法学民事法民法コンメンタール民法第1編 総則 (コンメンタール民法)

条文編集

制限能力者の詐術)

第21条
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

改正経緯編集

2004年改正により民法第20条に定められていた以下の条項が繰り下がり、第21に定められていた住所に関する条項は第22条に繰り下がった。
無能力者カ能力者タルコトヲ信セシムル為メ詐術ヲ用ヰタルトキハ其行為ヲ取消スコトヲ得ス

解説編集

趣旨
制限行為能力者の制度は、行為者が判断能力の不足などにより不利益な財産処分等を防止することが目的であるが、行為者本人の意思で相手方を騙して制限行為能力者であることを隠す程度の判断能力があれば、その判断能力の不足の程度は、保護に値するものではないとの価値判断によるものである。
明治民法以来の条項であり、古くは制限能力者保護の観点が強かったが、後には、取引保護の観点が強まり、適用要件が緩くなる傾向にあった。
ただし、制限行為能力者(改正前「無能力者」)の詐術が論点となったのは、改正前準禁治産者の認定要件であった「浪費者」によるものが多く、浪費者の場合、日常生活の行為に異常は見られないため取引保護優先も妥当であったが、現行制度においては制限行為能力者の精神状態を重視するため要件の緩和傾向が一般化されるかは疑義がある。
要件
  1. 行為能力者であることを信じさせる目的が制限行為能力者にあったこと。
  2. 詐術を用いたこと。
    戸籍謄本の偽造や他人にを使って偽証をさせた場合などの積極的詐術が立法時における典型であったが、上述のとおり、昭和初期以降緩和傾向にあって、単に自分が制限能力者ではないと告げた場合も詐術を用いたと認定される場合もある。制限能力者(無能力者)であることの黙秘については判例を参照。
  3. 相手方が詐術により、制限行為能力者が行為能力者であることを信じたこと。
    詐術との因果関係を要する。詐術と無関係に単なる不注意で行為能力者と思い込んだ場合などは、これに当てはまらない。
効果
行為取り消しの阻害事項となる。

関連条文編集

関連判例編集

  • 大判昭2年5月24日民集6巻283頁
  • 土地所有権移転登記抹消登記手続請求 (最高裁判決 昭和44年02月13日)
     無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まつて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法20条(改正前・現行本条)にいう「詐術」にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にあたらない。

参考文献編集

  • 我妻栄『新訂民法総則』(岩波書店、1965年)92頁
  • 四宮和夫『民法総則(第4版補正版)』(法律学講座双書)(弘文堂、1996年)58頁

前条:
民法第20条
(制限行為能力者の相手方の催告権)
民法
第1編 総則

第2章 人

第3節 行為能力
次条:
第4節 住所
民法第22条
(住所)


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