小学校・中学校・高等学校の学習>高等学校の学習>高等学校 生物基礎>植生と遷移Ⅲ

 本節は、様々な植生について記述します。

キーワード

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植生・相観・優占種・林冠・林床・高木層・亜高木層・低木層・草本層・地表層・階層構造・土壌・森林・草原・荒原

森林の階層構造

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森林の階層構造

 森林を家に例えてみましょう。森林を上から見ると、屋根が広がっているように見えます(林冠)。地面から森林を見上げると家の土台のように見えます(林床)。つまり、森林は林冠と林床から出来ています。また、森林の中をよく見ると、硬くて丈夫な植物(木本植物・樹木)・柔らかくてしなやかな植物(草本植物・草)・自力で立てないような植物(蔓植物)などが広がっています。さらに、木本植物は背の高い樹木(高木)・背の低い樹木(低木)に分けられます。

 植物は、様々な方向に茎・葉を伸ばして育っています。これを人間の身長に例えてみましょう。背の高い順から、高木層・亜低木層・低木層・草本層と重なっています。さらに、地表層(コケ層)が地面にあり、地中層(根系層)が地面より下に広がっています。このように、植物は日光を求めて、上手に空間を使っています(森林の階層構造)。ちなみに、照葉樹林の場合、亜高木層はあまり見られません。

 
林冠と林床の明るさ

 熱帯多雨林の樹木は高木層を越えて、超高木層まで伸びています。そして、熱帯多雨林の樹木は人間の身長を比べるように、日光を求めてもっと高く成長します。その結果、様々な種類の樹木が熱帯多雨林に広がっています。様々な種類の樹木が広がっているので、熱帯多雨林の森林も複雑な構造になります。しかし、針葉樹林・人工林の樹木は、高木層を越えません。なぜなら、日光があまり当たらないからです。その結果、同じような樹木が針葉樹林・人工林に広がっています。同じような樹木しか広がっていないので、針葉樹林・人工林の森林も簡単な構造になります。

 日光は、森林の樹木にたくさん当たります。でも、森林の林冠からに林床に近づくにつれて、日光は段々弱くなっていきます。なぜなら、樹木が日光を遮ったり、様々な方向に光を散らしたりするからです。そのため、陰生植物は低木層・草本層で育ちます。

 林床でも、葉の隙間から日光が差し込むと明るくなります。したがって、育つ植物は明るい場所と暗い場所で変わります。さらに、森林内の明るさは、日光の位置・天気・時刻・季節によってずいぶん変わります。

 例えば、照葉樹林(常緑広葉樹)の森林内なら、日光は途中で遮られるので、いつも薄暗くなっています。反対に、夏緑樹林(落葉広葉樹林)の森林内なら、日光は春先まで林床にしっかり届きます。しかし、夏を迎えると日光は途中で遮られるので、夏緑樹林(落葉広葉樹林)の森林内も薄暗く変わります。

土壌

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 植物は、土壌に根を伸ばして、体を支えています。根は、土壌から水や栄養を吸い上げて植物を大きく成長させます。ある程度の厚さ・栄養分・保水性・通気性があると、植物も土壌で生き生きと育ちます。土壌の種類・中身が変わると植生も変わります。

 火山灰・岩石は長い時間をかけて細かくなり、砂・泥に変わります。また、土壌生物・微生物(ミミズ・ダンゴムシなど)は植物の死骸・動物の排泄物・動物の遺体などを食べて、土の栄養分(腐植質)を作ります。つまり、土壌は砂・泥・土の栄養分(腐植質)から成り立っています。

 土壌を縦に切ってみましょう。土壌を縦に切ってみると、どのようにできているのかがよくわかります。落ち葉や枯れ枝は森林に数多くあります。このような落ち葉や枯れ枝は、土壌の栄養分になります。土壌の栄養分が豊かになると、様々な植物も育ちます。

 落ち葉・落ち枝は地表面に数多く落ちています(落葉層)。土の栄養分(腐植質)と小さな岩石が落葉層の下にあります(腐植土層)。そして、植物を大きく育つための栄養分が腐植土層に多く含まれています。

泥炭
 もし、その地域が寒くて、豊かな水分なら草本・樹木は少しずつ枯れていきます。枯れた植物は腐りにくく、泥炭として積み重なります。水苔の泥炭が高層湿原を作り出しています。

 腐植土層は、柔らかく黒っぽい色をしています。腐植土層の下に硬くて褐色っぽい地層があります。この地層は、岩石が風・雨にさらされて、長い時間をかけて細かく砕かれて出来ています。このような背景から、土壌の栄養分は腐植土層よりも少なくなります。さらに、この地層より下になると、硬くて大きな岩(母岩)があります。この大きな岩は風・雨で全く壊れていません。このように、土壌は色・硬さ・栄養分なども違います。植物が数多く育っていると、腐植土層も厚くなります。

団粒構造
 ミミズ・ダンゴムシ・菌類は土壌にいます。ミミズ・ダンゴムシ・菌類は、落ち葉・枯れ枝などの有機物を食べて、小さな土の粒を作ります(団粒構造)。団粒構造は通気性に優れ、保水性もあります。言い換えると、団粒構造が土壌に多く含まれていると、水分と栄養分を取り入れやすくなります。その結果、植物の根は団粒構造の中で大きく育ちます。

草原と荒原

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背の高い草は燃料として注目
 背の高い草(ヨシ・オギ・ススキ)は沼や川岸などに見られます。日光・水・栄養分が、全て水辺に揃うので、背の高い草も育ちます。背の高い草はどれも数多くのエネルギーを持っています。そのため、バイオマス燃料の材料として世界でも注目されています。

資料出所

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  • 東京書籍株式会社『生物基礎』浅島誠ほか編著【生基701】
  • 実教出版株式会社『生物基礎』最上善広ほか編著【生基703】
  • 新興出版社啓林館『高等学校 生物基礎』赤坂甲治ほか編著【生基706】
  • 数研出版株式会社『高等学校 生物基礎』嶋田正和ほか編著【生基708】
  • 株式会社第一学習社『高等学校 生物基礎』吉里勝利ほか編著【生基710】
  • 株式会社浜島書店『二訂版 ニューステージ 生物図表』2024年度版
  • 数研出版株式会社『チャート式シリーズ 新生物 生物基礎・生物』本川達雄ほか編著 2023年