「高等学校政治経済/経済/国際経済のしくみ」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
国際収支
比較生産費説、リスト、国際分業の垂直的分業と水平的分業
42 行
 
== 貿易の理論と現状 ==
[[File:David ricardo.jpg|thumb|'''リカード''' イギリスの経済学者で、主著に『経済書くおよび課税の原理』がある。]]
19世紀初め、イギリスの経済学者[[w:リカード|リカード]]によって[[w:比較生産費説|比較生産費説]]が主張された。国際分業には、先進工業国間の水平的分業と、先進工業国対発展途上国の垂直的分業がある。国際分業の[[w:自由貿易|自由貿易論]]に対して、ドイツの経済学者[[w:フリードリッヒ・リスト|リスト]]はイギリスに追いつくために[[w:保護貿易|保護貿易論]]を主張した。
貿易では、その国が、相手の外国よりも安い値段で高品質に作れる製品を作ったほうが、両方の国にとって得である。
 
=== 地域的な連合比較生産費説 ===
また、もし、ある国が、2種類以上の商品を相手国よりも安く作れるとしたら、相対的により安いほうの商品の生産に集中して輸出するほうが、さらに利益をあげられる。この、相対的に安い商品の生産・輸出に特化したほうが利益をあげられるという説を、'''比較生産費説'''(ひかくせいさんひ せつ)という。
=== EUの歩み ===
(※ EUは経済統合だけでなく外交や安全保障などの連携も目指した国際機関であるが、本ページでは主にEUの経済統合について説明する。)
 
比較生産費説は、19世紀初めのイギリスの経済学者'''リカード'''(D.Rocardo)が初めて理論的に示した。
ヨーロッパでは、1967年には、ヨーロッパ経済共同体(EEC)とヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)とヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)が統合され、'''EC'''('''ヨーロッパ共同体'''、European Communities)が成立した。
 
このような理論が、'''自由貿易'''を推進する立場の者たちの、理論的根拠となっている。
ヨーロッパでは、ECが1992年の'''マーストリヒト条約'''により、1993年に'''EU'''('''欧州連合''')となった。また、EU化にともない、1999年からは金融分野の共通通貨として'''ユーロ'''(Euro)が導入され、2002年からは現金通貨としてユーロが流通するようになった。
 
また、2007年に'''リスボン条約'''が調印され(2009年にリスボン条約が発効)、EU大統領(欧州理事会常任議長)やEU外相(外務・安全保障政策上級代表)が置かれるようになった。
 
{{-}}
{| class="wikitable" style="float:right"
|+ 特価前
!   !! ぶどう酒1単位の<br />生産に必要な労働量 !! 毛織物1単位の<br />生産に必要な労働量
|-
! ポルトガル
|  80 ||  90
|-
! イギリス
|  120 ||  100  
|}
 
特価前は、ポルトガルは80人でぶどう酒1単位を生産でき、90人で毛織物1単位を生産できる。これらの産業のポルトガルの生産者の合計は170人。
ギリシャでは2010年〜2011年に財政危機が発生した。
 
イギリスは120人でぶどう酒を1単位生産でき、100人で毛織物を1単位生産できる。これらの産業のイギリスの生産者の合計は220人。
そのため、EUでは'''欧州安定メカニズム'''(ESM)が2012年に設置された。
 
特価前は、イギリス・ポルトガルの両国の合計で、ぶどう酒を2単位生産でき、毛織物を2単位生産できる。
なお、ギリシャ財政危機により、ユーロが対ドル、対円(日本円)に対して下落した。
 
{{-}}
なお、イギリスはユーロに加盟していない。
{| class="wikitable" style="float:right"
EUに加盟をしていても、ユーロに加盟していない国がある。
|+ 特価後
!   !! ぶどう酒1単位の<br />生産に必要な労働量 !! 毛織物1単位の<br />生産に必要な労働量
|-
! ポルトガル
|  80 ||  90
|-
! イギリス
|  120 ||  100  
|}
 
