ここでは、位相幾何学の最も基礎的な概念である、位相について話します。

集合の自由さ

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集合は、ものを単に集めたものでした。 したがって、それらのものがどのように集められているかについては一切考えていません。

例えば、

X = { A, B, C }

という集合Xがあるとき、この要素A、B、Cがどのような関係にあるかは、まったく考えていないのです。 だから、例えば「AはCよりもBの近くにある」とか、「AとCが結びついている」とか、そういった情報は集合には一切ありません。 集合は、液体の中に「要素を表す小さな粒」が溶けている、といったイメージなのです。

距離空間としての考え方

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平面上に、△ABCがあるとします。 この△ABCは、ふつうは伸び縮みさせません。 つまり、線分AB、線分BC、線分CAのいずれかの長さの異なる三角形は違う三角形と考えるということです。

ユークリッド空間においても、非ユークリッド空間においても、図形は単なる点の集合ではなく、点同士の距離の情報ももっているのです。 もっとも、平面空間にある点同士が最初から距離の情報を持っているととらえることもできます。

どちらにせよ、このような空間では( それが二次元であれ三次元であれ )、点をいくつか取れば、その点同士の距離が必ず決まります。 このような空間を距離空間と言います。 小学校算数から高等学校数学までは、図形はすべて距離空間の上にあるものだと考えてきたということができます。

このような考え方では、伸び縮みした図形は異なる図形と考えるわけです。

位相空間の考え方

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この節の内容には誤りが指摘されています。

距離空間に対して、ある点とある点が「結びついているかどうか」に着目した空間の捕らえ方があります。 このようにして考えられた空間を、位相空間と言います。

具体的にどういうことなのか、位相の考え方から順に捕らえていきます。

位相

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△ABCと、集合Xがあります。 X = { A, B, C } です。

この集合Xは、それぞれの要素A、B、Cが結びついているかどうかは気にしません。 それに対し、△ABCでは、AとB、BとC、CとAは、もちろんお互いに結びついています。 そこで、集合Xの要素A、B、Cを、△ABCと点の結びつき方が似た形になるように結び付けた図形を考えることができます。 たとえば、AとBをぐにゃりと歪んだ線で結んでも構いません。要するに、結びついていればいいのです。

こうしてできたぐにゃぐにゃの図形は、AとBとCが相互に結びつき合っているという点で、△ABCと同じだと言えます。 このような、点の集合のそれぞれの要素に「結びつき方」を与える概念が位相( Topology )です。

同型

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ふたつの位相を持つ集合があるとき、集合の各要素をひとつひとつ対応させて、それらの対応した要素同士が、それぞれの集合の他の要素と同じように結びついているとき、それらの集合は互いに同型であると言います。 参考になる図などがあればよいと思いましたが、見つけ切れませんでした。

同型の例

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たとえば、先ほどの△ABCと、集合XのAとBとCをぐにゃぐにゃに結びつけた図形は、AとA、BとB、CとCをそれぞれ対応させれば、それぞれの要素がおなじ形で他のものと結びついています。 △ABCの点Aは点Bと点C、それぞれと結びついており、「集合XのAとBとCをぐにゃぐにゃに結びつけた図形」の点Aは、やはり点B、点Cと結びついています。具体的には、こういった図形同士のことを、同型といいます。

位相の素朴な定義

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これまで述べてきた事柄が、位相のもっとも基本的な考え方です。これを、簡単な定義としてまとめると、

位相とは集合の要素がどのように結びついているかという概念である。

ということができます。 これは、位相幾何学を学ぶ上で最も基本的な理解です。

位相空間や位相に関しては、多くの理論が存在します。関連項目に、参考になるウィキブックスやウィキペディアの書籍・項目を掲載しました。 位相に関してより深く理解したい、より根本的に捕らえたい、という人は、ぜひ参照してください。

関連項目

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