感染症とは 編集

 
ノロ ウイルス(スケールバー 50ナノメ-トル)
 
インフルエンザウイルス
 
結核菌?(調査確認中)

細菌やウイルスなどの病原体が、体内に侵入し、定着することを感染(かんせん、infection)と言い、病原体が増えて、その結果、病気の症状が現れることを、感染症の発病 などという。

なお、ウイルスは、細胞を持っていない。そのためウイルスは自身だけでは増殖できず、他の生物の細胞を乗っ取ることで、ウイルスは増殖する。いっぽう細菌は、細胞であり、自分自身で増殖する。

ウイルスは、とても小さく、電子顕微鏡でないと見えない。いっぽう、細菌は通常の光学顕微鏡で見える。

  • 感染源

病原体が体内に侵入する経路はさまざまである。病原体は目には見えないので、気がつかないうちに、病原体に触っていることもある。病原体が手に付着したまま、手洗いをせず食事をとると、食品を通して手から口に病原体がうつり、体内に病原体が侵入することになる。このような病原体が体内に侵入する経路を感染経路(かんせんけいろ)という。 感染経路はさまざまである。

感染をしても、すぐには症状は現れずに無自覚である。

そのため、外出から帰宅した際の手洗いやうがいなどを行うことが望ましい。食事の前も、手洗いやうがいをすることが望ましい。 また、手洗いは、周囲の人間にも感染を広めないことにもつながる。


風邪などに感染して発症するとくしゃみが出る場合がある。くしゃみをすると、つばのしぶきが飛ぶが、このしぶきにも病原体がいるので、風邪に感染した者が屋外などに出るときはなるべくマスクをしたり、マスクが無いときは、くしゃみの際は腕などで口元を覆い、しぶきが飛ばないようにすることが望ましい。


食事の際も、食中毒を防ぐため、食器などを洗ったり、加熱調理するべき食材は加熱してから食べることが大事である。飲料水も、清潔で新しい水を飲むことが大事である。

病原体そのものや、病原体を持つ物体を感染源(かんせんげん)という。たいていの病気の感染源の正体は、細菌ウイルスなどの微生物である。


我々の体には、病気に抵抗する機能がある(「抵抗力」という)が、栄養が不足しているときなどには、その抵抗の機能が低下して、病気が発症しやすくなる。疲労が蓄積している場合も、抵抗力が弱まる。だから十分な休養や食事が必要である。

また、適度な運動も抵抗力を高める。


病気の予防策としては、

  • 感染源を無くすこと。(消毒など)
  • 感染経路を断つこと。(汚れたものは、なるべく触らない。手洗いなどを行う。など)
  • 病気への体の抵抗力をたかめること。

が重要である。


免疫 編集

 
マクロファージによる食作用の経過
(覚えなくて良い。)a. 貪食された異物が食胞(ファゴソーム)に取り込まれる
b. 食胞はリソソームと融合しファゴリソソームを形成、異物は酵素により破壊される
c. 残渣は細胞外に排出される(あるいは消化される)

1. 異物(病原体)、2. 食胞、3. リソソーム、4. 残渣、5. 細胞質、6. 細胞膜
 
T細胞

人などの動物は、体に入った病原菌などの異物を、自分とは異なる物だと認識して、その異物を排除する仕組みがあり、この仕組みを免疫(めんえき、immunity)という。白血球のうちのリンパ球が、この免疫の仕組みの働きをしている。 人間を含む動物の体には、一度、かかった病気には、次からは感染しても発症しづらくなったり、重症化をしにくくなる機能があり、これを獲得免疫(かくとく めんえき)という。(※「獲得免疫」は中学範囲外の用語。)

この免疫の仕組みを利用して、病原性をかなり弱めた病原体、もしくは病原体を死滅させ成分だけを取り出した病原体などの、改造した病原体を摂取することで、摂取者が、その病気に感染しづらくなるという予防法がある。これを予防接種(よぼうせっしゅ)といい、その予防接種に使われる弱毒化した病原体である医薬品をワクチンという。

  • 好中球

好中球(こうちゅうきゅう、neutrophil)はリンパ球の一種で、異物を食べて、除去する。攻撃した相手とともに死んでしまう細胞である。そのため寿命は短い。ケガをしたときに傷口にできる うみ(膿)は、好中球が死んだものである。

  • マクロファージ

マクロファージ(macrophage)とは、人体など動物の細胞の一種で、病原体を取り込んで破壊する細胞。マクロファージが、病原体の情報を、リンパ球の一種であるヘルパーT細胞(ヘルパーティーさいぼう)に伝える。ヘルパーT細胞はリンパ球の一種である。

  • ヘルパーT細胞は、B細胞(ビーさいぼう)とキラーT細胞(キラーティーさいぼう)に、それぞれ違った指令を出す。指令を受けたキラーT細胞は、病原体に感染した細胞を破壊する。指令を受けたB細胞は、病原体を倒すための抗体(こうたい、antibody)を作って放出し、病原体に抗体を付着させる。

