先手中飛車を目指すほか、様々な展開がみられる。
△3四歩▲5五歩と進んで、中央位取りの将棋にさせる方法の他、△8五歩と飛車先を伸ばす指し方がある。
△8五歩
編集△8五歩を早くするのは、先手の矢倉模様を回避するためもあるが、後手の急戦手段も多いため、決めないで△5四歩を先に突くことや、△6二銀として飛車先を伸ばすのを保留する指し方もある。
▲7七角△5四歩▲8八飛
編集先手が5筋の位取りを警戒して8筋を伸ばし、先手が飛車先を角で受け後手は△5四歩と抑えると、先手は8筋に飛車をまわして向かい飛車にする手段がある。
△6二銀
編集2002年(平成14年)の竜王戦予選、鈴木大介対島朗戦では後手の島はこのあと△6二銀と指した。後手の飛車が浮きゴマになったので、先手の鈴木はさっそく▲8六歩と仕掛ける。以下△同歩▲同角△8五歩▲7七角に、後手は△6四歩と大事をとったが、以下▲4八玉△4二玉に▲6六角とする。後手は△3四歩としたが▲2二角成△同銀▲8四歩となり、以下数手で居飛車側の投了となった。
- ▲6六角に△7四歩は▲7七桂△7三桂▲8四歩△6五歩▲同桂△同桂▲8五飛△5七桂打▲8三歩成△3四歩▲3八玉△4九角▲2八玉△6九桂成▲8一飛など。
- したがって後手は、▲6六角には△6五歩▲7五角△3二玉▲8四歩△7四歩▲3一角成△同角▲8三銀△同飛▲同歩成△8六歩▲7八銀△4四角▲7七銀△8五銀と指す。
手順中、△8六同歩▲同角に△8六同飛とすると、以下▲同飛△9五角には▲8三飛打で、△8六角▲同飛成△7一金ならば▲8二歩。
△4二玉
編集△6二銀に代えて、△4二玉を先にしても▲8六歩と仕掛ける。2010年(平成22年)の順位戦C級1組、福崎文吾対真田圭一戦で、△8六同歩▲同角に後手は△8六同飛とした。以下▲同飛△9五角には▲8三飛打△8二歩▲8五飛引成△8六角▲同龍△5七飛▲5八金左△5六飛成となる。
△3四歩
編集図では△3四歩が多く指されている。
1976年(昭和51年)早指し選手権、真部一男対坪内利幸戦では、先手の真部は▲2二角成△同銀▲5三角と打ち込み、以下△5七角▲6八銀△8四角成▲9六歩と進む。▲9六歩は▲9七角成をつくった手。
2016年(平成28年)の棋聖戦予選、鈴木大介対郷田真隆戦では、上記と同じ▲9六歩まで進み、以下△7四馬▲9七角成△5六馬▲5八金左△3三銀▲8六歩△同歩▲同馬△7四馬▲4八玉△4二金▲7七馬△8八飛成▲同馬と展開した。
2011年(平成23年)では、藤井猛が対松尾歩戦で2度▲6八銀の升田流を採用している。升田流は△7七角成▲同銀となって▲8六歩を狙うが、藤井は△4二玉に▲2二角成△同銀▲4八玉とし、以下は△6二銀▲3八玉△3二玉▲4八銀△5三銀▲7七銀△6四銀▲8六歩とする。△同歩▲同銀△3三角▲7七角△6五銀▲8五銀△7七角成▲同桂△7六銀▲8三歩に、
- 2011年の順位戦B級1組では、△7七銀成となったが、先手勝利に終わる。
- 2012年の棋王戦予選では、△8三同飛▲8四銀△8二飛▲8三銀不成△4二飛▲7八金となったが、後手勝利に終わる。
藤井はこれを「2手目△8四歩をなくす手」と呼んだという。
▲7七角△5四歩▲5八飛
編集北村昌男の著書、型破り振飛車の急所(王将ブックス ポケット版─実戦振飛車シリーズⅣ、北辰堂、1975年)の第2章・▲5五歩交換型中飛車に掲載されていた指し方である、乱戦狙いの中飛車。以下、△6二銀 ▲5五歩 △同歩 ▲同飛。
他の駒は動かさずに早くに歩交換をする。この後、△4二玉 ▲4八玉 △3二玉 ▲3八玉 で、そこで△3四歩なら ▲5四飛とし、#△3二玉▲5五歩△同歩▲同飛の手順に合流。以下△7七角成 ▲同桂から6五桂。
なお、このかたちで有名なハメ手に、▲3八玉のところで▲7八金とし、△3四歩 ▲5四飛 △7七角成 ▲同桂に△4五角を打たせるなら、以下▲5五飛 △2七角成 ▲2五飛 △5四馬 ▲2四歩 がある。△同歩なら▲同飛で、馬取りと▲2三歩が残る。
▲4八銀
編集英春流でみられる。△8六歩ときても、▲同歩△同飛▲7八金で、△7六飛ならば▲6六角△8六飛▲8八銀。後手は飛車を8二に引くと先手は▲5七銀から飛車を8筋に持っていき、逆に飛車先を制圧する作戦に持っていく。
△3四歩▲5五歩△8五歩▲5八飛
編集△3四歩▲5五歩には△8五歩が多く指されている。
△8六歩▲同歩△同飛には▲7八金と、▲5四歩[1]がある。△同歩▲2二角成△同銀▲7七角に
- △8九飛成▲2二角成△3三角▲2一馬のあと、△9九角成では▲5三桂で△8六桂などが効かない。
- △8二飛は、▲5四飛△5三歩▲同飛成△5二金右▲5八竜△3三銀▲8六歩など。
図以下、△6二銀▲4八玉△4二玉▲3八玉で
- △8六歩は、▲同歩△同飛▲5四歩から角交換後の7五角がある。
- △3二玉以下は▲7七角△4二銀▲6八銀△5二金右▲5七銀△4四歩▲5六銀△4三銀▲2八玉△6四歩▲3八銀△7四歩▲4六歩△1四歩▲1六歩△4二金直▲6六歩△6三銀▲5九角△7三桂▲7八飛など。
