「解析学基礎/極限」の版間の差分

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→‎極限の形式的な定義: 「イプシロンデルタ論法」の名称の紹介を追加した。
紹介された用語に、英訳を併記。「極限(limit)」など。
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==はじめに==
[[解析学基礎_関数|関数]]の項目で、関数についての復習をしました。ここでは、解析学の根本となる'''極限'''(limit)の概念を学びます。
 
関数 f(x) = x<sup>2</sup>を考えます。この関数は、f(2)=4 となります。この関数を少しいじって次のような関数を考えてみます。
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ならば
:<math>\left| f(x) - L \right| < \varepsilon</math>
となるとき、''L''は、''x''を''c''に近付けた時の ''f(x)''の極限(limit)といいます。
また、このように、不等式と任意の数&epsilon;や、ある数&delta;を用いて、上述の式で極限を定義する方法および、この定義式を基に解析学などでの他の定理を証明する論法をイプシロン・デルタ論法(&epsilon;-&delta; logic)と言います。一般的には、「&epsilon;-&delta;論法」と略記します。
 
直感的な定義と、形式的な定義の間の違いを理解することはとても重要です。直感的な定義では''f(x)''は''L''に近いと表現した部分が、形式的な定義では''f(x)''と''L''の差は「任意の正の数&epsilon;よりも小さい」となっています。
 
:「任意の」(arbitrary)という言葉は、「思いついたものなら何でも」という意味です。任意の正の数&epsilon;は、&epsilon;=100でもいいですし、&epsilon;=1でもいいですし、&epsilon;=0.000001でもいいです。どんな正の数を持ってきても、定義の条件を満たす場合に、''L''を極限と呼ぶのです。
:「任意の」は「全ての」と同じ意味になるので、「全ての」と表現することも多いです。
 
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:<math>\lim_{x \to c} f(x) =L \Leftrightarrow (\forall \varepsilon >0 \ \exists \delta >0 \ s.t. \ 0 < \left| x - c \right| < \delta \Rightarrow \left| f(x) - L \right| < \varepsilon)</math>
 
ここで、<math>\forall</math>は全称記号(universal quantifier)といい、「任意の~に対して」を意味する記号です。<math>\exists</math>は存在記号(existential quantifier)といい、「ある~が存在する」を意味する記号です。「s.t.」は英語の「such that」の略で、しばしば存在記号と組み合わせて用います。
 
===例===
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そこで、瞬間での速さというものを求めるということをします。速さを求めるには二点必要です。二つの時刻での位置から速さを求めます。グラフで言うと、グラフ上の二点を取りその二点を結ぶ直線の傾きを求めるということになります。これは、その二点間での平均の速さを求めるということになります。
 
ここで'''微分'''(derivation)の基本的な考え方に行き着きます。
この二点間を限りなく近付けた時に、平均の速さがどうなるかを考えます。つまり、2つの点をとり平均の速さを求め、その二点間から2つの点を選び平均の速さを求め、さらにその二点間から2つの点を選び、平均の速さを求め…ということを繰り返して、二点間の距離を限りなく近付けた時に、平均の速さ(直線の傾き)の極限がどうなるかということを見ていきます。
 
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この項目では[[解析学基礎_関数|関数]]の項目で直感的に述べた連続性の形式的な定義をします。とても簡単な定義です。
 
''f''(''x'')が ''c''で連続(continuous)であるとは、
 
<table WIDTH="75%"><tr><td style="background-color: #FFFFFF; border: solid 1px #D6D6FF; padding: 1em;" valign=top>
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:<math>f(x) = \sqrt{x^2 - 16}</math>
で、''f''&nbsp;(''x'') は -4&nbsp;&le;&nbsp;''x''&nbsp;&le;&nbsp;4 では定義されていないとき、この区間に含まれる点には近付きようがありません。区間の端点 x&nbsp;=&nbsp; &plusmn;4 でも極限が存在しないことに注意してください。極限が存在するためには、'''両側'''からその点に近付く必要があります。グラフ上で孤立した点などでは極限が存在しないことに注意してください。
:但し、片側だけから近付く場合、例えば、左側からだけ近付いたときの「極限」も考えられます。これを'''左極限'''('''左側極限'''、left-hand limit)、右側からだけ近付いたときの「極限」を'''右極限'''('''右側極限'''、right-hand limit)ということがあります。その場合、ここで定義した「極限」は、'''両極限'''('''両側極限''')と言われます。右極限と左極限がともに存在して等しい時、その値が両極限ということになります。
 
 
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であれば、 g(x) の極限も存在し
:<math> \lim_{x \rightarrow c} g(x) = \alpha </math>
となります。これを'''はさみうちの原理'''(Squeeze theorem)といいます。これはいろいろな場面で使われます。
 
===はさみうちの原理の使用例===
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==不連続な関数==
'''不連続'''(discontinuous)とは、関数がある点で連続で無いことをいいます。例えば、
 
:<math>f(x) = \frac {x^2-9} {x-3}</math>
は、x = 3に'''除去可能'''な不連続点(removable discontinuity)を持ちます。
 
この「除去可能」(removable)というのは、少し手を加えるだけで不連続なところを連続にした関数を得られるという意味です。特にこの関数の場合は、x&ne;3の時は、約分することで f(x) = x+3 になります。
もし、f(3)=6 であったならば、連続な関数になります。即ち、新しい関数