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守株

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白文 (正字)

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宋人有耕󠄁田者。田中有株。兔走觸株、折頸而死。因釋其耒而守株、冀復得兎。兎不可復得、而身為宋國笑。今欲以先王之政、治當世之民、皆守株之類也。

(韓非子 五蠹)

書き下し (新字)

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宋人(そうひと)田を耕す者有り。田中(でんちゅう)(くひぜ)有り。(うさぎ)走りて株に触れ、(くび)を折りて死す。()りて()(らい)()てて株を守り、()た兔を得んことを(こいねが)ふ。兔復た()べからずして、身は宋国の笑ひと()れり。今先王の(まつりごと)(もつ)て、当世の民を治めんと欲するは、皆株を守るの(たぐひ)なり。

注釈

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  • 宋:春秋戦国時代に存在した国。
  • 田:耕作地。畑。
  • 株:木を切ったあとに残る幹の下部。切り株。
  • 耒:土を掘り起こす農具。(すき)

現代語訳

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宋の国の農民が畑を耕していると、畑にあった切り株に走って来たウサギがぶつかり、首の骨を折って死んだ。これを見て、農民は畑を耕すことを辞めて株を見守り、再びウサギが飛び込んでくるのを待った。農民はウサギを二度と得られず、国中の笑い者になった。今、古の王の為政法をもって、現在の民を治めようとするのは、全くこの「株を守る」類のことである。

鑑賞

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『韓非子』は春秋戦国時代末期の思想家である韓非によって書かれ、全二十巻からなる。法による統治を理想とする法家思想を説き、君主と臣下の在り方について述べている。この「株を守る」は、昭和時代に北原白秋が「待ちぼうけ」という題で詩に翻訳し、童謡としても有名になっている。この話を元にして、「守株待兔(しゅしゅたいと)」という四字熟語や「株を守りて兔を待つ」という故事成語が生まれた。いずれも、「偶然の成功体験に執着して新たな行動ができず、結果として何も得られないこと」を意味する。