刑法第186条
条文
編集(常習賭博及び賭博場開張等図利)
- 第186条
- 常習として賭博をした者は、3年以下の拘禁刑に処する。
- 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。
改正経緯
編集2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
解説
編集参照条文
編集判例
編集- 賭場開帳図利、同幇助(最高裁判決 昭和24年6月18日)
- 賭博開帳図利罪における利益を得る目的の意義
- 賭博開帳の罪は、利益を得る目的でもつて、賭博を為さしめる場所を開設する罪であり、その利益を得る目的とは、その賭場において、賭博をする者から寺錢、または手數料等の名儀をもつて、賭場開設の對價として、不法な財産的利得をしようとする意思のあることをいうのである。
- 賭場開張図利、同幇助、銃砲等所持禁止令違反(最高裁判決 昭和25年9月14日)刑法第168条2項,旧刑訴法第360條1項
- 賭場開帳図利罪については開帳者が收得した利益の価額数量を判示する必要はない
- 賭場開帳図利罪において図利の事実がその犯罪構成要件たることは勿論であるが、その収得せんとした利益の価額、数量等は必ずしもこれが構成要件ではない。原判決では、被告人が判示の日時頃、判示の各賭場を開帳し、多数の賭客を招き判示の賭博をなさしめて寺銭を徴して利を図つたものであることが説示されているのである。從つて原判決はその徴した寺銭の金額を明示しなかつたとしても、なほ処罰の対象とされた被告人の賭場開帳図利行為を具体的に説示したものというに十分である。
- 賭場開帳図利罪の成立要件と罪質
- 賭場開帳図利罪は犯人が自ら主宰者となり、その支配下に賭博をさせる一定の場所を提供し、寺銭入場料等の名目で利益の收得を企図することによつて成立するのであつて、所論のごとく慣行犯(常習犯)と解すべきいわれはない。
- 賭場開張図利(最高裁判決 昭和25年11月22日)
- 刑法第186条第2項賭場開張図利罪規定の合憲性
- 刑法第186条第2項賭場開張図利罪の規定は、憲法第13条に違反しない。
- 賭博行為は、一面互に自己の財物を自己の好むところに投ずるだけであつて、他人の財産権をその意に反して侵害するものではなく、従つて、一見各人に任かされた自由行為に属し罪悪と称するに足りないようにも見えるが、しかし、他面勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲法27条1項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである。これわが国においては一時の娯楽に供する物を賭した場合の外単なる賭博でもこれを犯罪としその他常習賭博、賭場開張等又は富籖に関する行為を罰する所以であつて、これ等の行為は畢竟公益に関する犯罪中の風俗を害する罪であり(旧刑法第2篇第6章照)、新憲法にいわゆる公共の福祉に反するものといわなければならない。ことに賭場開張図利罪は自ら財物を喪失する危険を負担することなく、専ら他人の行う賭博を開催して利を図るものであるから、単純賭博を罰しない外国の立法例においてもこれを禁止するを普通とする。されば、賭博等に関する行為の本質を反倫理性、反社会性を有するものでないとする所論は、偏に私益に関する個人的な財産上の法益のみを観察する見解であつて採ることができない。
- 政府乃至都道府県が賭場開張図利乃至富籤罪と本質上同一の行為を為すことによつて右犯罪行為を公認したものといえるか
- 賭博及び富籤に関する行為が風俗を害し、公共の福祉に反するものと認むべきことは前に説明したとおりであるから、所論は全く本末を顛倒した議論といわなければならない。すなわち、政府乃至都道府県が自ら賭場開張図利乃至富籤罪と同一の行為を為すこと自体が適法であるか否か、これを認める立法の当否は問題となり得るが、現に犯罪行為と本質上同一である或る種の行為が行われているという事実並びにこれを認めている立法があるということだけから国家自身が一般に賭場開張図利乃至富籤罪を公認したものということはできない。
- 常習賭博(最高裁判決 昭和26年3月15日)刑法第185条,旧刑訴法第360条1項
- 賭博常習者の意義
- 賭博常習者というのは賭博を反覆累行する習癖を有する者の義であつて、必ずしも所論のような織業的賭博、いわゆる博賭打ち又は遊人或は定職があつても専ら勝負事に耽つて、半職業化したような特殊な存在をいうものでないことは当裁判所屡次の判例とするところであつて、今なおこれを変更する必要を認めない。
- 「カブ」と称する賭博と賭博方法の判示の程度
- 「カブ」と俗に称する賭博が偶然の事実によつて勝敗が決する博戯であることは顕著の事実であるばかりでなく、原判決は「第四被告人Aは……前示カブ………」と判示しているのであるから右判示は判示第一の一の被告人Bについての判示と同じく「被告人Aは………金銭を賭し、花札を使用してカブと称する賭銭博奕をした」旨を判示しているものに外ならないこと明白である。されば、右原判示はたとえ「カブ」と俗に称する博奕の方法内容を仔細に判示しなくとも花札の使用による偶然のゆえいに関し財物の得喪を争うものであることを判示したものと理解することができるから賭博の判示としていささかも欠くるところがないといわなくてはならぬ。
- 常習賭博(最高裁決定 昭和26年4月10日)
- 常習賭博罪における数個の賭博行為と罪数
- 常習賭博罪における数個の賭博行為は、包括して単純な一罪を構成する。
- 賭博場開帳図利幇助等(最高裁決定 昭和48年2月28日)
- 賭博場開張図利罪と賭博者の集合の要否
- 賭博場開張図利罪が成立するためには、必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しない。
- いわゆる野球賭博の開催が賭博場開張図利罪を構成するとされた事例
- 一般多数人をしてプロ野球の勝敗に関する賭銭博奕(いわゆる「野球賭博」)を行なわせて利を図るため、ある場所に電話、帳面、プロ野球日程表等を備えつけ、同所において、電話により賭客の申込みを受け、あるいは同所外で受けた賭客の申込みを集計して整理し、また、当該プロ野球試合の結果に基づいて勝者に支払うべき賭金およびその中から徴収すべき寺銭の集計などをし、さらに寺銭を徴収する等の方法により行なつた本件「野球賭博」開催の所為は、賭博場開張図利罪を構成する。
- 常習賭博(最高裁判決 昭和54年10月26日)
- 常習賭博罪の常習性が認められるとされた事例
- 長期間営業を継続する意思のもとに、多額の資本を投下して多数の賭博遊技機を設置した遊技場の営業を開始し、警察による摘発を受けて廃業するまでの三日間、来場した多数の遊技客と賭博をしたなど原判示の事情のもとにおいては、右遊技場の営業者に常習賭博罪の常習性を認めることができる。
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