高等学校世界史B/19世紀の欧米の文化と社会
絵画
編集19世紀の絵画において「写実主義」や「印象派」という分類があり、検定教科書にも紹介されている通説だが、しかし、この用語は不正確である。
絵画の「印象派」(impressionism [1])とされる画家ルノワールは、けっして一つの作風でいくつもの作品すべてを描いたのではない。写実的に描いた作品もあれば、そうでなく印象重視で非写実的に描いた作品もある。
また、彼は、絵画中の光によって色あいの変化を表現を重視したが、光によって色が変化するのは物理的な事実であり、けっして印象ではない。
(※ 「ルノワールの画風が写実的でない」という通説は間違ってます。光によって色が変化するのは、物理的な事実です。要するに、馬鹿な美術評論家のなかには、画力の低い人達がいて、そういう人たちが美術史をつくってきた。)
(印象をそのまま描こうとした画家は、ゴッホです。ゴッホは、日本の浮世絵などに影響を受け、写楽などの作品と似た構図の作品すら残すほどであった。)
- ※ ルノワールは、それまでの西洋美術において「写実的である」とされている既存の画風について、作品をつくる事で「ちがう」と反対意見を言ってるだけであろう。
ミレーの画風は「写実」「主義に分類される。しかし、ミレーの作品は、『種まく人』は政治的メッセージがあると解釈されたり、このように、じっさいの美術では写実主義と印象主義の境界はあいまいである。
ルノワールより少し前の時代に流行したミレーは、農民などを題材にした絵を描き、(現代の美術史では)「写実主義」(リアリズム、realism [6])に分類される。たしかにミレーの画風はルノワールよりも細部まで描きこまれてる場合が多いが、だが、レンブラントなどの前時代の画家と比べたら、べつにミレーの画風が、特段、レンブラントなどの画風と比較して写真のようなわけではない。(※ レンブラントの作品については『高等学校世界史B/17〜18世紀のヨーロッパの文化と社会』を参照せよ。)
「写実」という訳語から、ついつい写真のような連想を、われわれ日本人はしてしまいがちである。だが、写実と和訳される前の英語、もともとの英語は realism (リアリズム)であり、直訳すれば 現実主義 という意味である。
じっさい、美術史の入門書を確認しても、美術の美術の世界でいう『写実』とは、「目の前の現実や出来事」といった意味であり[7]、そのため、(貴族や神々といった遠い世界の出来事だけでなく、)労働者や農民の姿を作品に描くことも含んでいます[8][9]。
では、なにと比べて「現実」なのだろうか。
- ※ 「種まく人」も聖書にもとづく宗教画という説もある[11]。だが、一人の農夫による種まきは毎年の日常的にありふれた題材なので、宗教画かどうかの判別がつきづらい。
じつは、フランス革命以前の絵画では、貴族が画家に絵画作成の注文を出すなどして、貴族などが肖像で描かれることが多かった。貴族以外のものが描かれる場合でも、教会などの注文で、キリストなどの宗教的聖人や、天使などが描かれる場合が多かった。
貴族にしろ、教会にしろ、一般の農民の小作人と比べたら、基本的には、お金持ちであり、権力者であろう。
そういう、お金もち・権力者を描く以前の美術が、「現実的でない」というような意味あいで、ミレーはそれまでは描かれることの少なかった貧農を描いたわけである(いなかったわけではない)。
もっともミレー以前にも、レンブラントだって『夜警』などの作品で、貴族以外の自警団などの市民を描いてるわけだから、けっしてミレーだけが、いきなり貴族以外のものたちを描く意義を発見したわけではない。
だが、分類の都合上、どこかの時代でわれわれは過去の画家たちの区分を線引きをする必要があり、なので美術史の慣習上、レンブラントは「写実主義」に含まれないと分類され、ミレーは「写実主義」に含まれると分類されることが多い。
(※ 範囲外)なお、芸術家に対する同時代の経済的な支援者のことを芸術用語で「パトロン」という。たとえば、「レンブラントの時代のオランダでは、(貴族だけではなく)市民階級がパトロンだった」のような言い方もできる[12]。当時のオランダはプロテスタントが多いので[13][14]宗教画があまり書かれない、という余談もある[15]。このように、パトロンたちの階級も、芸術作品に影響を与えている。絵画に限らず、教会装飾や聖人像などの注文も、オランダ社会のプロテスタント化によって激減したという背景がある[16]。つまりプロテスタント系の教会はあまり宗教美術を注文しなかったという背景がある。
ルノワールの画風は、教科書の小さい写真では分かりづらいが、じつは、あまり細かいところを正確には描き込んでなく、細部をボカしている。なので、そこが通説で「写実的ではない」と、現代の評論家から指摘される根拠だろう。
しかし、それは単に解像度の問題にすぎない。現代の評論家たちは、カメラの発明初期の解像度の少ない写真を見て、「写実的ではない」などとタワゴトを言うつもりだろうか?
