「高等学校政治経済/経済/物価の動き」の版間の差分

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{{コラム|デフレ・スパイラル」の本当の理解には数学が必要|
そもそも本来、経済学的には「デフレ・スパイラル」という言葉じたいには自体が、不況か好況かは関係なく(どちらでもいい)の意味を持たず単に現在のデフレによって未が将来のデフレの程度がを引き出し強化され現象のことが「デフレ・スパイラル」の本来積み重ねという意味であるにすぎない可能性すらある。(※ 参考文献: 『小室直樹の経済原論』、初版は1998年11月)。ただし、『小室直樹経済原論』が出た当時日本が不況だったので、小室はその原因をデフレに求めている
 
そもそも不況好況を数理的、統計的に示す方法は確立されているのか。デフレ時は物価が低いのだから、どうしても生活者の間で不景気感を感じるだろう。
 
実際、小室の書籍で「インフレ・スパイラル」という表現も使われている。経済現象では、しばしば、賃金と物価がともに上昇しつづける現象がよく起こる。小室はそれを、典型的な「インフレ・スパイラル」の例だと述べている。<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P330</ref>。
 
なお、日本だけでなく米国でも、インフレ・スパイラル inflationary spiral と言う用語がスタグフレーションなどの経済議論で使われる[https://twitter.com/paulkrugman/status/1513238054235955211 。2008のノーベル賞経済学者クルーグマンのツイッタ Paul Krugman@paulkrugman のト。引用の経済学者ブラッドフォード・デロング(カリフォルニア大学バークレー校教授)のツイート発言 an ]inflationary spiral の言葉が現れるなお出典のひとつのクルーグマン 日本で2008年のノーベル経済学者。どうもインフレスパイラルという現象無視してあまり考慮せず、デフレスパイラルのみを語る論法は、日本でしか通用しないガラパゴスな経済認識のようだが多くみられる
 
物価が上がると、賃金は上がる方に向かうだろう。賃金が上がると物価は上がるか?その辺は微妙だが、しかし生産コストが高くなるとは見れる。小室の議論では「インフレスパイラル」とは、
:・・・→物価上昇→賃金上昇→物価上昇→賃金上昇→・・・
の進行だと例示されている。
 
そして結局、「デフレスパイラル」とはこの現象の逆なのか?
物価が上がるから賃金が上がるのか、それとも賃金が上がるから物価が上がるのか、よく分からないが、つまり、どっちが先に上がったのかは不明だが、ともかく、
: ・・・ → 物価上昇 → 賃金上昇 → 物価上昇 → 賃金上昇 → ・・・
というような現象がよくあり、こういうのを小室は「インフレ・スパイラル」の一例とした。
 
例えば国民所得に関して、
デフレ・スパイラルは、上述のようなインフレ・スパイラルを逆にしたものにすぎない。
 
:国民所得 Y=消費 C+投資 I
 
という式がある。所得は消費か投資に回るという事だが、
さて、さきほどの
: ・・・ → 物価上昇 → 賃金上昇 → 物価上昇 → 賃金上昇 → ・・・
を見ても、物価の変動と賃金の変動のどちらが先かが不明である。このため、物価と賃金のどちらが原因なのか、どちらが結果なのか、不明である。
 
小室氏の議論として、仮に投資I が一定値なら、消費が上がれば所得も上がるだろう。所得が上がれば消費も上がる。そこでそこから類推して、スパイラル「消費が上がると国民所得も上がり、それによってまた消費も上がる」、こういう状況モデルを考える。
つまり、物価と賃金のように相互作用するものは、「→」のような矢印を使って論理関係を記述するのが困難である。
 
20世紀のケインズ政策、ニューディールなどの公共投資は、この議論のように投資→所得増加→投資→所得増加→を見ていただろうか。いや、むしろ景気の浮揚や所得増強よりは、失業や、経済崩壊などの当面の危機の解決を見ていただろう。
 
サムエルソンのこういう議論もある。
しかし、経済学は、このような現象であっても、普通に各種の数値を計算することができることが知られている。
 
所得Y と消費C 投資I の時間経過における<math>Y_0</math>、<math>C_0</math>、<math>I_0</math>から始まる数列、
数学的には不正確な推論だが、
 
