商法第555条
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- 第555条
- 問屋カ取引所ノ相場アル物品ノ販売又ハ買入ノ委託ヲ受ケタルトキハ自ラ買主又ハ売主ト為ルコトヲ得
此場合ニ於テハ売買ノ代価ハ問屋カ買主又ハ売主ト為リタルコトノ通知ヲ発シタル時ニ於ケル取引所ノ相場ニ依リテ之ヲ定ム - 前項ノ場合ニ於テモ問屋ハ委託者ニ対シテ報酬ヲ請求スルコトヲ得
解説
編集ドイツ商法典第400条及び第402条に由来する。以下では介入権に関するすべてのドイツ商法典の条文を列挙する。
- ドイツ商法典第400条
- ⑴ 取引所価格又は市場価格を有する商品の取次ぎ,及び,取引所価格又は市場価格が公定される有価証券の買入又は販売の取次ぎについては,委託者が別段の指定をしないときは,問屋は自己が買入れるべき物品を自ら売主として供給し又は自己が販売すべき物品を自ら買主として譲り受けることによって,その実行をすることができる。
- ⑵
- ①前項の規定する取次ぎの実行がなされた場合において,買入れ又は売却の締結に関して説明すべき問屋の義務は,計上される価格が取次実行の時点における取引所価格又は市場価格に従ったものであることの証明に限定される。
- ②問屋が実行の通知を委託者への発信のために交付した時点をもって実行の時点とみなす。
- ⑶ 取引所時間又は市場時間中に実行されるべきであった取次ぎにおいて実行の通知が取引所又は市場の閉鎖後に発信のために交付されたときは,計上される価格は取引所終了又は市場閉鎖時の価格より委託者にとって不利であってはならない。
- ⑷ 一定の相場(寄付相場,平均相場,最終相場)で実行されるべき取次ぎにおいては,問屋が実行通知の発信の時点にかかわらず当該一定の相場を委託者に対して計上する権限と義務を負う。
- ⑸ 取引所価格又は市場価格が公定される有価証券及び商品にあって,問屋が介入により取次ぎを実行する場合には,問屋は公定価格より不利な価格を委託者に対して計上することはできない。
- ドイツ商法典第401条(代替取引)
- ⑴ 介入による取次ぎの実行の場合であっても,義務に合致した注意を用いたならば第400条に基づく価格より有利な価格で取次ぎを実行できたときは,問屋は委託者に対してその有利な価格を計上しなければならない。
- ⑵ 介入による取次ぎの実行通知を発信するより前に,問屋が,委託された取次ぎを契機として取引所又は市場において取引を第三者と締結したときは,問屋は,そこで合意された価格より不利な価格を委託者に対して計上してはならない。
- ドイツ商法典第402条(強行法規性)
- 第400条第2項ないし第5項及び第401条の規定は契約によって委託者の不利益に変更することはできない。
- ドイツ商法典第403条(介入の際の手数料)
- 物品を自ら売主として供給し又は買主として譲り受ける問屋は,通例的な手数料を受ける権利を有し,委託にかかる取引においてこの他通常生ずる経費を計上することができる。
- ドイツ商法典第404条(法定質権)
- 第397条及び第398条の規定は,介入による取次ぎの実行の場合にも適用される。
- ドイツ商法典第405 条(実行の通知及び介入,取次委託の撤回)
- ⑴ 問屋が介入の意図を明確に示すことなく取次ぎの実行を通知するときは,第三者との取引の締結によって委託者の計算において実行がなされた旨の表示とみなす。
- ⑵ 取次ぎが介入によるものか第三者との取引締結によるものかについての表示を実行通知の日より後に行うことができる旨の委託者と問屋との間の合意は無効である。
- ⑶ 実行通知が発信のために交付されるよりも前に,委託者が取次委託を撤回し,撤回が委託者に到達したときは,問屋は介入の権利を失う。
自己契約(民法第108条)にあたるため、無効である。しかしたとえば、買入を受任した問屋自身がたまたま目的物(と同種の物)を持っていたとき、わざわざ買い入れ契約の相手方を探すよりも、問屋自身が委託者に売ったほうが迅速で委託者の利益にかなうことがあるため、商法は例外としてこのような契約を認めた。問屋が一方的意思表示によってこのような契約を締結することを「介入」とよび、このような問屋の契約締結権を「介入権」という。
介入権が認められる有効要件は、公正の市場があること、反対の意思がないこと、介入の意思表示の時にまだ実行していないことであるが、「呑行為」による禁止の対象とされることがある。ただし、処罰の対象となっても、契約自体は有効であり、その不履行は損害賠償を発生させる。
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