病原体に抗体がつくと、マクロファージが病原体を取り込みやすくなったりするので、病原体を倒しやすくなる。

  • いろいろな予防接種

次の病気で、予防接種がある。

ポリオ
ジフテリア
結核
風しん
インフルエンザ
破傷風(はしょうふう)
日本脳炎
おたふくかぜ


  • 結核とBCG (※ 参考)

BCGとは、結核(けっかく、tuberculosis)の予防接種のワクチンのことである。結核を引きおこす病原体は、結核菌(けっかくきん)である。


  • インフルエンザ

インフルエンザは、毎年、流行する。おもに冬に流行しやすい。空気が乾燥するため、インフルエンザのウイルスが生存しやすくなるためである。インフルエンザには、型が3種類あり、A型、B型、C型と分かれている。型が違うワクチンを予防接種しても、効果は無いのが普通である。

インフルエンザの感染する相手は人間だけでなく、ブタや鳥などの動物にも感染する。(ニワトリにも感染する。)

インフルエンザは変化をしやすい。もしも、ブタなどの動物にインフルエンザが感染したあとに、インフルエンザが変化して人間に感染するようになるものが表れれあっとすると、人間はまだブタや鳥などの人間以外の動物に感染する型のインフルエンザの免疫を獲得していないので、大流行もしくは重症化するかもしれないという恐れがあると恐れられている。

このような新型インフルエンザが危険視されている。


(※ 範囲外: )なお、インフルエンザの主な症状は「かぜ」である[1]。患者の抵抗力などが低い場合、風邪のほか、肺炎や脳症などの症状もある。しかし、インフルエンザの基本的な症状は「かぜ」である。
(※ 範囲外: )またなお、「かぜ」(風邪)は症状の名前です。(病原体の名前ではない。) くしゃみが出たり、鼻水が出たり、ノドの粘膜が炎症したり鼻炎などの、ああいう症状のことを「かぜ」(風邪)と言います[2][3]
ときどき世間には、誤解で「かぜウイルス」という専用ウイルスがいるかのように誤解している人がいますが(インフルエンザウイルスとは別に「かぜウイルス」なるものがあると思ってるような人が世間にはチラホラいる)、しかし「かぜ」は症状名ですので、特定のウイルスには依存しません。「かぜ」をひきおこす原因ウイルスとしては、RSウイルスやインフルエンザウイルス[4]やコロナウイルスなどが「かぜ」の原因ウイルスとして知られています[5]


性感染症 編集

性行為などの性的接触によって感染する感染症を性感染症(せい かんせんしょう)という。

性感染症を放置してると、不妊症にもつながる。尿道や、子宮、膣、卵管など、性器の周辺の器官に炎症などを起こす可能性がある。性器の炎症のため、不妊症につながる場合がある。 とくに性感染症による危険な症例として、卵管の炎症により卵管がふさがったまま、子宮外で受精卵が着床して妊娠した場合におこる子宮外妊娠がある。子宮以外の卵管などで妊娠してしまい、そのまま胎児が成長すると、卵管などが破裂してしまうという、母体の死の危険もある、とても危険な病気である。

 
性感染症の連鎖
ある人の性的関係をもつということは、図のように、その相手が過去に性的関係をもった相手と、感染経路が、つなげっていることになる。もし、過去の交際相手の誰か1人が性感染症に感染していれば、図のつながっている人間は全員、感染している可能性がある。

性感染症は、一般に、治療を受けないと、けっして完治はせずに、感染を続けたままである。 性感染症は、感染しても自覚症状がない場合がある。

性感染症の治療は、性行為のパートナーも治療を受けるべきである。なぜならパートナーと同時に治療をしないと、片方が一度治療しても、パートナーとの性交で再感染をすることになるからである。

一般に性感染症の病原体は、感染者の精液や膣分泌液や血液に含まれる。

性感染症の有名な病気としては、性器クラミジア、淋菌、ヘルペス、尖形コンジローム、梅毒(ばいどく、syphilis)、エイズなどがある。(エイズについては別の章で記述。) 近年ではクラミジアの感染が増加の傾向にある。


エイズ以外の、クラミジアや淋菌感染症、ヘルペスなどの性感染症については、治療を受ければ一般には回復する。

女性の場合、性感染症の自覚症状が出ない場合もあるが、放置をしてると不妊や子宮外妊娠になる恐れがある。なので放置は危険である。 性病の自覚症状には、性差がある。


おもな性感染症 編集

  • 性器クラミジア
病名 性器クラミジア
病原体 クラミジア・トラコマティス
潜伏期間 1周間 ~ 3週間の程度
症状 <男性感染者> 尿道の痛みがあり、排尿時の痛みや尿道から膿(うみ)が出る。

<女性感染者> 自覚症状が軽いことが多いが、放置すると不妊などにつながることがある。
放置は危険である。おりものに膿のようなものが出る場合がある。
妊娠や出産の際に、母子感染をする場合もある。
治療法 抗生物質(こうせいぶっしつ)の内服。