小室は、たとえば経済学の公式で
 
:国民所得 Y = 消費 C + 投資 I
 
という昔からよく使われる公式を例に、下記のように説明している。
 
この公式は単なる一次方程式であるのにかかわらず、この数式を見るだけで、なんと国民所得と消費の関係について、仮に投資Iを一定値だとすれば、
 
数学的には「消費が1上がると、それから国民所得も1上がる」または「国民所得が1上がると消費が1上がる」の片方でしかないが、しかしこれを小室は拡張して、数値的には不正確だが、スパイラル「消費が上がると国民所得も上がり、それによってまた消費も上がる」ことのモデルとした。
 
数学的にはまったく不正確な計算だが、しかし実際の20世紀のケインズ政策的な公共投資がこれと似たような考え方で行われてきたので(ただし消費Cではなく投資Iが駆動源だが)、まったくのデタラメな推論とは言えないし、歴史的にはニューディール政策など多くのケインズ的な政策に実例すらある。(※ どうしても数学的な厳密性にこだわるなら、記号をイコール「=」ではなく別の記号に変えるなどの工夫が必要かもしれない。ただし、小室はそのような工夫はしてない。本ページでも説明の単純化のため、小室と同様の一次方程式の記法で表現する事とする。)
 
 
 
小室の著作では紹介されていないが、経済学では下記の式が昔から知られている。
 
すでに経済学者サムエルソンが、所得Yと消費Cを数列の方程式にして、計算を行っている。
 
サムエルソンなどにより、式
:<math>Y_t=C_t+I_t</math>
:<math>C_t = C + cY_{t-1}</math>
:<math>I_t = I + v (Y_{t-1}-Y_{t-2}) </math>
ただし、
* <math>Y</math>: GDP
* <math>C</math>: <math>C_t</math>はt期の消費。<math>C</math>は基礎消費。
* <math>I</math>: <math>I_t</math>はt期の投資。<math>I</math>は独立投資。
* <math>c</math>: 消費性向
* <math>t</math>: t期(時間)
* <math>v</math>: 加速度係数
 
*<math>Y</math>:GDP
が提唱されている。これは数列の連立方程式である。計算は頑張れば高校レベルでも計算可能だが(数列の式なので)、高校生には時間の節約のため計算の説明は省略する(詳しくはwikipedia『[[w:乗数・加速度モデル]]』を参照)。これをサムエルソンの「乗数・加速度モデル」という。
*<math>C</math>:<math>C_t</math>はt期の消費。<math>C</math>は基礎消費。
*<math>I</math>:<math>I_t</math>はt期の投資。<math>I</math>は独立投資。
*<math>c</math>:消費性向
*<math>t</math>:t期(時間)
*<math>v</math>: 加速度係数
 
つまりこの 3つの連立式で、三つの数列と四つの定数の関係を示している。詳しくは[[w:乗数・加速度モデル]]を参照してほしいが、この連立式から例えば、
小室はおそらくサムエルソンの式を参考にしたのだろう。しかし、スパイラルの説明では、小室はサムエルソンの式を紹介していない。
 
<math>Y_t=(c+v) Y_{t-1}-vY_{t-2}+(C+I)</math>
 
という関係を導くこともできる。
代わりに小室は、 単純な一次方程式
:国民所得 Y = 消費 C + 投資 I
を使い、近似的な記法とみなした推論が必要だが、単純な方程式を使うことで、なんと相互関係も記述できてしまうとした<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P363</ref>。(※ ただし、数値の具体的な算出には役立たない。)
 
小室氏の議論はもうちょっと単純で直感的な言及。所得と消費がお互いを強めてスパイラルとして増加していくイメージを示している。
 
では例えば物価について同じような議論はできないか?
小室によれば、国民所得の上昇を好景気だとすれば、
 
非常に大雑把だが、こういう式を考えてみよう。
「Y=C+I」という式だけで、
 
:・・・国民所得の上昇 → 消費の上昇 → 国民所得の上昇 → 消費の上昇 → ・・・
 
というスパイラルを表せたことになる<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P365</ref>としている。
 
 
ところで、我々は物価を考察しているのであった。小室は特に物価の公式は例示してはいないが、本wikiで説明のために物価の式を非常に大雑把だが近似式であらわせば、
 
:物価=材料費+賃金
とでもなるだろう(だと仮定する。実際はもっと複雑だが)。
 
例えばここで材料費が一定だとすると、賃金が上がると物価も上がる。逆に物価が上がると賃金も上がる。下がる場合も同様、お互いを強めあう。物価→賃金→物価→賃金→…のスパイラルをイメージできるだろう。小室はこのスパイラルについて言及し、「物価・賃金スパイラル」と呼んでいる<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P369</ref>。
すると、これは一次方程式だから、上述の議論と同様に、スパイラルが起きることになる。
小室は物価と賃金のあいだにもスパイラルがあるとして、それを「物価・賃金スパイラル」と呼んでいる<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P369</ref>。
 
