「高等学校化学I/酸化還元反応」の版間の差分

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おもな酸化剤の一覧表、おもな還元剤の一覧表
例題や反応例などを追加
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:(+7)+(ー2)×4 = ー1
よって酸化数の総和は ー1 である。
 
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* 例
たとえば安定した一酸化炭素 CO 中での炭素 C の酸化数は (ー2) だが、安定した二酸化炭素 CO<sub>2</sub> 中のCの酸化数は (ー4) である。このように、たとえ同じ元素でも、化合物がイオン化してない場合でも化合物の種類によって、その元素の酸化数が変わる。
 
なので、あまり無闇に酸化数を覚える必要はない。ただし、問題練習などを通して自然に覚えられる場合は、覚えてしまったほうが早い。
 
また、
:2CO + O<sub>2</sub> → 2CO<sub>2</sub>
について、Cの酸化数の変化(+2から+4に変化)から、Cは酸化されたことが分かる。
 
 
 
* 例題1
: 過マンガン酸カリウム KMnO<sub>4</sub> 中の Mn の酸化数を求めよ。
 
解法<br />
まず、 K<sub>+</sub> と MnO<sub>4</sub><sup>-</sup> の化合物だと見なす。
すると、あとは MnO<sub>4</sub><sup>-</sup> 中のマンガンの酸化数を求めれば良く、
そのための方程式を立てれば、仮に代数 x を求めるMnの酸化数だとして、
:x + (ー2)×4 = ー1
を解けばよい。
 
あるいは、最初から、 Kの酸化数=(+1) 、および Oの酸化数=(ー2) 、およびKMnO<sub>4</sub>全体の酸化数=0 、を仮定して、次のような式で解いてもよい。
:(+1)+ x +(ー2)×4 = 0
 
 
どちらの解法の式にせよ、解けば、
:x = 7
よってMnの酸化数は (+7) である。
 
 
MnやCuやCrやFeなどの酸化数の問題は、このようにして、解く。Mnなどの酸化数の数値は、覚える必要はない。
 
いっぽう、Kの酸化数は、覚えなければならない。また、Oの酸化数は、覚えなければならない。
 
== 酸化剤と還元剤 ==
=== 酸化剤と還元剤の働き ===
酸化還元反応で、相手の物質から電子を奪って酸化をする物質を'''酸化剤'''(さんかざい、oxidizing agent)という。酸化還元反応で、相手の物質に電子を与えて還元をする物質を'''還元剤'''(かんげんざい、reducing agent)という。
 
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還元剤は、酸化還元反応において、自身は酸化される。
 
=== 過マンガン酸カリウム ===
希硫酸で酸性にした水溶液の中で、過マンガン酸カリウムは、強い酸化作用を示す。
:MnO<sub>4</sub><sup>-</sup> + 8H<sup>+</sup> +5e<sup>-</sup> → MnO<sub>2</sub> + 4 OH<sup>-</sup> (酸性)
 
[[ファイル:KMnO4 in H2O.jpg|thumb|150px|中性溶液での KMnO<sub>4</sub> 水溶液.]]
酸性でない水溶液では、過マンガン酸カリウムの水溶液の色は、赤紫色である。酸性の水溶液では、過マンガン酸カリウム水溶液の色は、ほぼ無色のうすい淡桃色である。教科書によっては、無色と紹介している本もあるので、「酸性水溶液での過マンガン酸カリウムは無色」と覚えても良い。
 
 
=== 過酸化水素 ===
過酸化水素は、反応する相手によって、酸化作用を示す場合もあれば、還元作用を示す場合もある。一般的には、過酸化水素は、酸性水溶液中で、酸化作用を示す場合のほうが多い。
 
:(酸性) H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub> + 2e<sup>-</sup> → 2H<sub>2</sub>O</sub>
 
上記の反応式をみればわかるように、酸化に水素イオンが必要なので、酸性溶液である必要がある。
 
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* ヨウ化カリウム KI と過酸化水素が反応する場合
まず、ヨウ化カリウム KI は、代表的な還元剤の一つである。いっぽう、過酸化水素は、代表的な酸化剤の一つである。
 
代表的な酸化剤と代表的な還元剤とが硫酸水溶液で反応しあう場合、当然、代表的な酸化剤のほうが酸化するのが、一般的である。
 
ヨウ化カリウム KI と過酸化水素 H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> の反応でも、原則どおりにH<sub>2</sub>O<sub>2</sub> は酸化作用を示す。
 
ヨウ化カリウムの希硫酸水溶液に過酸化水素水を加えると、反応の結果、ヨウ素 I<sub>2</sub> を生じて、水溶液は褐色になる。
 
この反応では、ヨウ化物イオン I<sup>-</sup> は、H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> に電子をうばわれている。
 
では、反応全体の反応式を見て行こう。
:2KI + H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> + H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → I<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O<sub> + K<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>
 
なお、この式を導くには、最終的な生成物を覚える必要はあるが、
:H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub> + 2e<sup>-</sup> → 2H<sub>2</sub>O</sub>
:2I<sup>-</sup> → I<sub>2</sub> + 2e<sup>-</sup>
を連立して、左右両辺の電子e<sup>-</sup>の数を打ち消せばよい。
 
 
 
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強い酸化剤が過酸化水素の反応する相手の場合に、過酸化水素による酸化作用が進まなかったり、むしろ過酸化水素が還元作用を示す場合もある。
 
このように、強い酸化剤が反応相手の場合には、弱いほうの酸化剤が作用できない場合もある。
たとえば、硫酸で酸性にした水溶液中で過マンガン酸カリウムと過酸化水素が反応する場合、過酸化水素は還元剤として働く。
 
:5H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> + 3H<sub>2</sub>SO<sub>4</sub> → 5O<sub>2</sub> + 2MnSO<sub>4</sub> + K2SO<sub>4</sub> + 8H<sub>2</sub>O
 
なお、この式を導くには、最終的な生成物を覚える必要はあるが、
:H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub> + 2e<sup>-</sup> → 2H<sub>2</sub>O</sub>
:MnO<sub>4</sub><sup>-</sup> + 8H<sup>+</sup> +5e<sup>-</sup> → MnO<sub>2</sub> + 4 OH<sup>-</sup>
を連立して、左右両辺の電子e<sup>-</sup>の数を打ち消せばよい。
 
 
=== おもな酸化剤と還元剤 ===
{| class="wikitable"
|+ おもな酸化剤
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| rowspan="9" | 酸<br />化<br />剤 || オゾン O<sub>3</sub> || O<sub>3</sub> + 2H<sub>2</sub>O + 4e<sup>-</sup> → 4OH<sup>-</sup>
|-
| 過酸化水素 H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> || (酸性) H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> + 2H<sub>2</sub>O + 2e<sup>-</sup> → 2H<sub>2</sub>O</sub> <br /> (中性・塩基性) H<sub>2</sub>O<sub>2</sub> + 2e<sup>-</sup> → 2OH<sup>-</sup>
|-
| 過マンガン酸カリウム KMnO<sub>4</sub><br /> || MnO<sub>4</sub><sup>-</sup> + 8H<sup>+</sup> +5e<sup>-</sup> → MnO<sub>2</sub> + 4 OH<sup>-</sup> (酸性)<br /> MnO<sub>4</sub><sup>-</sup> + 2H<sub>2</sub>O +3e<sup>-</sup> → 2MnO<sub>2</sub> + 4OH<sup>-</sup> (塩基性)
181 ⟶ 268行目:
|-
|}
 
 
 
== 酸化還元滴定 ==