「高等学校政治経済/経済/物価の動き」の版間の差分

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停滞(スタグネーション)とインフレーションをあわせた用語
経済理論における変数分離
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いっぽう、年率数パーセントていどの持続的なインフレを'''クリーピング・インフレ'''(creeping inflation)という。クリーピングとは、「しのびよる」という意味。
 
== 範囲外: 変数の分離 ==
{{コラム|変数の分離|
前の説で、(インフレ、デフレといった)物価と、景気との関係を論じた。
 
しかし、本来、物価と景気とは、あくまで別個の概念である。
 
物価が変動すれば、長期的には、ある程度は、景気に影響を与えるだろうから、物価と景気とのあいだに、ある程度の関連性はある。
 
しかし、少しでも関連性のある物を同じ概念として扱うと、世の中のすべての物事は関連しあってるので、要因が多くなりすぎて、経済分析などの社会科的な分析が不可能になってしまう。
 
そこで、経済学では、ある概念(たとえば物価)について、影響・関連性の大きそうな物事(たとえば景気)であっても、いったん無関係であると仮定する。
 
そして、それぞれ、別個の概念を用意して(たとえば「物価」と言う概念と、「景気」という概念)、さらに、それぞれ別個に数値化する(たとえば「物価指数」と「景気指数」のように)。
 
こうした上で、各国や各時代の統計データなどで、物価と景気との関係を調べることにより、学問的にも高度な分析がしやすくなる。
また、「物価指数」「景気指数」などのように数値化してあるので、数学的な分析手法も活用できる。
 
このように、たとえ関連する複数の概念であっても、いったん、独立した別個の概念として扱って、それぞれ別個に数値化する手法を、'''変数の分離''' (へんすうのぶんり) という。(用語「変数の分離」は高校の範囲外なので、覚えなくていい。)
 
さて、物価と消費者心理のあいだには、テレビや雑誌などのメディアの経済評論でも、物価と消費者心理を関連づける仮説がいろいろとあるが、とりあえず経済学的に客観的に議論をしたいなら、いったん変数を分離すればいい。変数の分離という手法により、特定の経済仮説には片寄らないで議論でき、しかも必要に応じて物価と消費者心理を結び付けて論じることもできる。
 
つまり、「物価」「景気」などの、それぞれの概念を、まるで部品のように、必要に応じて、自由に分解できたり、あるいは組み立てたりできるようにしているのである。(たとえるなら、製造業などでいう「モジュール化」のように。)
 
さて、高校の「政治経済」科目や大学の経済学では、景気と物価との関連を考察するが、あくまでも「景気」と「物価」は別個の概念として扱うので、混同しないようにしよう。
 
 
* 自然科学での「変数の分離」
変数の分離というのは、何も経済学だけの概念ではなく、物理学や数学などでも使われる。おそらく、「変数の分離」は、もともと、物理学などの自然科学での用語であろう。
 
たとえば、物理Iの科目などで、物体の運動を論じるとき、質量と速度と加速度という概念を用意して、それぞれ、別個に数値化できるようになっている。質量を測定するには、天びん で測定できる。速度や加速度は用いなくても、質量を測定できるようになっている。
 
その上で、力学の理論では、物体に力が加わったときなど、質量と速度、加速度のあいだに、どのような関係があるかを、数式や数値を使って論じているのである。
 
また、じっさいの物体には、密度や、その物体を構成する原子の原子量、分子の分子量などもあるが、しかし、そういうのは、いったん力学の理論では無視している。(影響の小さい事はいったん無視するのが、「変数の分離」のテクニックである。)
 
:※ この「変数の分離」と経済学、物理学との関連の論法は、なにも私(利用者:すじにくシチュー)の独創ではなく、経済学者の故・小室直樹(こむろ なおき)の著作にあった論法をアレンジしたものである。
 
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