「高等学校商業 経済活動と法/権利と義務」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
とりあえず記述を開始。
 
とりあえず加筆
20 行
私たちのような実在の生きている人間の個人個人は、権利義務の主体になりうる。
私達のような実在の人間の他にも、会社や協同組合・学校などの組織も、権利・義務の主体になってもいい法律になっている。
 
つまり、
一方、イヌやネコは権利能力をもてないし、権利・義務の主体にもなれない。(※参考文献: 実教出版『経済活動と法』、森島昭夫、平成25年検定版、15ページ傍注。 参考文献:有斐閣『民法 総則・物件 第5版』山野目章夫、2013年第5版2刷、28ページ。)
 
会社や協同組合などを、契約などの権利・義務の概念から見た場合、'''法人'''(ほうじん)という。
27 ⟶ 28行目:
 
日本の民法で単に「人」と言った場合、自然人と法人との両方を含む場合もあるが、単に自然人のみを言う場合もあるので、どちらの意味で持ちているか注意が必要である。
 
外国人に対しても、権利能力は原則として平等に認められている。(民3 (2) )(←※民法第3条の2項めの事。このような場合、法学書では一般には 民3② のように書かれるが、Wikibooks当記事では、コンピューターによる文字化けのリスクのため、書き方を変えることにする。)(※ 外国人の権利能力についても検定教科書の範囲内。)
 
 
== 自然人の権利能力 ==
32 ⟶ 36行目:
 
このような決まりがあるため、赤ちゃんの父母が死んだ時、赤ちゃんは法の定めに従って財産を相続できる。
また、赤ちゃんでも、法律的には物を所有したり、財産を所有したり、土地を所有できる。
 
自然人の権利能力の取得時期を、「権利能力の'''始期'''(しき)」という。まとめると、自然人の権利能力の始期は、出生のときである。
 
そして、人(自然人)が死ぬと、その人の権利能力も無くなる。人の権利能力の終わりのとき('''終期'''(しゅうき) )は、その人の死亡のときである。
 
 
* 胎児の例外
胎児(たいじ)とは、まだ生まれる前の赤ちゃんで、母親のお腹の中にいる状態の赤ちゃんである。仮に父親が交通事故などで死んだ場合を考えると、もし原則どおりに権利能力の始期が出生からだとすると、胎児である赤ちゃんは、仮にのちに生きて生まれても、その赤ちゃんは父親の財産を相続できなくなってしまう。
 
そこで、例外的に胎児であっても、親の財産の相続に関しては、その胎児が後に(のちに)生きて生まれることを条件に、法律上では、胎児はすでに生きて生まれた人として扱う。(民886) 同様の理由で、損害賠償についても、胎児は、すでに生きて生まれた者として扱う。(民721)
 
まとめると、日本の民法など法律上では、胎児は、相続と損害賠償については、生きて生まれることを条件に、すでに生まれたものと見なしている。
 
== 失踪宣告 ==
長年、消息が途絶えていたり、長年の行方不明などで、生死がハッキリしない場合、このような状態を'''失踪'''(しっそう)という。一定の期間を越えた失踪は、すでに死んだものとして扱う。
 
もし、そういう制度が無いと、仮に、その行方不明者がお金の貸し借りをしていた場合、家族などは本人がいないため、それを解決できなくなるという恐れがある。
 
海難事故や戦災による失踪の場合、1年で死亡として扱う。なお、海難事故や戦災などによる、特に危険な出来事による失踪のことを'''特別失踪'''という。つまり、民法では、特別失踪は、1年間の生死不明で死亡として扱う。
 
いっぽう、それ以外の失踪(「'''普通失踪'''」という)の場合、7年間の生死不明で死亡として扱う。(民31)
 
これらの期間(普通失踪なら7年、特別失踪なら1年)の経過によって、家族などが家庭裁判所などに行方不明者の失踪宣告をしてもらう申し立てが可能になり、そして、行方不明者が法律上の死亡として扱われる。
そして、失踪宣告により、すでに死亡したと扱われるので、相続が始まる。
 
長年の行方不明だったために死亡として処理された者が、のちに生きて帰って来た場合、失踪宣告が取り消される。(民32) しかし、すでに相続によって財産が移動してしまった場合、もし家族が失踪者の生存を知らずに相続を行った場合(このような場合を「善意」の場合、などという)なら、移動してしまったぶんの財産を戻すことはできない。(※ 範囲外)(※ 参考文献: 有斐閣『基本民法 I』大村敦志、第3版、平成23年、183ページ.)
 