特価後は、ポルトガルは、ぶどう酒を 170人 ÷ 80 = 2.125 単位を生産できる。
イギリス・デンマーク・スウェーデンは、ユーロに加盟してない。
イギリスは、毛織物を 220÷100 = 2.2単位を生産できる。
 
ぶどう酒、毛織物の両方とも、特価前の2単位よりも生産量が増えている。
=== 他地域の経済統合 ===
他地域での経済統合では、APEC(アジア太平洋協力会議、発音:エイペック)、NAFTA(北米自由貿易協定、発音:ナフタ)などがある。
 
{{-}}
北アメリカでは、1992年に'''NAFTA'''('''北米自由貿易協定'''、発音:ナフタ)が、アメリカ・カナダ・メキシコにより、結成された。
 
このような比較貿易の理論などにより、分業の理論が国際的な範囲にまで広がり、'''国際分業'''の理論ができていった。
いっぽう、南米では、1995年にブラジル・アルゼンチンなどにより'''南米南部共同市場'''('''メルコスール'''、MERCOSUR)が結成された。
 
また、アダム=スミスなどの自由経済の理論が、リカードらの比較貿易の理論によって、国際貿易の自由経済化の理論にまで発展したことになる。
なお、近年、南北アメリカ共通の経済統合の「米州自由貿易地域」(FTAA、Free Trade Area of America)を結成しようという動きがあるが、まだ実現していない。
 
=== 保護貿易論 ===
東南アジアでは、ベトナム戦争を背景に、自由主義勢力が社会主義勢力に対抗するため、1967年にインドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイの5ヶ国からなる東南アジア諸国連合(ASEAN)が発足した。ベトナム戦争の終結などもあり、ASEANは地域間の経済・外交協力などをする機構へと変遷していった。そして、ベトナムも95年にASEANに加盟した。
一方、現実の貿易は、けっして完全な自由貿易ではなく、実際には、何らかの規制を加えている。
 
自由貿易論に反対して、19世紀の当時、工業が発展途上であったドイツの経済学者'''リスト'''(F.List)は、自国の幼稚な産業を保護するための'''保護貿易'''が必要であると主張した。
アジア・太平洋地域では、1989年から'''オーストラリア'''の提唱で'''APEC'''('''アジア太平洋協力会議'''、発音:エイペック、Asia Pacific Ecomic Cooperation)が結成され、オーストラリアや日本・中国・韓国や北アメリカなどの国が加盟しており、域内の貿易・投資の自由化などを目指している。
 
現代での保護貿易の手段としては、'''関税'''をかけたり、輸入数量に制限を設けたるなどの'''非関税障壁'''がある。輸入品の検査の厳格化も、非関税障壁となる場合もある。
近年、'''環太平洋経済連携協定'''('''TPP'''、Trans Pacific Partnership)について議論されており、アメリカやオーストラリアなどが交渉に参加しており、日本も交渉に参加しており、原則的に加盟国間ですべての関税の撤廃を目指すようだが、内容にはまだ未定・不明な事項がある。
 
現代では先進工業国においても、自国の農業を保護するための保護貿易的な措置を行っている。
TPPはもともと2006年にシンガポール・ニュージーランド・ブルネイ・チリの4ヶ国が結んだ経済協定である。
この4ヶ国の経済協定に、アメリカ合衆国やオーストラリアが参加を表明し、日本の貿易相手として重要なアメリカ・オーストラリアなどの国が加わったこともあり、日本もTPPを意識せざるを得なくなった。
 
日本でも、食料安全保障の主張などにもとづき、農業を貿易では保護している。
=== 未分類 ===
 
アジア通貨危機は1997年にタイで起こり始め、タイの通貨バーツが暴落し、暴落は各国に及び、韓国などにも及んだ。
=== 国際分業の理論 ===
国際分業には、おもに発展途上国が単純な部品や原材料を供給して先進工業国が複雑な加工などをおこなう'''垂直的分業'''と、一方、おもに先進工業国どうしが完成品を貿易しあっている'''水平的分業'''がある。
 
