高等学校 生物基礎/植生とバイオームⅠ
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本節は、バイオームの定義と世界のバイオームを解説します。
キーワード
編集バイオーム(生物群系)・森林・草原・荒原・熱帯多雨林・亜熱帯多雨林・照葉樹林・夏緑樹林・針葉樹林・サバンナ・ステップ・砂漠・ツンドラ
定義
編集植物・動物・菌類・細菌などのように、多種多様な生物が地球上に生育しています。このような生物はどれも繋がっており、様々な集団に分けられます。このような生物の集団をバイオーム(生物群系)と表現しています。
どのように繋がれば、バイオームと言えるのか?
編集陸上の動物や植物は、気温や降雨量などの気候条件に左右されやすくなります。例えば、細菌類・菌類・様々な陸上動物は原則自身で栄養を作れません。栄養は植物の栄養分(有機物)から取り入れています。一方、植物は体内で光合成を行い、栄養分(有機物)を作ります。光合成に必要なのは、日光・水です。もし、どちらかがなかったら、植物は育ちません。植物は気温もそれなりにないと、大きく育ちません。また、一部の動物は植物を使い、巣を作っています。ここまで説明して、上の見だしの答えが分かります。つまり、植物は日光と水でどれも繋がっています。一方、細菌類・菌類・動物は栄養分でどれも繋がっています。このように、陸上のバイオームは植物の生育状況で決まります。さらに、陸上のバイオームは植物の見た目から分けられます。加えて、同じような気温と降水量の地域では、同じような見た目の生育状況になります。
世界のバイオーム
編集前述のように、気温や降雨量が、陸地のバイオームの見た目に大きく関わっています。天候はそれぞれの地域で変わります。また、バイオームは3種類(森林・草原・荒原)に分かれています。
赤道に近づくほど暖かく、遠くなるにつれて冷たくなります。つまり、緯度に従ってバイオーム(生物群)が並んでいます。しかも、各バイオームのどこからどこまでが境界なのかをはっきり示していません。そのため、その境界線はいつも変わります。
森林
編集樹木は年降雨量の多い地域で育ちます。やがて樹木が並び、見た目も森林になります。熱帯多雨林・亜熱帯多雨林・雨緑樹林が熱帯・亜熱帯で見られます。照葉樹林・硬葉樹林・夏緑樹林が、温帯で見られます。針葉樹林は亜寒帯で見られます。
熱帯多雨林
編集毎年、激しい大雨が頻繁に降り、1年を通じて暑いような地域(南アメリカ・中央アフリカ・東南アジア)に熱帯多雨林が広がっています。様々な種類の樹木が熱帯多雨林に見られます。このような樹木は複雑に絡み合っています。また、常緑広葉樹の高木も次々育っています。高さ3040メートルにもなるような高木が立ち並びます。このうち、それを超えるような樹木もあります。樹木の下の地面は暗く、ざらざらしており、薄い土壌が堆積しています。土以外にも、樹木や岩などに根を伸ばすような着生植物も数多く見られます。さらに、他の植物を伝って高く伸びるような蔓植物も数多く見られます。様々な種類の昆虫は樹液や葉を食べます。珍しい鳥類・哺乳類・爬虫類なども数多く見られます。
亜熱帯多雨林
編集亜熱帯多雨林は、熱帯地域よりもやや高緯度に位置しており、少し涼しく、雨もよく降るような地域(東南アジア)に広がっています。様々な常緑広葉樹が亜熱帯多雨林で育っています。しかし、熱帯多雨林よりも樹木の高さは抑えられています。
雨緑樹林
編集雨季と乾季は南アジア・東南アジアではっきりしています。この地域の樹木は雨季になると葉を実らせ、乾季を迎えると葉を枯らします。このような地域に、雨緑樹林が広がっています。中でも、チークの木は熱帯・亜熱帯の森林に生えています。チークは、綺麗な木目と丈夫さで有名です。家具や船のデッキなどによく使われます。
夏緑樹林
編集もし、四季がはっきりしても少し涼しい地域なら夏緑樹林になります。ブナ・ミズナラ・カエデなどの樹木は夏を迎えると葉を茂らせます。秋を迎えるとその葉が色鮮やかになります。しかし、冬を迎えると、冷え込みや乾燥に耐えられないので、その葉を全て落とします。
照葉樹林
編集四季がはっきりしていて暖かい地域なら照葉樹林になります。照葉樹林の葉はとても太くてつやつやしています。そして、照葉樹林の葉は四季を通じて緑色で変わりません。スダジイ・アラカシ・タブノキ・クスノキ・ヤブツバキなどがこの地域に育っています。