要するに、「絵は細かいところを描きこまなくっても、重要なポイントを押さえて描けば、そこそこ写実的に見えるし、観客にテーマも伝わるぞ」って事をルノワールは発見して、自身の作品で証明したのである。だから「ルノワールは写実的ではない」と解釈してしまうと、本質を見落としてしまうだろう。
単に光を強調するだけの構図の表現は、少なくとも(フランス革命時に)レンブラントがとっくの昔に描いており、べつにルノワールの発明ではない。
また、そもそも絵画は、なんらかの印象を伝えるために描かれるのである。けっして、ルノワール以前の画家は、印象を伝える気持ちがなかったわけではないだろう。
上述のように、写実主義と印象主義の境界はあいまいであり(※ 帝国書院でも、そういう意見)、あまり厳密には区別できない。
なおミレーが作品をえがいた意図としては、フランス社会の農民の貧しさを伝えるために、政府などに批判的な意味合いでえがかれたのだろう、と考えられている。
歴史学的には、美術の風潮の発達の順序としては、
- ロマン派 → 写実主義 → 印象派
の順序で発達したとされる。
ロマン派の美術とは、代表例として、よく、19世紀前半の美術のドラクロア『民衆をみちびく女神』の絵がロマン派美術の紹介される(※ 検定教科書でも、そう)。
- ※ 学者は否定するかもしれないが、19世紀のロマン派とは何かの定義については、あまり定義がハッキリしてない。定義よりもドラクロアなどの作家例・作品例を覚えた方が良いだろう。
- ※ 検定教科書には無い話題だが、しかしドレフュス事件は高校の世界史の範囲なので、
1894年(19世紀の末期)、フランスでユダヤ系軍人ドレフュスのスパイド疑惑という事件が起きた(『ドレフュス事件』という。※ 詳しくは 高等学校世界史B/欧米列強の内部情勢#フランス)。
軍隊は芸術とはあまリ関係ないが、しかし事件の起きた国が美術の本場であるフランスでの事件でもあったので、この事件は美術界も巻き込んだ論争に発展した。
なんとなく芸術家は左翼みたいなイメージがあるが、しかし実際には反ユダヤ主義をとった芸術家も少なくなく、ドガ、ルノワール、セザンヌなどの名だたる印象画家も反ユダヤ主義の立場をとった。
- なお、ピサロ、モネ、シスレー、サカットは親ユダヤ主義であり、ドレシュスを応援する作家のゾラと足並みをそろえた。なお、ピサロはユダヤ人。
ドガは事件以降、ピサロと通りであってもアイサツをしなくなったらしい。
なお、ルノワールの反ユダヤ主義と言っても、決して、のちのヒトラーのような虐殺(アウシュビッツ収容所など)とか強制収容とかではない。「外国から来たユダヤ人などを、国家の高い地位の要職につけるのは、やめるべきだ」的な規制を求めるような意見が、ルノワールの主張ではある[17]。
21世紀の現代でも欧米・東アジアなどの各国で、移民の参政権や公務員就職の是非の問題など似たような問題が続いており、古くて新しい問題である。昔の人たちも、似たような問題で悩んだ。作家や芸術家と言えでも例外ではない。
なお、ドガはもともと愛国主義的・保守主義的で反ユダヤ主義の画家である。ドガ作『証券取引所の人々』は、金儲けに明け暮れるユダヤ人への皮肉をこめて描かれたと言われている(※ 画像がwikiで見つからない)。
1882年にはパリ証券取引所で金融恐慌が発生している。
なお、同時代のフランス出身の印象画家のゴーギャン(1848 - 1903年)は、画家になる前は証券会社のサラリーマンであった。ゴーギャンは恐慌前から絵を発表していたが、恐慌もあってか人生をとらえなおしたのか、恐慌後により本格的に絵を描き始めるようになる。1890年代からゴーギャンはタヒチに移住し、たびたびフランスに戻るが、最終的にタヒチにてゴ-ギャンは死を迎えた。
文芸
編集文学では、ゲーテやシラーが「古典主義」に分類される。しかしゲーテは、べつに古典を目指したわけではない。後世の文学史家が、勝手にゲーテたちを「古典主義」という名前の文芸思潮に分類しているだけである。
さらにゲーテやシラーの若い頃の作品は「ロマン主義」に分類されることもある(※ 実教出版の検定教科書で、そう分類している)。
- (※ 範囲外)ゲーテは、当時は文学的な地位の低かったドイツ語を使った文章により、詩や小説、(劇などの)脚本などの文芸が作れることを示したドイツ作家のひとりである。
(※ ハッキリいって、文学史家が馬鹿である。西洋の文系学者は馬鹿なのだ。日本の西洋文学研究者は、無能な西洋学者の研究を、伝言ゲームのように、日本の若者に伝えているだけである。)
※ 単に、ロマン主義の分類におさまらない作品が多く、(後世の評論家が)それらの作品を「古典主義」に分類しただけだろう。
※ 絵を上手にかけない人たちが、美術史の通説をつくってきた。人気小説をかけない評論家が、文学史をつくってきた。
科学
