ここでは微分積分の概念について理解し、多項式関数の微分積分を学ぶ。また、微分の応用を応用して接線の方程式やグラフの概形などを求めたり、積分を応用してグラフの面積を求める。微分積分は物理学や工学などさまざまな分野で応用されている。
関数 において、 が とは異なる値をとりながら限りなく に近づくとき、 が限りなく に近づくことを、 とかく。
を求める。
を、 と限りなく0に近づけてみる。すると、 は、 と、限りなく0に近づくことがわかる。
よって、 を限りなく0に近づけると、 は限りなく0に近づくので、 である。
次に、
を求める。
を、 と、限りなく1に近づけてみると、 は、 と、限りなく2に近づく。
なので、 である。
これは、式に値を代入する前に、式自体を約分してしまった方が簡単に計算できる。すなわち、
であり、 を1とは異なる値を取りながら限りなく1に近づけるとき なので、これは約分でき、 である。
なので、 を求めるには、 を求めれば良い。
であるので、 と求めることができる。
※発展 最初の例では、 を、 と、限りなく0に近づけたが、 や、 のように近づけてみても は限りなく0に近づく。他にも、 や など を0に近づかせる方法はいくらでも考えられる。
もちろん、この例では、 をどのように近づけたとしても極限の値は変わらない。
しかし、 を、 と近づけたとき、 は に近づくが、 を、 と近づけたら、 は に近づかない。そんな関数 だってあるだろう。
なぜ を と、近づけただけで、極限の値を求めることが出来るのか?と疑問に思う人もいるかも知れない。
極限を厳密に定義するには、イプシロンデルタ論法を使う必要がある。しかし、高校生には少し難しいと考える人が多いので高校ではあまり教えられていない。
なので、この本では、イプシロンデルタ論法を使わず、曖昧な方法で極限を定義した。なので、上のような疑問を持った人は、その疑問について深く考えずに先に進むか、イプシロンデルタ論法を学ぶかしてほしい。
関数 に対し次が成り立つ。
- (複号同順)
-
証明
-
-
演習問題
次の関数を微分せよ
1.
2.
解答
1.
-
2. であるから
-
関数 の原始関数の一つを とする。この原始関数に値を代入して、その値の差を求める操作を、定積分と呼び、 と書く。つまり、
-
である。
[1]とする。
このようにすると、 と計算できる。
定積分の値は原始関数の選択によらない。実際、原始関数として、 を選び、定積分を計算すると、
となり、原始関数としてどれを選んでも定積分の値は一定であることがわかる。[2]
関数 に対して、原始関数をそれぞれ とする。 を実数として、
が成り立つ。
を求める。
は、微分すると、 なので、 は の原始関数の一つである。よって である。
も、微分すると、 なので、 は の原始関数の一つである。よって、 と求めることもできる。
関数 が の範囲で常に正であるとする。このとき、定積分 によって、関数 のグラフと、直線 、直線 、 軸で囲まれた部分の面積を求めることができる。
関数 のグラフと、直線 、直線 と、 軸で囲まれた部分の面積を とすることによって、関数 を定める。( とする)
関数 のグラフと、直線 、直線 と、 軸で囲まれた部分の面積を考える( とする)。これは、 である。ここで、 なる をとってきて、その点における の値 を高さとする長方形の面積を考えることで、 を上手にとれば、 とできる。両辺を で割り、 の極限を考えると、
-
であるが、左辺は微分の定義より であり、 であることに注意すると右辺は である。文字を から に取り換えると、結局
-
が得られる。つまり、 は の原始関数の一つであることが分かる。
よって、 であるが、この式の右辺は、関数 のグラフと、直線 、直線 と、 軸で囲まれた面積である。よって、左辺 は、関数 のグラフと、直線 、直線 と、 軸で囲まれた面積を表している。
歴史的には、積分は、関数のグラフで囲まれた部分の面積を求めるために考え出された。この節で述べたような微分との関連は積分自体の発明よりずっと後になって発見されたことである。
例として、
の範囲で、y = xのグラフとx軸ではさまれた部分の面積を、積分を用いて計算する。
(
実際にはこれは三角形なので、積分を用いなくても面積を計算することが出来る。
答は となる。
)
定積分を行なうと、
となり確かに一致する。
演習問題
放物線 とx軸および2直線 で囲まれた部分の面積Sを求めよ。
解答
この放物線は でx軸の上側にあるから、
-
において、常に であるとき、2つの曲線 に挟まれる部分の面積Sは、次の式で表される。
放物線 と直線 によって囲まれた部分の面積Sを求めよ。
放物線と直線の交点のx座標は
-
-
-
の範囲で より
-
で、 のとき、x軸 と曲線 によって挟まれていると考えられるので、
-
となる。
放物線 とx軸で囲まれた部分の面積Sを求めよ。
放物線とx軸の交点のx座標は
-
-
この放物線は でx軸の下側にあるから、
-
物理学と微分積分
微分積分は、物理学でも運動方程式の計算などに応用されている。
1600年代、ニュートンなどの研究により、運動の法則を微分積分を使った式で表現できることが解明された。
なお、ニュートンは著書として『プリンピキア』をあわらし、その著書でニュートンは運動の法則が微分積分で表されることを述べ、力学(りきがく)の理論を進歩させた。
なお、微分積分を研究した同時代の数学者には、ニュートンの他にもライプニッツがいる。
高校数学をしていると「将来微分とか積分とか何に使う?」と思う人の方が多いと思う。確かに日常生活では、積分などの高度な
数学は使わない。だがその一方裏では積分や
微分、高校数学では収まらないような数学が使われている。例えば台風の進路予想。
これは積分を使い台風の進路を予測している。他にもセキュリティの強化などにも数学は使われている。日常生活では数学は使わないが、数学に親しみを持ってみてはどうだろうか。
- ^ で表される時もある
- ^ なので、実際に定積分の計算をする場合、原始関数として定数項が0となる関数を選んだ方が計算がしやすくなる。