刑事訴訟法第212条
条文
編集(現行犯人・準現行犯人)
- 第212条
- 現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者を現行犯人とする。
- 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終ってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
- 犯人として追呼されているとき。
- 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
- 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
- 誰何されて逃走しようとするとき。
解説
編集- 「間もない」とは
- 「明らか」とは
参照条文
編集判例
編集- 窃盗(最高裁判決昭和30年12月16日)
- 刑訴第212条第2項第2号により現行犯人とみなされるためには、逮捕の瞬間に同号に掲記の物件を所持している必要があるか
- 刑訴第212条第2項第2号により現行犯人とみなされるためには、必ずしも逮捕の瞬間に同号掲記の物件を所持している必要はない。
- 銃砲刀剣類等所持取締令違反、傷害、公文書偽造(最高裁判決昭和31年10月25日)
- 刑訴第212条第1項にいう「現に罪を行い終つた者」にあたる一事例
- 某が飲酒酩酊の上甲特殊飲食店の玄関において、従業婦の胸に強打を加え、更に同家勝手口の硝子戸を故らに破損したため、同家主人が直ちに附近の巡査派出所の勤務巡査に届け出で、同巡査は現場に急行したところ、右従業婦から某の暴状を訴えられ、某は今乙特殊飲食店にいると告げられたので、破損箇所を検した上直ちに甲店より約20米隔てた乙店に赴き、手を怪我して大声で叫びながら洗足している某を逮捕したもので、その逮捕までに右犯行後3、40分を経過したに過ぎないものであるときは、刑訴第212条第1項にいう「現に罪を行い終つた者」にあたる現行犯人の逮捕ということができる。
- 窃盗(最高裁判決 昭和33年5月20日)警察官等職務執行法5条,刑法235条,刑訴法213条
- 掏摸現行犯逮捕手続において警察官等職務執行法第5条に違反しないと認められる場合
- 本件現行犯逮捕手続書によれば、所論司法警察員は挙動不審の被告人を看視中被告人が被害者のポケツトから品物を抜き取つたのを現認したので逮捕したというのであつて、抜き取りを現認する直前までは被告人が何らかの現行を行なおうとする様子を認めたという場合でないから、右警察員の措置は所論警察官等職務執行法5条(犯罪の予防及び制止)に反するところもなく、本件逮捕手続には何らの違法もないことが明らかである
- 窃盜、公務執行妨害(最高裁判決昭和33年6月4日)
- 刑訴第212条第1項にいう「現に罪を行い終つた者」にあたる事例
- 住居侵入の犯人がその現場から約30米はなれたところで逮捕された場合であつても、時間的には、住居侵入の直後、巡査が急報に接し自転車で現場にかけつけ、右の地点において犯人を逮捕したものであるときは、刑訴第212条第1項にいう「現に罪を行い終つた者」にあたる現行犯人の逮捕ということができる。
- 暴行、公務執行妨害(最高裁判決昭和39年10月27日)
- 現行犯人としての逮捕が適法であると認められた事例。
- 本件逮捕が適法である旨の原判断の結論は正当である。
- (原審判断の要旨)
- 被告人は現行犯人として逮捕されたものではなく、任意同行したものであると主張するが、浅草警察署勤務の甲乙外2名の警察官は警察庁本部からのaのクラブ「A」で若い者が乱暴しているから急行せよとの指令により右クラブに行き、入口で経営者より被告人がグラス2個を床に投げつけ損壊したとの説明を受けた様、乙外一名の巡査が店内地下室にはいつたところ、被告人の坐つているテーブルの上にビール瓶が横に倒れており、グラスの破片は既に取片づけてあつたけれども附近にビールが散乱しており、従業員が被告人を指示して被告人が乱暴した旨を述べたので、右両巡査は被告人に対し「コツプを投げたことで本署に行つて貰いたい」と告げたところ被告人は「俺が何を悪いことをした、逮捕するなら令状を持つて来い」等の暴言をはいてなかなか応ぜず、漸く甲巡査部長の説得によつて同行に応じたのであるが、「ああ警察に行つてやるよ」等といつて相変らず不遜の態度を示し、自動車に乗る際も「お前も一緒に乗れ」といつて甲の袖を引いたりして、素直に同行に応じたものではなかつたことが認められるのであつて、右警察官が被告人に対し「逮捕する」との言葉を用いたかどうかについては必ずしも明確ではないが、被告人は警察官の強制によつてその要求は拒否し難くこれに応じたものであつて、決して被告人の意思にもとづき警察官と同道して警察に任意出頭することを承諾したものとは認められないから、警察官に逮捕されたというべきで、右逮捕は刑訴法第212条第2項第1号の要件を具備するものと認められる。
- (原審判断の要旨)
- 放火未遂、爆発物取締罰則違反、公務執行妨害(最高裁決定昭和42年9月13日)
- 刑訴法第212条第2項第4号にいう「罪を行い終つてから間がないとき」および「誰何されて逃走しようとするとき」にあたるとされた事例
- 犯罪の発生後直ちに現場に急行した警察官が、ひきつづき犯人を捜索のうえ、犯行後4、50分を経過した頃、現場から約1,100メートルの場所で逮捕行為を開始したときは、刑訴法第212条第2項にいう「罪を行い終つてから間がないとき」にあたり、また、警察官が犯人と思われる者を懐中電灯で照らし、同人に向つて警笛を鳴らしたのに対し、相手方がこれによつて警察官と知つて逃走しようとしたときは、口頭で「たれか」と問わないまでも、同条項第4号にいう「誰何されて逃走しようとするとき」にあたる。
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