民法第423条の2
条文
編集(代位行使の範囲)
- 第423条の2
- 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。
解説
編集- 2017年改正により新設。
- 債権者が行使できる代位の範囲は、債権の額に限定されることを定めた。判例(最判昭44.6.24)で確立された法理を法文化したもの。
- 例示すると、AはBに対して500万円の貸金債権を有しており返済が滞って資産保全を要する時、BのCに対する未回収の貸金債権1000万円に対して全額ではなく、保有する500万円のみ代位して請求できる。
- 一方、反対解釈としては、被代位権利の目的が不可分である場合は、自己の債権の額を超えて被代位権利を行使することができることとなる。上記の例で、BがCに対して有するものが1000万円相当の建物の引き渡し債権である場合、これは分割不能なので、債権全体に対して代位請求できる。
- 中間試案においては、債務者の全体財産保全の観点から、「債権者は,前記1の代位行使をする場合において,その代位行使に係る権利の全部を行使することができるものとする。この場合において,当該権利の価額が被保全債権の額を超えるときは,債権者は,当該権利以外の債務者の権利を行使することができないものとする。」とされていたが、判例が維持された。
- なお、詐害行為取消権についても第424条の8において同趣旨の規定が定められている。
参照条文
編集判例
編集- 売掛代金請求(最高裁判決 昭和44年06月24日・民集23巻7号1079頁)
- 金銭債権について債権者代位権を行使しうる範囲
- 債権者代位権は、債権者の債権を保全するために認められた制度であるから、これを行使しうる範囲は、右債権の保全に必要な限度に限られるべきものであつて、債権者が債務者に対する金銭債権に基づいて債務者の第三債務者に対して有する金銭債権を代位行使する場合においては、債権者は自己の債権額の範囲においてのみ債務者の債権を行使しうると解すべきである。
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