△5四歩▲5五歩△同歩▲同角
編集△5四歩であれば、▲5五歩△同歩▲同角が生じる。
- △8五歩には▲7七角とすると、次に▲5四歩などがある。
- △6二銀は、▲3三角成で対局が終了する[2]。
- △3四歩も、▲2二角成~▲7七馬。
△8五歩▲7七角
編集
△8五歩▲7七角△5四歩▲5八飛
編集▲5八飛に代えて▲8八飛~▲8六歩[3]、▲8八飛△3四歩▲6八銀 [4]もある。
△4二玉▲4八玉△3四歩▲2二角成△同銀▲7五角
編集9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | |
香 | 桂 | 銀 | 金 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 一 | |
飛 | 王 | 二 | |||||||
歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 三 | |||
歩 | 歩 | 四 | |||||||
歩 | 角 | 五 | |||||||
歩 | 歩 | 六 | |||||||
歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 七 | ||
飛 | 玉 | 八 | |||||||
香 | 桂 | 銀 | 金 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 九 |
△4二玉の位置で△3四歩は早く、図の▲7五角がある。
- △5二玉は▲5五歩
- △3二玉は▲5三角成△4四角で、▲4四同馬△同歩▲5五歩△同歩▲5四角△3一玉▲6三角成△4五角▲6四馬△3二玉▲7八銀△2七角成▲5四歩
△6二銀
編集▲4八玉△4二玉▲3八玉
編集△3四歩▲6八銀
編集今度は△6二銀があるので、▲7五角の筋は受けることができる。
△6二銀で△3四歩は▲2二角成△同銀▲5三角から馬をつくる順がある[10]。以下△4四角なら▲同馬△同歩▲4三角など。
▲3八玉で▲5五歩は△同歩▲同飛△3四歩▲5四飛△7七角成▲同桂△4五角。
図の▲6八銀は角交換に備える手。
△3二玉▲5五歩△同歩▲同飛
編集9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | |
香 | 桂 | 金 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 一 | ||
飛 | 銀 | 王 | 角 | 二 | |||||
歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 三 | ||
四 | |||||||||
歩 | 飛 | 五 | |||||||
歩 | 六 | ||||||||
歩 | 歩 | 角 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 七 | |
玉 | 八 | ||||||||
香 | 桂 | 銀 | 金 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 九 |
後手がさらに△3二玉と深く移動すると、▲5五歩が生じる。
図以下△3四歩は▲5四飛があり[11]、次に▲3四飛や▲2二角成△同銀▲6六角から▲8四飛などの狙いがある。
▲5四飛以下、△7七角成▲同桂△8六歩▲同歩△同飛は▲6五桂。
▲5五歩△同歩▲同角
編集9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | |
香 | 桂 | 金 | 王 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 一 | |
飛 | 銀 | 角 | 二 | ||||||
歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 三 | ||
四 | |||||||||
歩 | 角 | 五 | |||||||
歩 | 六 | ||||||||
歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 七 | ||
飛 | 八 | ||||||||
香 | 桂 | 銀 | 金 | 玉 | 金 | 銀 | 桂 | 香 | 九 |
△6二銀に、直ちに▲5五歩もある。△同歩に▲同飛もあるが、▲同角もある。以下△8六歩であると、▲3三角成で対局が終了する[12]。
▲同飛に、△4二玉で▲7八金とし、以下△3二玉▲4八玉で△3四歩であると▲5四飛がある。△7七角成▲同桂△4五角▲5五飛△2七角成は、▲2五飛△5四馬▲2四歩。
