特許法第160条

出願審査への差し戻しについて規定について規定する。本条は意匠法、商標法において1, 2項のみ準用されている。ただし、3項に相当する規定は両法で規定されている(意50条2項ただし書、商55条の2第2項ただし書)。なお、平成5年改正前は実用新案法で全項が、平成6年改正(平成8年1月1日版)前は商標法で3項も準用されていた。

条文 編集

第160条 拒絶査定不服審判において査定を取り消すときは、さらに審査に付すべき旨の審決をすることができる。

2 前項の審決があつた場合における判断は、その事件について審査官を拘束する。

3 第1項の審決をするときは、前条第3項の規定は、適用しない。

解説 編集

拒絶査定不服審判において拒絶査定(49条67条の3第1項)を取り消す場合には、通常特許あるいは登録をすべき旨の審決(準51条)あるいは前置審査(162条)における特許査定(164条1項。ただし、前置審査は本法制定時にはなく、特許出願の場合のみ適用。)がなされる。 ただ、事件によっては、審判の請求が正当であり、拒絶査定を維持することができない、審査の手続に重大な欠陥があり、そのままでは審判の基礎に用いることができない、査定の成立過程そのものに法令違反があり、査定の存在が疑問である[1]ことから特許あるいは登録を認める旨の審決をすることが妥当ではないこともありうる。このときは、拒絶査定を取り消しさらに審査に付すべき旨の審決(差し戻し審決)をすることになる(本条1項)。なお、この規定は注意的規定とされる[2]。また、特許査定あるいは登録査定をすることはできないから、159条3項の規定は適用できない(本条3項)。


さらに、このとき、差し戻し後の出願審査において審査官がかかる査定を取り消した判断を無視したのでは、上級審としての審判の意義がないがしろにされるので、本条2項はこれを防止するために規定された。したがって、審査官は取り消された査定の理由によって出願を拒絶してはならない。もっとも、これと異なる理由によって出願を拒絶することまでは禁止されていないので、特許査定あるいは登録査定をしなければならないというものではない。

改正履歴 編集

  • 平成15年法律第47号 - 審判名称付与に伴う修正(1項)

脚注 編集

  1. ^ 特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』〔第19版〕発明推進協会、2014、p. 445
  2. ^ 特許庁編『工業所有権法(産業財産権法)逐条解説』〔第19版〕発明推進協会、2014、pp. 445-446

関連条文 編集

前条:
159条
特許法
第6章 審判
次条:
161条