さて、日本の1980年代、バブル経済期までは、物価の上昇と(インフレ)、国民所得の上昇がおおむね連動していた。つまり
 
さきほどの議論では、物価がインフレかデフレかの議論はしていないことに注目せよ。(なお、小室の参考文献の該当ページ P.369 ではインフレを例に説明している。)
 
 
さて、日本の1980年代あたりまでのバブル経済では、
 
物価の上昇と(インフレ)、国民所得の上昇がおおむね連動していた。つまり
:・・・国民所得の上昇 → 物価の上昇 → 国民所得の上昇 → 物価の上昇 → ・・・
というスパイラルである
 
なのそこで、つまりデフレが起きれば、インフレの場合の時には逆の結果スパイラルが起きるだろうという予想がのでは?、つまり、1990年代バブル崩壊後の1990年代経済情勢は)自然であろう。すね、
 
すると、つまりバブル崩壊後の経済予想として、
 
:・・・国民所得の下落 → 物価の下落 → 国民所得の下落 → 物価の下落 → ・・・
 
という予想が自然である。これデフレスパイラルの一例であると見ていいだろう
 
 
小室は、参考文献として1992年の評論家・宮崎義一(みやざき よしかず)の『複合不況』をあげているが、しかし宮崎は「複合不況」という表現を用いている。(「デフレ・スパイラル」ではない)
 
なお、小室は経済学はフィードバックを伴うから実験できないと述べているが<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P362</ref>、しかし、それは間違いだろう。なぜなら、たとえば工業高校の電気系学科で習うフィードバック回路など、普通に実験ができるので、この理由は間違いだろう。
 
小室は、参考文献として評論家・宮崎義一(みやざき よしかず)の『複合不況』、を挙げている。しかしここではデフレスパイラルという言葉は使われていない。
小室は述べていないが、量子力学では実験そのものが原理的に誤差を引きおこす現象が知られているが(「不確定性原理」)、しかし量子力学のそれはフィードバックとは呼ばずに普通は「擾乱」(じょうらん)などと言う。ただし量子力学の擾乱は、原子や電子などの微細なもの(物理学におけるミクロ)に対する現象であるから、マクロ経済のようなマクロ解析に量子論の「擾乱」を当てはめるのも間違いだろう。
 
一方小室氏の言及には、経済学はフィードバックを伴うから実験できない、というものがある<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P362</ref>。
どちらにせよ、小室の「フィードバック」を原因とする説明は間違いであろう。
 
前編集者は、電気のフィードバック回路や、量子力学の不確定原理、「擾乱」(じょうらん)、などの議論をもとにこの言説を批判していたが、しかし電気回路や物理学の実験は、一般には我々の外部世界の観測であるのに対し、経済現象は我々が現実に直面している、我々自身を含んでいる現象である。
さて、話題をスパイラルに戻すと、ともかく、デフレ・スパイラルの対義語として「インフレ・スパイラル」という用語も1990年代の過去に小室の書籍などで提唱されており、このインフレ・スパイラルによって、1989年の不動産バブル崩壊までの物価上昇を説明する言説なども1990年代には あった。たとえば、
:: 地価が上がる → 値上がりを期待して不動産屋が買い占める → ますます地価が上がる → ますます不動産屋が土地を買い占める → ……
とか
:: 物価が上がる → 貨幣への期待が下がる → ますます物価が上がる → ますます貨幣への期待が下がる → ……
のような現象を「インフレ・スパイラル」と呼んでいたわけだ。
 
この現象のただなかにいて、無責任な比較実験というのは困難だろう。
なお、小室の書籍では、バブルの物価高については、地価ではなく一般的に「価格」という表現を用いて、
: →価格上昇 → 予想 → 価格上昇 → 予想 → 価格上昇 →・・・
と表現している<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P384</ref>。
 
