小学校・中学校・高等学校の学習>高等学校の学習>高等学校 生物基礎>植生と遷移Ⅳ

 本節は、様々な遷移について記述します。

キーワード

編集

遷移・一次遷移・乾性遷移・湿性遷移・二次遷移・先駆植物(パイオニア植物)・先駆種(パイオニア種)・陽樹・極相(クライマックス)・樹種・陰樹・極相林・ギャップ

遷移とは?

編集

 コナラやクヌギなどの様々な樹木が雑木林に生えていて、小鳥がさえずり、リスが木登りをして、様々な動物も元気に過ごしていました。雑木林の落ち葉は、とても大切な役割を持っています。落ち葉が地面に積もると、土の中の生物の餌になったり、土をふかふかにしてくれたりします。さらに、水捌けや保水性も良くしてくれます。しかし、誰も雑木林の落ち葉を拾わなくなり、落ち葉がどんどん溜まっていきました。こうなると、落ち葉の短所も出てきます。落ち葉を拾わなくなると、その落ち葉の間にササがどこからともなく生えてきて、益々大きくなっていきます。ササはとても元気で、周りの樹木を遮ってしまうほどに成長します。やがて、樹木は段々弱くなっていき、とうとう枯れてしまいます。小動物も、住処を失ってしまいます。したがって、私達は、雑木林を大切に守るためにも、落ち葉を拾わなくてはなりません。

 雑木林だけでなく、身近な自然も人間が世話をしなくなると、すぐに変わってしまいます。例えば、草原を放っておくと、雑草が生い茂ったり、樹木が生えてきたりします。また、畑を手入れしないようになると、草が生い茂り、元の畑かどうか分からなくなってしまいます。さらに、大雨で川が溢れ、周りの地面も水に浸かると、土の栄養分も運ばれます。やがて、その栄養分から木が育ち始めて、少しずつ緑豊かな森に変わります。

 もし、火山が噴火したり、山が崩れたりすると、地面が大きく壊されてしまいます。このような地面は植物の栄養分・植物の根、植物の種子までも失われてしまいます(裸地)。それでも、植物はたくましく根を伸ばしていきます。どのような場所でも長い時間をかけて緑を蘇らせます。このように、様々な種類の植物が集まって、植生を作るようになります(遷移・植生遷移)。言い換えると、光・土に合わせて、植物の種類も変わります。

一次遷移

編集

二次遷移

編集
 
山火事後の遷移

 緑豊かな森林は樹木も多く生えています。人間は、自分の家を建てるために、様々な樹木を切り倒します。すると、森林が壊れて、地面もむき出しになってしまいます。しかし、植物はそのような場所でも、次々と生えてきます。なぜなら、植物の種子が土の中にまだ残っているからです(埋土種子)。そして、樹木を切り倒すと、日光が届きやすくなり埋土種子から新しい芽を出します。また、土の中に植物の茎や根があるので、植物もそこから新しい芽を出します(萌芽)。さらに、樹木を切り倒しても、切り株が地面に残ります。やがて、その切り株から新しい芽が育ち始めます。こうして、少しずつ植物が育ち始め、緑豊かな森林に蘇ります(二次遷移)。もし、林檎農家の祖父母が亡くなり、誰もその後を継がなかったら、草が生い茂って、樹木も育ちます。また、山火事・大雨の洪水で森林が壊れても、同じように蘇ります。なお、二次遷移は、かなり早くから植物が生え始めます。

萌芽林
 コナラ・ミズナラ・クヌギなどの木がある程度大きくなったら、人間も必要な分だけ切って薪や炭を作りました。しばらくすると、木は再び新しい芽を出して大きくなります。そして、数十年経つとまた切れるような大きさまで大きくなります(萌芽林)。もし、人間が落ち葉や草を必要以上に拾うと木の肥料を失うので、木も育ちません。

 畑が誰も使われなくなると、少しずつ新しい植物も生えてきます。もし、まだ土の中に栄養分が残っていたら、最初にシロザのような一年生草本が育ちます。一年生草本は、この栄養分を使って、早く大きくなります。一年生草本は、種子から芽を出し、あっという間に成長して花を咲かせ、種子を残してすぐに枯れてしまいます。しかし、一年生草本は、あっという間に成長しても、1年も経たないで枯れてしまいます。なお、ブタクサ・オオアレチチノギクのような外来種も一年生草本に含まれています。

 もし、震災の津波で土の栄養分も流れたら、畑の土に栄養分が残っていません。そのような場所でも、多年生草本が最初に根を下ろします。一年生草本みたいにすぐに大きくなれませんが、多年生草本は少しずつ成長します。そして、数年かけてようやく花を咲かせ、種子を残します。こうして、一年生草本と多年生草本が力を合わせて、畑も次第に変わっていきます。いつか、畑に様々な樹木が育ち、緑豊かな森林になるかもしれません。

二次林
 人間が樹木を切り倒したり、山火事が起きたりすると、森林も壊れてしまいます。しばらくするとその場所に新しい植物が生えてきます。最初は小さな草や小さな木から始まり、次第に大きな木に成長して、新しい森林になります(二次林)。もし、人間が樹木を多く切り倒すと、日光もその分当たるようになって、コナラやクヌギのような陽樹が生えてきます。やがて、陽樹が大きくなってくると、陰樹も生えてきます。こうして、様々な種類の樹木が森林で見られるようになります(雑木林)。

資料出所

編集
  • 東京書籍株式会社『生物基礎』浅島誠ほか編著【生基701】
  • 実教出版株式会社『生物基礎』最上善広ほか編著【生基703】
  • 新興出版社啓林館『高等学校 生物基礎』赤坂甲治ほか編著【生基706】
  • 数研出版株式会社『高等学校 生物基礎』嶋田正和ほか編著【生基708】
  • 株式会社第一学習社『高等学校 生物基礎』吉里勝利ほか編著【生基710】
  • 株式会社浜島書店『二訂版 ニューステージ 生物図表』2024年度版
  • 数研出版株式会社『チャート式シリーズ 新生物 生物基礎・生物』本川達雄ほか編著 2023年