刑法第230条
条文
編集(名誉
- 第230条
- 公然と事実を摘示し、人の名誉を
毀 損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。 - 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
改正経緯
編集2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役若しくは禁錮
- (改正後)拘禁刑
解説
編集社会的評価を害するおそれのある状態を発生させることで既遂に達する抽象的危険犯である。
参照条文
編集判例
編集- 大審院昭和13年2月28日判決
- 名誉毀損罪ノ既遂ハ公然人ノ社会的地位ヲ貶スニ足ルヘキ具体的事実ヲ摘示シ名誉低下ノ危険状態ヲ発生セシムルヲ以テ足リ被害者ノ社会的地位ノ損傷セラレタルコトハ之ヲ必要トセス
- 名誉毀損(最高裁判決 昭和28年12月15日 「片手落」事件)
- 相手方の氏名を明示しない公務員に関する新聞記事が名誉毀損罪を構成する事例
- 奈良県某町で旬間新聞を編集発行している者が、同町議会議員某において自警廃止論より同存置論に変節したのを批判するにあたり、同人が片手を喪失していることと結びつけ某日の同紙上に「南泉放談」と題し、同町民に呼びかけた文中に「当町議立候補当時の公約を無視し、関係当局に廃止の資料の提出を求めておきながら、わずか二、三日後に至つて存置派に急変したヌエ的町議もあるとか。君子は豹変するという。しかも二、三日のわずかの期間内での朝令暮改の無節操振りは、片手落の町議でなくては、よも実行の勇気はあるまじく、肉体的の片手落は精神的の片手落に通ずるとか?石田一松ではないが、ハヽ呑気だねとお祝詞を申上げておく。」と執筆掲載しこれを頒布した場合には、公然事実を摘示して右町議会議員某の名誉を毀損したものとして、名誉毀損罪が成立する
- 名誉毀損(最高裁判例 昭和51年03月23日)刑法第35条,刑法第230条の2
- 名誉毀損の摘示事実につき真実と誤信する相当の根拠がないとされた事例
- 被告人以外の特定人が真犯人である旨の名誉毀損の摘示事実については、本件に現われた資料に照らすと、真実と誤信するのが相当であると認めうる程度の根拠は、存在しない。
- 弁護人が被告人の利益擁護のためにした行為と刑法上の違法性の阻却
- 弁護人が被告人の利益を擁護するためにした行為につき刑法上の違法性の阻却を認めるためには、それが弁護活動のために行われたものであるだけでは足りず、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮して、法秩序全体の見地から許容されるべきものと認められなければならないのであり、かつ、その判断にあたつては、その行為が法令上の根拠をもつ職務活動であるかどうか、弁護目的の達成との間にどのような関連性をもつか、弁護を受ける被告人自身がこれを行つた場合に刑法上の違法性の阻却を認めるべきどうかの諸点を考慮に入れるのが相当である。
- 弁護人が被告人の利益擁護のためにした名誉毀損行為につき正当な弁護活動として刑法上の違法性が阻却されないとされた事例
- 被告人以外の特定人が真犯人であることを広く社会に報道して、世論を喚起し、被告人を無罪とするための証拠の収集につき協力を求め、かつ、最高裁判所の職権発動による原判決の破棄ないしは再審請求の途をひらくため、右の特定人が真犯人である旨の事実摘示をした名誉毀損行為は、弁護人の相当な弁護活動として刑法上の違法性を阻却されるものではない。
- 名誉毀損の摘示事実につき真実と誤信する相当の根拠がないとされた事例
|
|