== 自然人の行為能力と制限行為能力者制度 ==
=== 意志能力と行為能力 ===
私たちが買い物をしたり、借金をするなどの行為は、正常な判断で行われなけれならないだろう。
 
法律的には、3歳のこどもが行った借金は、無効である。なぜなら、その3歳のこどもは、自分のしようとしている事を、判断できる能力が無いからである。このような、契約などの法律的な行為のさい、自分のしようとしている事の意味を判断する能力のことを'''意志能力'''という。
 
そして、幼児には、意思能力は認められない。重度の酩酊者は、ビールの注文の意思能力は認められても、不動産の売買などについては意思能力を認められない。(※参考文献: 有斐閣『民法総則』加藤雅信、第2版、76ページ)
 
売買や借金や各種の契約などのように、自分の意志によって権利や義務を発生させる行為のことを'''法律行為'''(ほうりつ こうい)という。
 
意思能力の無い人による法律行為は無効となり、また、その取引(とりひき)をなかったことにできる。
 
幼児や酩酊者などのような類型的な場合なら、意思能力のなかった事の証明は簡単であるが、しかし、それ以外の一般的な場合だと、意思能力の無かったことの証明が難しい場合も多い。
 
かといって、15歳くらいの未成年者や、精神障害者が、借金などの不利な契約をしてしまうと、その人の保護者は困る。
 
未成年者は、べつに酩酊のように意識がもうろうとしているわけではないし、幼児のように、自分の行為の意味をまったく理解してないわけではない。かといって、未成年者が、保護者の同意を得ずにおこなった借金を、法律で認めるわけにはいかない。
 
そこで法律では、未成年者が保護者の同意を得ずに行える行為を、制限している。
 
いっぽう、普通の成年の大人のように、契約などの法律行為が1人で行える資格のことを'''行為能力'''という。
 
そこで民法では、未成年を保護するため、未成年の行為能力を制限している。そのため未成年は、親の同意が無ければ、高額な借金ができず、また、高額な売買の契約ができない。
 
また、未成年のように、行為能力が制限された人物のことを'''制限行為能力者'''という。
 
制限行為能力者になりうる対象は、未成年のほか、精神に障害をもっている者、などがある。
 
民法では、制限行為能力者を、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人、の4つに分類している。
 
=== 制限行為能力者 ===
==== 未成年者 ====
'''未成年者'''とは、20歳未満の者である。(民4)
未成年者が法律行為をするには、原則として、'''法定代理人'''の同意が必要である。
 
未成年者の法定代理人とは、親権者(父母) (民818、819)、親権者がいない場合は未成年後見人である。(民839、841)
 
しかし、未成年でも、単に物をもらったり、借金を免除してもらうなどの、未成年が単に利益を得たり義務をまぬがれるだけの行為については、法定代理人の許可は不要である。(民5(1) )
 
また、こづかい としてもらった範囲内の金額では、法定代理人の許可なく、店などで物を買うことが可能である。
 
未成年者でも営業ができるが、法定代理人の同意が必要である。法定代理人があらかじめ許可した営業については、未成年者は単独で営業をできる。(民6)
 
==== 被補助人、被保佐人、成年被後見人 ====
成年であっても、精神障害の重いなどの理由で、財産を管理する能力などが無い者については、保護のため、本人や家族などの請求により、家庭裁判所の審判によって、被保佐人、被補助人、成年被後見人などになりうる。そして、行為能力が制限される。
 
障害の重い順に、成年被後見人、被保佐人、被補助人である。(※ 参考文献: 有斐閣『基本民法 I』大村敦志、第3版、平成23年、172ページ.) そして、障害の重いほど、行為能力が制限される程度が高まる。
 
===== 成年被後見人 =====
精神上の障害などにより、判断能力を欠く人を対象に、保護のために、家庭裁判所が後見開始の審判をして、その判断能力を欠く者は'''成年被後見人'''となり、その判断能力を欠く者は、行為能力が制限される。(民7)
 
そして、行為能力が制限された成年被後見人のかわりに法律行為を行うための'''成年後見人'''が選任される。(民8)
 
成年被後見人の場合は、他の被保佐人、被補助人の場合と比べ、成年被後見人では判断能力の障害が重いため、成年被後見人の行った法律行為については、成年被後見人の同意がなくても、成年被後見人の行った法律行為を取り消しできる。※参考文献: 有斐閣『民法総則』加藤雅信、第2版、84ページ)
 
成年被後見人でも、日用品の購入などは単独で出来る。
しかし、日用品の購入などを除けば、本人または成年被後見人によって、すべて取り消し可能である。
 
また、預金の管理など、重要な財産の管理については、成年後見人が行う。(※ 参考文献: 東京法令出版『経済活動と法』(検定教科書)、長瀬二三男、17ページ)
 
===== 被保佐人 =====
保佐人の同意を得ないで行われた不動産の売買や借金の契約などは、被保佐人本人または保佐人の請求によって取り消される。(民13)
 
 
===== 被補助人 =====
補助人が、預金の管理などをする場合は、被補助人の同意が必要である。(※ 参考文献: 東京法令出版『経済活動と法』(検定教科書)、長瀬二三男、17ページ)
 
=== 制限行為能力者と取引をした相手方の保護 ===
制限行為能力者と取引をした相手方は、1か月以上の期間を定めて、法定代理人・保佐人・補助人に対し、取引を認めるかどうかの確答をせよと'''催告'''(さいこく)することができる。
 
その期間内に確答しない場合、法律上は、制限行為能力者側がその取引を認めたことになる。(民20 (1)(2))
 
 
なお、制限行為能力者が相手方をだます手段を用いて('''詐術'''(さじゅつ) )、自分は行為能力者であると偽った場合、保護されず、その取引を取り消すことができない。(民21)
 
=== 法定後見制度と任意後見制度 ===
==== 法定後見制度 ====
 
==== 任意後見制度 ====
* 胎児の場合