常に現実の状況を見て、次のインプット、最善手を目指して、対応を考えるのが現実の経済現象になるのではないだろうか。
デフレ・スパイラルの本来の意味は、上記の土地と不動産屋の例の逆のような現象が起きるだろうという予想であり、つまり、
::物価が下がる → 投資家になんらかの行動を引き起す → 投資家のその行動の結果、ますます物価が下がる → 投資家にその行動がますます加速する → ますます物価が下がる → ……
というような予想が、本来の「デフレ・スパイラル」の意味であった。
 
さて、そこでスパイラルの話に戻ろう。つまりデフレスパイラルがあるならインフレスパイラルもある。1989年の不動産バブル崩壊までの物価上昇をインフレスパイラルとして説明する言説も1990年代にはあった。
 
たとえば、
この本来の「インフレ・スパイラル」や「デフレ・スパイラル」の意味のほうが、経済学的には、不況かどうかの主観的な判断もなく客観的であり、そのため数式にもしやすく、本来の意味のほうが数理的にも経済学的にも望ましいかもしれない。
::地価が上がる→値上がりを期待して不動産屋が買い占める→ますます地価が上がる→ますます不動産屋が土地を買い占める→……
とか、
::物価が上がる→貨幣への期待が下がる→ますます物価が上がる →ますます貨幣への期待が下がる→……
、という事になるだろうか。
 
:…→価格上昇→予想→価格上昇→予想→価格上昇→・・・
となるか<ref>小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P384</ref>。
 
デフレスパイラルとしては、
しかし、デフレ・スパイラルの用語が流行した1990年代、日本で不況が深刻化したので、当時の経済評論で、不況と本来の意味の「デフレ・スパイラル」を関連させる言説が流行していくうちに、いつしか世間では、「デフレ・スパイラル」の意味が変わり、不況とデフレが同時進行することに意味が変わっていった。
 
::物価が下がる→投資家になんらかの行動を引き起す→投資家のその行動の結果、ますます物価が下がる→投資家のその行動がますます加速する→ますます物価が下がる→……
なので、検定教科書などにある「デフレ・スパイラル」の意味は、経済数学などでは、あまり意味も無い。
 
などと言及できるだろうか。
サムエルソンの「乗数・加速度モデル」と、小室の著作にかかれた「インフレ・スパイラル」と「デフレ・スパイラル」の関係を知っていれば、つまりデフレ・スパイラル論は、インフレなどの研究に活用された「乗数・加速度モデル」の手法および成果を近似的に用いてデフレを研究・制御・記述などをしようという手法であろう。
 
つまり好況不況は割と主観的で曖昧な判断なので、それ抜きに単に物価が上がり続ける、あるいは下がり続ける悪循環をスパイラルと呼びたい訳だ。
 
しかし実際デフレスパイラルの用語が流行した1990年代は、日本では深刻な不況と見られていたし、学校教科書も多く、デフレと不況が連鎖的に悪化していくのがデフレスパイラルだと見ていただろう。
日本では1990年代には経済学者の小室直樹などがデフレ・スパイラルとインフレ・スパイラルを本来の意味で使っていたが、小室の痛烈なマスコミ批判によって小室はテレビなどでは取り上げられず不遇であり、テレビの経済番組やその手下たちの経済評論では、表面的に「デフレ・スパイラル」の経済学的な原理を知らない評論家たちによって流行語として取り上げられるようになっていたのである。また、世間の大衆は、サムエルソンの公式のような数学の連立の数列方程式などを理解しないので、本来の意味では理解できない。
 
つまり前編集者の意図としては、デフレの深化と不況の深化は別物としてとらえたいが、実際巷の現状では、デフレイコール不況、そして何らかの改善で経済を良くしたい、やはりインフレが必要、という流れになっているだろう。
世間の大衆は、1990年代当時の経済学者の書いた本など読まないので「デフレ・スパイラル」の本来の意味など確認しようともしないので、意味が修正されずに、現在まで続いている。
 
経済を数理で扱い、現状を良くするための提言はあらゆるところでなされているが、実際にその根拠の数理理論、分析が現実に大きな意味を持つか、それはそれこそインプットしてみなければわからない、歴史の中で我々はフィードバックを繰り返していくしかないだろう。
日本のセンター試験や大学入試などに出てくるような経済史の暗記などは、本来の経済学とは全くの別物である。本来の経済学は、微分積分などを使って、経済を数式で表すことにより、政策などのために、投資額や予算などの具体的な金額を算出するための理論体系が経済学である。
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