  • 淋菌感染症
病名 淋菌感染症
病原体 淋菌
潜伏期間 2日 〜 9日の程度
症状 <男性感染者> 尿道の痛みがあり、排尿時の痛みや尿道から膿が出る。

<女性感染者> 自覚症状が軽いことが多いが、放置すると不妊につながることがある。
治療法 抗生物質(こうせいぶっしつ)の内服。


  • 性器ヘルペスウイルス感染症
病名 性器ヘルペスウイルス感染症
病原体 ヘルペスウイルス
潜伏期間 2日 ~ 10日の程度
症状 性器や、その周辺に「かゆみ」や水ぶくれが出る。
治療法 抗ウイルス剤の内服。


  • 尖圭(せんけい)コンジローマ
病名 尖圭(せんけい)コンジローマ
病原体 ヒトパピローマウイルス
潜伏期間 3週 ~ 8か月
症状 性器やその周辺に先のとがった いぼ。 痛みをともなわない。
治療法 外科(げか)的な切除など。


  • 梅毒(ばいどく)
病名 梅毒(ばいどく)
病原体 梅毒トレポネーマ
潜伏期間 3~4週
症状 感染後3〜6週ごろ、性器や足のつけ根にしこり。
約3か月後から全身に赤い斑点(はんてん)。
治療法 抗生物質の内服、注射など。


エイズ 編集

エイズの感染源のウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(ひとめんえきふぜんういるす、Human Immunodeficiency Virus; HIV)は免疫細胞で増殖し、そのため感染者の免疫機能が破壊され、感染者は他の多くの感染症などにかかりやすく成る。 このような免疫機能が破壊される病気を、後天性免疫不全症候群(こうてんせいめんえきふぜんしょうこうぐん、Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS、「エイズ」 )という。


エイズの感染経路の歴史的変遷

エイズは血液感染によっても感染をする。かつて日本では、血友病に対する非加熱血液製剤(ひかねつ けつえきせいざい)を経由して感染が広まったことがあった。(血友病そのものはエイズとは異なる病気である。血友病は、出血した際に、血液が凝固しなくなる病気。)

現在でのエイズの新規の感染の感染経路は、おもに性行為によるものである。

過去のエイズ感染の仕組みが不明だった時期には、同性間の性行為で広まると考えられていた時期もあったが、その後の研究で、異性間の性行為でも感染の危険性があることが分かった。


エイズの感染経路

多くの免疫細胞が含まれる精液や膣分泌液に、感染者のHIVウイルスも多く含まれる。 そのため、性行為時に感染することが多い。

また、血液感染をする。空気感染はしない。 エイズは遺伝はしないが、母子感染はする。出産時の出血や分泌液などの体液を通して感染する場合がある。


エイズは、感染しても、発症するまでの潜伏期間が長く、人にもよるが例えば10年ほどと長いので、感染の自覚をしづらい。症状が出ないと言っても、感染していないとは限らない。なので、感染が疑われる場合は、保健所などの専門の医療機関に相談を行うべきである。


エイズの予防 編集

治療薬は、現在では、ワクチンや抗生物質などは無く、開発されているエイズ治療薬はウイルスの増加を抑えるなどして進行を遅らせる薬だけである。

よって、エイズ予防が大事である。


血液感染の予防

まず、他人の血液には触れない。 そのほか、麻薬などの薬物中毒者による注射器の使い回しなどでも、血液感染はする。そもそも、麻薬などの違法薬物には手を出さないべきである。


性行為による感染の予防

HIVの感染で最も多いのは性行為による感染である。HIVが含まれる精液や腟分泌液が膣粘膜や亀頭の細かい傷に接触することで感染する。そのため、不特定多数との相手の性行為はなるべく控えるべきである。

 
使用前のコンドーム(突起部が精液だまり)

コンドームは、男性器にかぶせて精液の異性への接触を防ぐ避妊具である。コンドームを正しく使用することで精液の相手への接触を防げば、HIVの感染を防げる。

(※ 範囲外)避妊と性病予防の違い

(※ 避妊は中学では習わない。)

性行為のさい、もしくは性行のあとに、なんらかの方法で妊娠をしないようにする事を「避妊」(ひにん)という。

なお、避妊(ひにん)と性病の予防は異なる。たとえば、「ピル」という女性用の排卵の抑制剤では、性病の感染は防げない。

エイズの検査 編集

現在、保健所では、エイズの感染の検査が行える。ただし、感染してから約3ヶ月以内の場合は、まだエイズの影響が免疫機能には出ない。 HIVの検査の場合では、免疫機能の検査である抗体検査(こうたい けんさ)が行われる。

参考文献 編集

  1. ^ 中込治・神谷茂 共著『標準微生物学』医学書院、2016年1月15日 第12版 第2刷、469ページ、
  2. ^ 中込治・神谷茂 共著『標準微生物学』医学書院、2016年1月15日 第12版 第2刷、497ページ、
  3. ^ 北川昌伸・仁木利郎『標準病理学』、2015年3月25日 第5版 第1刷、397ページ
  4. ^ 中込治・神谷茂 共著『標準微生物学』医学書院、2016年1月15日 第12版 第2刷、469ページ、
  5. ^ 中込治・神谷茂 共著『標準微生物学』医学書院、2016年1月15日 第12版 第2刷、497ページ、