「高等学校国語総合/伊勢物語」の版間の差分

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口語訳を記述中。
「東下り」の本文
58 行
 
*語句
:芥川 - 詳細は不明。諸説あり。 1:大阪府高槻(たかつき)を流れる川。 2:ごみを捨てるための川。 3:架空の川。
:鬼 - もとは死者の霊という意味だが、怪物などの意味もある。
:やなぐい - 矢を入れて背負って持ち運ぶ道具。
:二条の后 - 藤原長良(ふじわらのながら)の娘、高子(たかいこ)。
 
:堀川の大臣 - 藤原基経(もとつね)。長良の三男。太政大臣(だいじょうだいじん)。
:太朗国経の大納言 - 藤原国経(くにつね)。長良の長男。「太朗」は長男の意味。
 
 
80 行
(第六段)
 
*語句(重要)
:仕う(つこう)まつる - お仕えする。「仕う」の謙譲語。「仕へまつる」のウ音便。
:下臈(げろう) - 藤原国経(くにつね)。長良の長男。「太朗」は長男の意味。
:参り - 参上する。謙譲語。「行く」「来る」の謙譲語。
:(参り)給ふ - 参上なさる。「給ふ」は補助動詞で尊敬を表す。尊敬されているのは堀川の大臣(おとど)、および、太郎国経である。伊勢物語の作者が尊敬している。
*語句
:二条の后 - 藤原長良(ふじわらのながら)の娘、高子(たかいこ)。
:堀川の大臣 - 藤原基経(もとつね)。長良の三男。太政大臣(だいじょうだいじん)。京の堀川に邸宅があった
:太朗国経の大納言 - 藤原国経(くにつね)。長良の長男。「太朗」は長男の意味。
 
=== 品詞分解 ===
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=== 一 ===
*本文/現代語訳
 
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昔、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、京にはあらじ、東の方に住むべき国求めにとて行きけり。もとより友とする人、一人、二人して行きけり。道知れる人もなくて惑ひ行きけり。三河国八橋といふ所に至りぬ。そこを八橋と言ひけるは、水ゆく川の蜘蛛手なれば、橋を八つ渡せるによりてなむ八橋といひける。
 
その沢のほとりの木の陰に下りゐて、乾飯(かれいい)食ひけり。その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。
それを見て ある人のいはく、「かきつばたといふ五文字(いつもじ)を句の上(かみ)に据ゑて 旅の心をよめ。」
と 言ひければ、よめる。
:唐衣(からころも) きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
とよめりければ、みな人、乾飯の上に涙落としてほとびにけり。
 
行き行きて、駿河の国にいたりぬ。
 
宇津(うつ)の山にいたりて、わが入らむとする道はいと暗きに、蔦(つた)・楓(かえで)は茂り、もの心細く すずろなる目を見ることと思ふに修行者(すぎょうざ)会ひたり。
 
「かかる道はいかでかいまする。」と言ふを見れば、見し人なりけり。
 
京に、その人の御(おおん)もとにとて、文書きてつく。
 
:駿河なる宇津の山辺の うつつにも 夢にも人に あはぬなりけり
 
富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白う降れり。
 
:時知らぬ 山は富士の嶺(ね) いつとてか 鹿の子まだらに 雪のふるらむ
 
その山は、ここにたとへば、比叡(ひえ)の山を二十(はたち)ばかり重ね上げたらむほどして、なりは塩尻のやうになむありける。
 
なほ行き行きて、武蔵の国と下総(しもつふさ)の国との中に、いと大きなる川あり。それをしみだ川といふ。その川のほとりに群れゐて 思ひやれば、限りなく遠くも来にけるかなとわび合へるに、渡し守、「はや舟に乗れ。日も暮れぬ。」と言ふに、乗りて渡らむとするに、
みな人もの侘しくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さる折りしも、白き鳥の、嘴(はし)と脚と赤き、鴫(しぎ)の大きさなる、水の上に遊びつつ魚(いお)を喰ふ。京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡守に問ひければ、「これなむ都鳥。」と言ふを聞きて、
 
:名にし負はば いざこととはなむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと
 
とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。
 
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|}
 
(第九段)
 
*語句
 
=== 品詞分解 ===