▲4八玉に戻って△4二銀▲3八玉△5一金右▲2八玉△3四歩▲5六飛。以下△7七角成▲同桂△8六歩(▲7五歩とされる前に)▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛▲7五歩で、
- △5三銀右は、▲5四歩△6四銀(△4四銀は▲6五桂)▲7一角など。
- △6四歩は、▲8六歩△6三銀▲8五歩△7四歩▲同歩(▲8六飛△9五角)△同銀▲5五角~▲6四角~▲5四歩など。
途中▲5六飛のところで▲5二飛成は△同金▲2二角成△同玉▲4一角△5一金(△5一銀右は▲3二金以下詰み)で、▲3二金は△1二玉▲5二歩△4一金▲同金△3三銀で、後手が受け切れる。
途中△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛で、▲8三歩△同飛▲6一角は、△5五歩▲同飛△5四歩▲同飛△5三歩▲3四飛△3三歩▲8三角成△3四歩など。
参考文献
編集- ^ よくわかる中飛車 17ページ
- ^ わかる! 勝てる!! 現代中飛車 108頁
- ^ 破壊力抜群!角道オープン向かい飛車 徹底ガイド 8ページ
- ^ 升田の研究 鬼手と石田流 31ページ
- ^ 将棋の教科書 現代振り飛車 52ページ
- ^ ライバルに勝つ最新定跡 52ページ
- ^ 久保流 最強先手振り飛車 54ページ
- ^ 遠山流中飛車持久戦ガイド 7頁
- ^ 遠山流中飛車急戦ガイド 48ページ
- ^ わかる! 勝てる!! 現代中飛車 107ページ
- ^ すぐ勝てる!先手中飛車 13頁
- ^ わかる! 勝てる!! 現代中飛車 108頁
外部リンク
編集- 目指せ 初段 第93回
- 目指せ 初段 第40回
- 中飛車基本手筋17(ゴキゲン中飛車初回 著
- 観る将棋ファンのための序盤戦型ガイド 後手ゴキゲン中飛車
- Google book ゴキゲン中飛車で行こう 近藤正和 著
- Google book 戸辺流こだわりのゴキゲン中飛車 戸辺誠 著
- Google book これだけで勝てる ゴキゲン中飛車のコツ 大平武洋 著
- Google book 中飛車粉砕!超速▲3七銀戦法のすべて 長岡裕也 著
- Google book 堅陣で圧倒!対中飛車一直線穴熊 長谷部浩平 著
- Google book 振り飛車最前線 ゴキゲン中飛車VS超速▲4六銀戦法 杉本昌隆 著
- Google book 決定版!ゴキゲン中飛車VS超急戦 ~将棋史上最も過激な殴り合い~ 畠山成幸 著
- Google book ゴキゲン中飛車で勝つための7つの鉄則と16の心得 宮本広志 著
- Google book 対抗形の急所がわかる! 居飛車VS振り飛車の重要テーマ 上村亘 著
- Google book 青嶋の結論 対中飛車・居飛車穴熊必勝ガイド 青嶋未来 著
- Google book 禁断のオッサン流振り飛車破り 神谷広志 著
- Google book ひと目の中飛車(マイナビ将棋文庫SP、長岡裕也 著
- Google book よくわかる中飛車(第2章・後手番ゴキゲン中飛車)藤倉勇樹 著
- Google book 中飛車破り 一直線穴熊徹底ガイド(第1章・先手一直線穴熊VSゴキゲン中飛車)髙見泰地 著
- Google book 最新定跡村山レポート ゴキゲン中飛車vs超速3七銀 村山慈明・著
- Google book ライバルに勝つ最新定跡(第1章・後手番ゴキゲン中飛車 第2章・ゴキゲン中飛車超急戦) 村山慈明・著
- Google book アマの知らない マル秘定跡(第2章・ゴキゲン中飛車対策 5八金右超急戦)
- Google book 最新戦法 マル秘定跡ファイル(第1章・ゴキゲン中飛車対策 丸山ワクチン) 村田顕弘・著
- Google book 長岡研究ノート 振り飛車編(第1章・ゴキゲン中飛車対策) 長岡裕也・著
- Google book 久保&菅井の振り飛車研究 超急戦 稲葉新手3三香 久保利明、菅井竜也 著
- Google book 三浦&阿部健の居飛車研究 ゴキゲン中飛車対超急戦 三浦弘行、阿部健治郎 著
- Google book 最新の振り飛車対策・7八金型、5八金右超急戦、二枚銀、超速3七銀 深浦康市 著
- Google book 速攻!ゴキゲン中飛車破り・第1章超速3七銀戦法 中村太地 著
- Google book 居飛車穴熊の教科書・ゴキゲン中飛車vs居飛車穴熊 高橋道雄 著
- Google book とっておきの穴熊退治 佐藤秀司 著
- Google book 解明!相穴熊の最先端 北島忠雄 著
- Google book 遠山流中飛車持久戦ガイド 遠山雄亮 著
- Google book 遠山流中飛車急戦ガイド 遠山雄亮 著
- Google book 早分かり 中飛車定跡ガイド 所司和晴 著
- これだけで勝てる ゴキゲン中飛車のコツ【電子書籍】 大平 武洋 著
- 中飛車粉砕!超速▲3七銀戦法のすべて【電子書籍】長岡裕也 著