに頭を切り替えて行くのは結構難しかったりしました。だんだん切り替えに慣れてくるのですが、最初にウィキペディアから出たときが一番大変でした。横のつながりを太くして行く為には、それぞれのプロジェクトが新規参加者むけの文書を整備し、見本となるコンテンツを用意することが大事です。つまりウィキブックスに参加して欲しければそういう準備をしていくことになります。

さて、どのように連携すればよいか。まず、語学系の教科書はウィクショナリーを利用することが考えられます。語学の教科書と辞書は語学学習に必須アイテムですから。それから、さまざまな原文はウィキソース、名言・引用はウィキクォートとの連携が考えられます。また生物の分類はウィキスピーシーズがあります。これらは役割分担がはっきりとしているので、ウィキブックスとの連携が行いやすいと思います。

ウィキペディアとの連携が割と難しいのかもしれません。全てのプロジェクトはウィキペディアから派生してきました。ウィキペディアは全てのプロジェクトの性質を備えています。そのなかでもウィキブックスは一番ウィキペディアとの重複が大きい気がします。構造的には先に述べたような違いがありますが、コンテンツとしては分野によっては結構似通ってきてしまうかもしれません。高校までの教科書や語学学習、条文解説はウィキブックスがやりやすいですが、歴史などはウィキペディアとかなり重複してしまいそうです。この辺は書きやすいところからやっていけば良いし、書き手の力量や好みにも依存するでしょう。基本的にはウィキペディアでは詳細すぎる説明でもウィキブックスでは受け入れることができます。ウィキブックスは詳説、ウィキペディアは概説というのが基本的な住み分けでしょうか。

ここまでのプロジェクトは静的で、ウィキブックスと相性が良いです。ウィキニュースは動的で、その点において特殊です。ウィキブックスとしては、現代社会や地理、法学などのコラムとして利用することができると思います。例えば法学の教科書で判決の例として引き合いに出すことができるでしょう。その記事がなかったら?それは自分で書けば良いのです。

ウィキジュニア

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分野を絞ったウィキジュニアはとっかかりとしては良いかも

ウィキジュニアは、ウィキブックスに対するベック財団から助成金とともに提案された課題でした。ウィキジュニアは独立したプロジェクトではなく、ウィキブックスの一部として作成されています。先にも述べましたが、図鑑や絵本、学習漫画のような形式で、子供向けにやさしく短い解説を作成することは、書き手としても専門書の執筆にとりかかるよりやりやすいかもしれません。

……かきかけ、というか考え中

ウィキバーシティ

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ウィキブックスの充実が先ではないか

日本語版ウィキバーシティが作られましたが、ウィキペディア以外の日本語版姉妹プロジェクトはなかなか活性化できないというご多分のど真ん中を行くような、なかなか厳しい状況です。ウィキバーシティは英語版ウィキブックスから派生してきました。先行のウィキブックスでもなかなか、という状態ですので、「教える」というさらに高度な役割を担当するウィキバーシティの活性化については、相当むずかしいでしょう。まずはウィキブックスを充実させるのが先のように思います。