高等学校 生物基礎/植物と環境の関わり

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植物の環境への適応 編集

 適応では、生物のもつ形態や生理的機能などの性質が、その環境のもとで生活していく上で都合よく出来ており、結果的に生物の生存や繁殖に役立っています。

生活形 編集

 寒冷で雪の多い地域に生育する樹木には、温暖な地域に生育する近縁な種に比べて背丈が低く、柔軟な茎をもつものがあります。この形態は、樹木の上に雪が積もっても折れにくいという特徴があります。また、砂漠のように乾燥した地域に生育する植物には、根を非常に長く伸ばし、地中深くの水分を吸収しているものもあります。環境への適応を反映した形態を生活形といいます。

 生活形には様々なものがあります。種子が発芽してから1年以内に結実して枯死する植物を一年生植物、地下部などに養分を貯蔵しながら1年をこえて生育する植物を多年生植物といいます。

 木本は、普通は、2m程度より低い低木と、低木より高い亜高木や高木に分けられます。また、木本は、冬季や乾季に葉を落とすかどうかで常緑樹と落葉樹に分けられます。広葉樹と針葉樹にも分けられます。

クリステン・ラウンケルの生活形 編集

 
クリステン・ラウンケルの生活形分類

 多くの植物は生育に不適切な冬季や乾季には成長を止め、休眠芽を作ります。休眠芽は、ある一定期間、発芽しない芽で、低温や乾燥に強い特徴を持ちます。クリステン・ラウンケルは、休眠芽の位置の違いによって植物の生活形を分類しました。熱帯では地上植物が、寒帯では半地中植物が、乾燥する砂漠では一年生植物がよく実ります。

光の強さと光合成 編集

 植物の光合成について、単位時間あたりの植物の二酸化炭素の吸収量を光合成速度、放出量を呼吸速度といいます。ある光の強さのもとでは、呼吸速度と光合成速度がつり合い、見かけ上、二酸化炭素を放出も吸収もしない状態になります。この時の光の強さを光補償点といいます。

 光が十分な強さになると、それ以上、光を強くしても、光合成速度は光の強さに関係なく一定になります。この時の光の強さを光飽和点といいます。また、この一定になった時の光合成速度を最大光合成速度といいます。

陽生植物と陰生植物 編集

 植物の光の利用の仕方は、植物の種類によって異なります。草原や耕地など、日当たりのよい環境でよく生育する植物を陽生植物といいます。陽生植物の性質をもつ樹木を陽樹といいます。陽樹には、ヤシャブシ、クロマツなどがあります。陽樹の芽生えや幼木は、日陰では光合成による物質生産を十分に行えず、病原菌に感染したり昆虫などに食べられたりして、よく枯死します。

 一方、森林の中など、日陰の環境に生育する植物を陰生植物といいます。芽生えや幼木の耐陰性が高く、ある程度成長すると、明るいほど成長がよくなります。このような陰生植物の性質をもつ樹木を陰樹といいます。陰樹には、タブノキ、アラカシなどがあります。遷移が進むにつれて目陰の環境が多くなり、陽樹が育ちにくくなるため、遷移が進むにつれて陰樹がよく実ります。そのため、陰樹は、極相に達した森林を構成する樹種によくみられます。

 遷移の進行を促す環境要因の1つが地表に届く光の量です。草原の明るい環境では、陽樹は陰樹に比べて葉の光合成速度(葉の単位面積あたりの二酸化炭素の吸収速度)が大きく成長も速くなります。樹木は、草本に比べてより高く成長するため、草本は樹木の陰になります。そのため、草原の植生の次に陽樹林の植生によく遷移します。陽樹林が出来ると、地表に届く光が少なくなるので、陽樹の芽生えは生育しにくくなります。しかし、陽樹林に陰樹が侵入した場合、陰樹の芽生えは生育出来るので、陽樹が枯死すると陰樹を主とした森林に遷移していきます。

陽葉と陰葉 編集

 1本の植物体でも、日当たりのよい場所と悪い場所では、葉の特徴が異なります。日当たりのよい場所にある葉を陽葉といい、厚くて葉の面積が狭くなります。一方、日当たりの悪い場所にある葉を陰葉といい、薄くて葉の面積が広くなります。陽葉は陰葉より、葉の面積あたりの最大光合成速度が速くなります。