民法第1022条
条文
編集- 第1022条
- 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
解説
編集- 遺贈は、単独行為の典型であって、かつ、本来的には受贈者に対する無償行為であり撤回により損害等が発生することはないので、遺言者の意思によっていつでも撤回できる。明治民法第1124条を継承。
- 「負担付遺贈(負担月死因贈与もこれに準じる)」の場合も、遺言者が亡くなって遺贈が発生しない限り、負担も発生しないため、撤回による損害等は発生しないのが原則である。ただし、遺言において、負担を生前に行わせるもの(先履行)が作成されることはあり、生前に受贈者による履行がなされた場合、もはや無償行為とは言いがたく、遺贈の直接の取り扱いが修正(遺言撤回の制限など)されている(下記判例参照)。
判例
編集※2004年民法改正(平成16年民法現代語化)まで、「遺言の撤回」は「遺言の取消」と称されていたため、以下の判例において、「取消」とあるのは「撤回」と読み替える。
- 贈与契約不存在確認請求(最高裁判決 昭和47年05月25日)民法第554条
- 死因贈与の取消(→撤回)と民法1022条
- 死因贈与の取消(→撤回)については、民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきである。
- 遺言無効確認(最高裁判決 昭和57年4月30日)
- 負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合と民法1022条、1023条の規定の準用の有無
- 負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、右契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし右契約の全部又は一部を取り消すこと(→撤回すること)がやむをえないと認められる特段の事情がない限り、民法1022条、1023条の各規定は準用されない。
参考
編集- 明治民法において、本条には相続承認・放棄に関する撤回の禁止等についての以下の規定があった。趣旨は、民法第919条に継承された。
- 承認及ヒ放棄ハ第千十七条第一項ノ期間内ト雖モ之ヲ取消スコトヲ得ス
- 前項ノ規定ハ第一編及ヒ前編ノ規定ニ依リテ承認又ハ放棄ノ取消ヲ為スコトヲ妨ケス但其取消権ハ追認ヲ為スコトヲ得ル時ヨリ六个月間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス承認又ハ放棄ノ時ヨリ十年ヲ経過シタルトキ亦同シ
- 明治民法第1124条
- 遺言者ハ何時ニテモ遺言ノ方式ニ従ヒテ其遺言ノ全部又ハ一部ヲ取消スコトヲ得
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