「高等学校化学I/物質と原子」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
「電子配置」の用語を追加。閉殻の説明で、元素名ヘリウムなどを具体的に記述。
同素体の節で画像添付で黒鉛とダイヤの画像を追加。価電子の画像を貼付。周期表の画像を貼付。放射性同位体などを加筆。周期表のアルカリ金属や遷移金属などを加筆。
79 行
|}
 
[[ファイル:GraphiteUSGOV.jpg|left|200px|thumb|黒鉛]]
[[ファイル:DiamanteEZ.jpg|thumb|center|150px|ダイヤモンド]]
 
{{clear}}
炭素の同位体には、上表で上述した以外にも、フラーレンやカーボンナノチューブなどが知られている。フラーレンなどについての詳細は、高度に専門的になるので、ここでは詳細は述べない。
 
[[ファイル:Fullerene-C60.png|thumb|left|C<sub>60</sub> の球棒モデル]]
[[File:Types of Carbon Nanotubes.png|300px|thumb|center|カーボンナノチューブの幾何学構造図。アームチェアチューブ、ジグザグチューブ、カイラルチューブの3種類に分けられる。]]
 
{{clear}}
=== 純物質と混合物 ===
; 純物質 : 物質が単体か化合物であるとき、その物質を'''純物質'''と呼ぶ。
148 ⟶ 158行目:
 
=== 電子殻と価電子 ===
[[Image:Electron shell 008 Oxygen (diatomic nonmetal) - no label.svg| thumb |200px| 酸素原子Oの電子は、K殻に2個の電子。L殻に6個の価電子を持つ。]]
[[File:Electron shell 001 Hydrogen (diatomic nonmetal) - no label.svg|thumb|200px| 水素原子Hの電子は、K殻に1個の価電子を持つ。]]
 
 
原子の構造のうち、電子が並んでいる原子核の周りの部分について、より詳しく見ていこう。
155 ⟶ 168行目:
また、いちばん外側の電子殻にある電子を'''最外殻電子'''と呼ぶ。最外殻電子は原子の性質に大きな影響を与える。ある原子とある原子との接点が、実際には電子殻であるため、原子の結合の仕方などはこの最外殻電子の個数が重要になってくる。原子の性質を決める最外殻電子を特別に'''価電子'''と呼ぶ。
最外殻にそれ以上電子が入ることのできない状態を'''閉殻'''という。閉殻になっている原子の価電子の個数は'''0'''であると約束する。
 
[[File:Electron shell 002 Helium - no label.svg|thumb|left|200px| ヘリウム原子Heの電子は、K殻に2個の電子を持つ。ヘリウムは閉殻構造である。閉殻なのでヘリウムの価電子は0と数える。]]
 
各々の原子の電子の、電子殻への配列の仕方を'''電子配置'''という。K殻に2個の電子が全て収められた場合の電子配置は、希ガスであるヘリウムHeの電子配置と同じである。L殻まで電子が全て収められ、L殻に8個の電子とK殻に2個の電子の合計10個の電子が全て収められた場合の電子配置は、希ガスであるネオンNeの電子配置と同じである。
同様に、M殻の終わりまで全て電子が収められた状態は、希ガスであるアルゴンArの電子配置と同じである。
 
 
[[File:Electron shell 011 Sodium.svg |thumb|left|200px| ナトリウム原子Naの電子は、K殻に2個の電子。L殻に8個の電子。M殻に1個の価電子を持つ。]]
[[File:Electron shell 017 Chlorine.svg|thumb|center|200px| 塩素原子Clの電子は、K殻に2個の電子。L殻に8個の電子。M殻に7個の価電子を持つ。]]
 
 
{{clear}}
----
=== 電荷 ===
 
172 ⟶ 195行目:
: +e &times; 3 = +3e
と表される。さらに、この原子核の周りに電子が3つ回っているならば、原子全体の電荷は、
: (+3e) + (-3e) = 0
となる。これは、原子全体では電荷を持っていないということである。このことがらを利用すれば、原子全体の電荷や、原子の名称などから、それにいくつの陽子や電子が含まれているかを計算することができる。
 
230 ⟶ 253行目:
より、8個の陽子が含まれていることが分かる。8個の陽子が含まれている原子は、酸素(O)である。
 
;同位体
ある二つの原子について、原子番号が同じでも質量数が異なることがある。言い換えると、原子番号は陽子の数であるため、陽子の数が同じ二つの原子であっても、その原子核に含まれる中性子の数が違うことがある、ということであり、このような原子を互いに'''同位体'''<small>(アイソトープ)</small>と呼ぶ。炭素の代表的な同位体には、<sup>12</sup>C と<sup>13</sup>C がある。同位体であっても、化学的な性質は変わらない。なぜなら、原子核に含まれる陽子の数が同じだからである。
このような、同じ元素でも質量数のことなる原子を互いに'''同位体'''と呼ぶ。あるいは'''アイソトープ'''(isotope)と呼ぶ。
なお、「同位体」という名前が「同素体」と似ているが、異なる概念なので混同しないように読者は注意のこと。
 