== 外国為替 ==
161 ⟶ 182行目:
 
高度経済成長時代の「国際収支の天井(てんじょう)」は、1970年代には国際収支が黒字になり、解決された。
 
 
== 地域的な連合 ==
=== EUの歩み ===
(※ EUは経済統合だけでなく外交や安全保障などの連携も目指した国際機関であるが、本ページでは主にEUの経済統合について説明する。)
 
ヨーロッパでは、1967年には、ヨーロッパ経済共同体(EEC)とヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)とヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)が統合され、'''EC'''('''ヨーロッパ共同体'''、European Communities)が成立した。
 
ヨーロッパでは、ECが1992年の'''マーストリヒト条約'''により、1993年に'''EU'''('''欧州連合''')となった。また、EU化にともない、1999年からは金融分野の共通通貨として'''ユーロ'''(Euro)が導入され、2002年からは現金通貨としてユーロが流通するようになった。
 
また、2007年に'''リスボン条約'''が調印され(2009年にリスボン条約が発効)、EU大統領(欧州理事会常任議長)やEU外相(外務・安全保障政策上級代表)が置かれるようになった。
 
 
ギリシャでは2010年〜2011年に財政危機が発生した。
 
そのため、EUでは'''欧州安定メカニズム'''(ESM)が2012年に設置された。
 
なお、ギリシャ財政危機により、ユーロが対ドル、対円(日本円)に対して下落した。
 
なお、イギリスはユーロに加盟していない。
EUに加盟をしていても、ユーロに加盟していない国がある。
 
イギリス・デンマーク・スウェーデンは、ユーロに加盟してない。
 
=== 他地域の経済統合 ===
他地域での経済統合では、APEC(アジア太平洋協力会議、発音:エイペック)、NAFTA(北米自由貿易協定、発音:ナフタ)などがある。
 
北アメリカでは、1992年に'''NAFTA'''('''北米自由貿易協定'''、発音:ナフタ)が、アメリカ・カナダ・メキシコにより、結成された。
 
いっぽう、南米では、1995年にブラジル・アルゼンチンなどにより'''南米南部共同市場'''('''メルコスール'''、MERCOSUR)が結成された。
 
なお、近年、南北アメリカ共通の経済統合の「米州自由貿易地域」(FTAA、Free Trade Area of America)を結成しようという動きがあるが、まだ実現していない。
 
東南アジアでは、ベトナム戦争を背景に、自由主義勢力が社会主義勢力に対抗するため、1967年にインドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイの5ヶ国からなる東南アジア諸国連合(ASEAN)が発足した。ベトナム戦争の終結などもあり、ASEANは地域間の経済・外交協力などをする機構へと変遷していった。そして、ベトナムも95年にASEANに加盟した。
 
アジア・太平洋地域では、1989年から'''オーストラリア'''の提唱で'''APEC'''('''アジア太平洋協力会議'''、発音:エイペック、Asia Pacific Ecomic Cooperation)が結成され、オーストラリアや日本・中国・韓国や北アメリカなどの国が加盟しており、域内の貿易・投資の自由化などを目指している。
 
近年、'''環太平洋経済連携協定'''('''TPP'''、Trans Pacific Partnership)について議論されており、アメリカやオーストラリアなどが交渉に参加しており、日本も交渉に参加しており、原則的に加盟国間ですべての関税の撤廃を目指すようだが、内容にはまだ未定・不明な事項がある。
 
TPPはもともと2006年にシンガポール・ニュージーランド・ブルネイ・チリの4ヶ国が結んだ経済協定である。
この4ヶ国の経済協定に、アメリカ合衆国やオーストラリアが参加を表明し、日本の貿易相手として重要なアメリカ・オーストラリアなどの国が加わったこともあり、日本もTPPを意識せざるを得なくなった。
 
=== 未分類 ===
アジア通貨危機は1997年にタイで起こり始め、タイの通貨バーツが暴落し、暴落は各国に及び、韓国などにも及んだ。