硬葉樹林
編集地中海性気候の夏は日差しも強く乾燥しています。しかし、冬になると雨がよく降ります。このような地域に硬葉樹林が広がっています。オリーブ・コルクガシ・月桂樹などの葉は小さく丈夫なので湿気の少ない夏にも耐えられます。
針葉樹林
編集亜寒帯~亜高山帯は、短い春~秋を越えると、長い冬を迎えます。このような地域に針葉樹林が広がっています。針葉樹林は、樹木の種類もかなり限られます。しかし、寒さの強い樹木が育っています。例えば、トウヒやモミなどは、冬でも葉を落とさずに育ちます。トウヒやモミはスカンジナビア半島・シベリア・アラスカなどに広がっています。また、東シベリアのカラマツは、冬を迎えると葉を落とします。なお、針葉樹林の樹木は少しでも日光を取り入れるために葉の先も細くなっています。
草原
編集比較的暖かくても、毎年それほど頻繁に雨が降らなかったら、どこでも草原になります。雨がほとんど降らないので、いつまでたっても樹木も大きく育ちません。上記の理由から、森林にならないので、小雨でも育つような草や低木が中心になっています。草原は、ステップとサバンナから成り立ちます。カラッと晴れるような暖かい地域にサバンナが広がっています。もし、暖かく、それほど大雨が降らないような地域なら、ステップになります。
サバンナ
編集もし、毎年充分な雨が熱帯・亜熱帯地域に降らなかったら、日照りも長くなり森林を支えられません。サバンナはこのような地域に広がっています。イネ科やカヤツリグサ科の草が大地を覆い、小さな木(アカシアなど)もちらほらあります。草食動物(キリン・シマウマなど)がサバンナに暮らしています。また、その草食動物を食べるような肉食動物(ライオン・ハイエナ・チーターなど)も暮らしています。乾季になると、草食動物は水や食料などを求めて、集団で移動します。同じように肉食動物も付いていきます。
ステップ
編集温かく、緑豊かな草があり、年間降雨量や年間降雪量も少なければ、どこでもステップになります。例えば、ユーラシア大陸のステップ、北アメリカのプレーリー、南アメリカのパンパスなどが挙げられます。草がこの地域によく見られ、特にイネ科の植物は地下深くまで生えています。たまに樹木も見られます。
例えば、哺乳類のアメリカバイソン・植食性動物のプレーリードッグ・肉食動物のコヨーテが北アメリカのステップに見られます。小麦やトウモロコシなどの農産物も栽培されています。
荒原
編集毎年あまり雨が降らなければ、砂漠になります。毎年平均気温がかなり下がると、ツンドラになります。荒原はツンドラか砂漠のどちらかを意味します。ほとんどが岩と砂から成り立っており、植物はこのような環境であまり育ちません。そのため、低温・乾燥に強い植物がよく育ちます。
ツンドラ
編集気温がかなり低くなるような場所なら、どこでもツンドラになります。気温がかなり低くなると土壌も育ちにくくなり、栄養分も少ないので、植物もあまり育ちません。地下に永久凍土が眠っています。永久凍土の上に苔植物・地衣類(藻類と菌類)が育ちます。ジャコウウシ・ホッキョクグマ・トナカイなどがこの地域に住みついています。
砂漠
編集気候に関係なく、降水量が200ミリ以下ならどこでも砂漠になります。原則、大半の砂漠は植物さえ育ちません。トウダイグサ科の多肉植物とサボテンは、水分を溜め込む細胞を多く備えているので、この地域であまり見られません。また、地面深くまでしっかりと根を張るような低木もまれに見られます。ごくまれに雨が降ると、草本植物も育ちます。しかし、草本植物はわずか数週間で枯れてしまいます。草本植物は子孫をこの期間内に残します。熱帯砂漠の動物達は、夜になると活発に動き回ります。
資料出所
編集- 東京書籍株式会社『生物基礎』浅島誠ほか編著【生基701】
- 実教出版株式会社『生物基礎』最上善広ほか編著【生基703】
- 新興出版社啓林館『高等学校 生物基礎』赤坂甲治ほか編著【生基706】
- 数研出版株式会社『高等学校 生物基礎』嶋田正和ほか編著【生基708】
- 株式会社第一学習社『高等学校 生物基礎』吉里勝利ほか編著【生基710】
- 株式会社浜島書店『二訂版 ニューステージ 生物図表』2024年度版
- 数研出版株式会社『チャート式シリーズ 新生物 生物基礎・生物』本川達雄ほか編著 2023年