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この節の話題は、かつ2012年頃まで、下記の不完全優性~抑制遺伝子、伴性遺伝などの話題は、むかしは高校生物の教科書や参考書に良くある話題でしたが、しかし現代の高校教育では重要度が低いと考えられるように教育状況が変化しており(『もういちど読む』シリーズの高校生物にその事情が書いてあります)、現在の検定教科書にはほとんど載っていません。「生物資料集」にその内容が載っている程度です。

不完全優性 編集

優性と劣性の関係が不完全な遺伝の仕方を不完全優性(incomplete dominance)と呼びます。 不完全優性では優性の法則は当てはまりません。

不完全優性は、マルバアサガオなどが行います。 マルバアサガオには、花の色が赤Rと白rのものがあります。 花の色が赤の純系RRと白の純系rrを両親Pとすると、 その子F1はRrで花の色が中間の桃色となります。 さらにその子F2は、RR:Rr:rr=1:2:1で、赤色:桃色:白色=1:2:1となります。


P RR
赤色
× rr
白色
F1 Rr
桃色
F2 RR:Rr:Rr:rr
赤色:桃色:桃色:白色

致死遺伝子 編集

成体になるまでに致死作用がある遺伝子を致死遺伝子(lethal gene)と呼びます。

致死遺伝子は、多くの生物に存在します。 例えば、ハツカネズミは致死遺伝子を持っており、 毛の色が黄色Yと灰色yのものがあります。 黄色Yyを両親Pとすると、 その子F1はYy:yy=2:1で、[Y]:[y]=2:1となります。 YYの個体は発生の段階で死んでしまう。 これはYが劣性の致死遺伝子だからです。

P Yy
黄色
× Yy
黄色
F1 YY:Yy:Yy:yy
死:黄色:黄色:灰色

複対立遺伝子 編集

同一の遺伝子座にある、同一形質を決める、複数の遺伝子を複対立遺伝子(multiallelic gene)と呼びます。

複対立遺伝子には、ヒトのABO式血液型などがあります。 ヒトのABO式血液型には、A型、B型、AB型、O型の4種類があり、 AとBとは不完全優性で、A,BはOに対して完全優性です。 例えば下の表のように、AO(A型)とBO(B型)を両親とすると、 その子はAB,AO,BO,OOとなり、それぞれAB型,A型,B型,O型となります。

表現型 A型 B型 AB型 O型
遺伝子型 AA
AO
BB
BO
AB OO
P AO
A型
× BO
B型
F1 AB:AO:BO:OO
AB型:A型:B型:O型

補足遺伝子 編集

対立しない2つ以上の遺伝子が、その働きを互いに補足しあって1つの形質を決めるとき、その遺伝子を補足遺伝子()と呼びます。

補足遺伝子には、スイートピーの花の色などがあります。 色素原を作る遺伝子をC、色素原から色素を作る遺伝子をPとし、 白色花CCppと白色花ccPPを両親Pとすると、 その子F1はCcPpで有色花となります。 さらにその子F2は、C-P-:C-pp:ccP-:ccpp=9:3:3:1で、有色花:白色花:白色花:白色花=9:3:3:1つまり有色花:白色花=9:7となります。 これはCとPの両方をもっていないと色素が作られないためです。

P CCpp
白色花
× ccPP
白色花
F1 CcPp
有色花
F2 9C-P-:3C-pp:3ccP-:1ccpp
9有色花:3白色花:3白色花:1白色花

抑制遺伝子 編集

他の遺伝子の働きを抑制する遺伝子を抑制遺伝子(suppressor gene)と呼びます。

抑制遺伝子には、カイコガのまゆの色などがあります。 黄色遺伝子をY、Yの働きを抑制する遺伝子をIとし、 白まゆIIyyと黄まゆiiYYを両親Pとすると、 その子F1はIiYyで白まゆとなります。 さらにその子F2は、I-Y-:I-yy:iiY-:iiyy=9:3:3:1で、白まゆ:白まゆ:黄まゆ:白まゆ=9:3:3:1つまり白まゆ:黄まゆ=13:3となります。 これはIがYの働きを抑制するためです。

P IIyy
白まゆ
× iiYY
黄まゆ
F1 IiYy
白まゆ
F2 9I-Y-:3I-yy:3iiY-:1iiyy
9白まゆ:3白まゆ:3黄まゆ:1白まゆ