編集19世紀後半、ドイツのダイムラー(人名)が(1886年に)ガソリンエンジンと自動車を発明した。その後、ドイツのディーゼル(人名)がディーゼルエンジンを(1893年に)発明した。
電気については、イギリスのファラデーが電磁誘導の法則を(1830年代に)発見し、電気・磁気の物理の理論化がすすんだ。(※ ファラデーは物理学や化学でさまざまな量の単位になってるほどの人物であり、しかもその単位が高校物理や高校化学で出てくるので、人名「ファラデー」も覚えよう。)
さらにアメリカにおいて、(1837年ごろ)モールスがモールス信号を発明し、(1875年ごろ)ベルが電話を発明し、また(1870〜90年ごろ)エディソンがさまざまな発明をした。(エディソンの発明は、蓄音機、白熱電球、映画など)
アメリカのこのような発明と同じころ、大衆向けの新聞や郵便も普及してきて、情報伝達の速度が早まった。
また、ドイツのジーメンス(兄)は発電機を(1867年ごろに)改良し、性能を大幅に上げた。また、ジーメンス(兄)はモーターを改良し、電車を発明した。
上述のように、19世紀後半の工業において、アメリカやドイツの工業が発達し、もはやイギリスは「世界の工場」と言えるほどの優位的な地位は無くなっていった。
生物学では、イギリスのダーウィンが(1850年年代に)自然淘汰による適者生存を発見して発見して『種の起源』を(1857年に)著し、進化論(theory of evolution [18])を主張した。
(※ じつはメンデルが遺伝の法則を発見したのも、この頃(1865年)である。しかし彼の論文は注目されず、しばらく忘れられた。1900年ごろに生物学者ド=フリース、生物学者チェルマク、生物学者コレンスなどによって、35年ほど前のメンデルの論文が再発見されることになる。)
また、19世紀後半にコッホやパスツールが細菌学のさまざまな発見をしたことにより、予防医学が発達した。
化学では、ノーベルがダイナマイトを発明したのが1867年。(クリミア戦争(1853〜56年)よりも後の時代。)
- ^ 橋場弦 ほか監修『WORLD HISTORY for High School 英文詳説世界史』、2019年10月15日 第1版 第3刷発行、P.441
- ^ 早坂優子 著『鑑賞のための西洋美術史入門』、視覚デザイン研究所、平成18年(2006年)9月1日 第1刷、P.118、
- ^ 早坂優子 著『鑑賞のための西洋美術史入門』、視覚デザイン研究所、平成18年(2006年)9月1日 第1刷、P.118、
- ^ 下濱晶子 監修『10歳からの「美術の歴史」』、株式会社メイツユニバーサルコンテンツ、2020年11月30日 第1版 第1刷発行、P.71
- ^ 早坂優子 著『鑑賞のための西洋美術史入門』、視覚デザイン研究所、平成18年(2006年)9月1日 第1刷、P.118、
- ^ 橋場弦 ほか監修『WORLD HISTORY for High School 英文詳説世界史』、2019年10月15日 第1版 第3刷発行、P.447
- ^ 下濱晶子 監修『10歳からの「美術の歴史」』、株式会社メイツユニバーサルコンテンツ、2020年11月30日 第1版 第1刷発行、P.5
- ^ 下濱晶子 監修『10歳からの「美術の歴史」』、株式会社メイツユニバーサルコンテンツ、2020年11月30日 第1版 第1刷発行、P.5
- ^ 山田五郎『知識ゼロからの西洋絵画入門』、幻冬舎、2008年5月25日 第1刷 発行、P.67
- ^ 下濱晶子 監修『10歳からの「美術の歴史」』、株式会社メイツユニバーサルコンテンツ、2020年11月30日 第1版 第1刷発行、P.70
- ^ 早坂優子 著『鑑賞のための西洋美術史入門』、視覚デザイン研究所、平成18年(2006年)9月1日 第1刷、P.119、
- ^ 下濱晶子 監修『10歳からの「美術の歴史」』、株式会社メイツユニバーサルコンテンツ、2020年11月30日 第1版 第1刷発行、P.47
- ^ 山田五郎『知識ゼロからの西洋絵画入門』、幻冬舎、2008年5月25日 第1刷 発行、P.51
- ^ 下濱晶子 監修『10歳からの「美術の歴史」』、株式会社メイツユニバーサルコンテンツ、2020年11月30日 第1版 第1刷発行、P.47
- ^ 下濱晶子 監修『10歳からの「美術の歴史」』、株式会社メイツユニバーサルコンテンツ、2020年11月30日 第1版 第1刷発行、P.47
- ^ 青柳正規 監修・渡辺晋輔ほか著『朝日おとなの学び直し 美術 国立美術館編 西洋美術史 ルネサンスから印象派、ロダン、ピカソまで』、2013年1月30日 第1刷 発行、P.80、参照部の著者は幸福輝
- ^ 『芸術新潮』2022年11月号、新潮社、P.126
- ^ 橋場弦 ほか監修『WORLD HISTORY for High School 英文詳説世界史』、2019年10月15日 第1版 第3刷発行、P.449