炭素Cの代表的な同位体には、<sup>12</sup>C と<sup>13</sup>C がある。
 
炭素Cの同位体には<sup>14</sup>Cも存在する場合もあるが、この<sup>14</sup>Cは不安定であり、すぐに崩壊して質量数が変わってしまう。原子核が壊れるとき、一般に放射線をだすので、不安定な同位体が壊れたときも放射線を出す。<sup>14</sup>Cも崩壊するときに放射線を出す。
<sup>14</sup>Cのような、すぐに崩壊して放射線を出す同位体を'''放射性同位体'''(ラジオアイソトープ)という。
これに対して安定して存在できる同位体を'''安定同位体'''という。
 
同位体であっても、安定な同位体の化学的な性質は、ほとんど等しい。なぜなら、原子核に含まれる陽子の数が同じだからである。
 
他の多くの元素にも同位体は存在する。
たとえば水素Hには、自然界には<sup>1</sup>H と<sup>2</sup>Hがある。<sup>1</sup>Hの存在比率は、およそ99.98%である。<sup>2</sup>Hの存在比率は、およそ0.02%である。質量数2の水素<sup>2</sup>Hのことを重水素(じゅうすい)あるいはジュウテリウムという。
原子力発電所の原子炉内では、質量数3の水素<sup>3</sup>Hも存在する。この水素<sup>3</sup>Hを'''トリチウム'''という。<sup>3</sup>Hは放射性同位体である。
 
なお、すべての元素に、自然界で同位体が存在するわけではない。
Be,F,Na,Al,P,Sc,Mnなどには、天然には同位体は存在しない。
 
=== 周期表と周期律 ===
 
[[Image:Periodic table (polyatomic).svg|center|700px|周期表]]
 
元素を原子番号の順に並べると、性質のよく似た元素が周期的に現れることがある(例:1価の陽イオン<small>(→[[高等学校化学Ⅱ/化学結合]])</small>になりやすい物質……<sub>3</sub>Li、<sub>11</sub>Na、<sub>19</sub>K、など。ここまでは8個間隔で現れている)。このことを元素の'''周期律'''という。
 
元素を原子番号の順に並べて、かつ周期律に併せて配列した表を'''[[元素記号|周期表]]'''という。周期表の縦の列を'''族'''といい、同族内では性質のよく似た元素が並ぶ。周期表の横の列を'''周期'''と呼び、周期の番号は電子殻の数と一致する。
 
「族」は、1族から18族までの、合計18個がある。「周期」は、1族から7族までが、現在(2013年に本文を執筆。)では確認されている。
尚、原子番号、核子の個数をa,bとすればその原子を<math>^b_a</math>Aの様に書く事がある。
具体例をいくつか挙げると、族については、水素HとリチウムLiとナトリウムNaとカリウムKは、ともに1族の元素である。周期に関しては、水素Hは第一周期であり、リチウムLiは第二周期であり、Naは第三周期である。
他の族の元素でも、例を挙げる。酸素Oは、16族で第二周期の元素である。炭素Cは14族で第2周期である。塩素Clは17族元素で第3周期である。
 
族が同じ元素どうしを'''同族元素'''という。たとえば、HとLiとNaとKとルビジウムRbとセシウムCsとフランシウムFrとは、お互いに同族元素である。
他の族でも例を挙げれば、14族の炭素Cと,シリコンSi,ゲルマニウムGeと,すずSnと,鉛Pbとは、お互いに同族元素である。
 
;アルカリ金属
1族の同族元素のうち、水素Hを除いた残りの元素の、LiとNaとKとルビジウムRbとセシウムCsとフランシウムFrを、'''アルカリ金属'''という。Hはアルカリ金属には含めない。
;アルカリ土類金属
2族元素のうち、ベリリウムBeとマグネシウムMgを除いた残りの元素の、カルシウムCa,ストロンチウムSr,バリウムBa,ラジウムRaを'''アルカリ土類金属'''という。ベリリウムBeとマグネシウムMgはアルカリ土類金属には含めない。
;ハロゲン元素
17族の元素のフッ素F,塩素Cl,臭素Br,ヨウ素I,アスタチンAtを'''ハロゲン元素'''という。
;希ガス元素
18族のヘリウムHe,ネオンNe,アルゴンAr,クリプトンKr,キセノンXe,ラドンRnを'''希ガス元素'''という。
 
;遷移金属
3族から11族の元素を'''遷移金属'''(せんいきんぞく)という。
遷移金属は、価電子の数が1個または2個であることが多く、族と価電子数が一致しない。
 
;典型元素
遷移金属以外の元素である元素はどうだろうか。1族と2族と12族~18族の元素を典型元素という。典型元素では、族の番号の1の位の数が、最外殻電子の数と一致する。
 
 
 
1族の元素と2族の元素は陽イオンになりやすい。
17族の元素は陰イオンになりやすい。
18族の元素は化合物をつくりづらい。天然には単分子で存在するのが一般である。
 
 
なお、原子番号、核子の個数をa,bとすればその原子を<math>^b_a</math>Aの様に書く事がある。
 
== 分子とイオン ==
263 ⟶ 337行目:
一般に分子は原子が複数個集まってできていることが多いが、ただ一つの原子だけで独立して分子となるものもいる。希ガスと呼ばれる種類の原子は、他の原子と結びつかず、独立で分子を構成する。
; 単原子分子 : 一個の原子から構成されている分子。具体的にはヘリウムHeやネオンNeなど。
; 多原子分子 : 二個以上の原子から構成されている分子。たとえば水H<sub>2</sub>Oや酸素O<sub>2</sub>など
ある分子が、どのように原子が結びついて出来ているのかということを表記するとき、一般的には分子式を用いる。