例85
を微分せよ.
解説
であるから,
ここで
であるから,
よって最初に戻って
すなわち が複素数のときも,実数のときと同じ公式,
が成立する.
この例題から,複素係数の微分方程式,
(4.4)
の解が,
であることが分かる.式 (4.4) において
とおいて,実部と虚部に分けると,実係数の連立方程式,
(4.4b)
となる[1].
この解は の実部と虚部であって,
となる.ここに である[2][3].
あるいは と極形式で表すと,
を得る[4][5].
さて 式 (4.4) を微分記号 を用いて表すと,
と書ける.この式に を代入すると,
となることは,複素数値関数の微分の基本的性質Ⅰの (2) から容易に分かる[6].よって,
(定数)
であるから,上述の解 が得られる.この技法を一般化して,微分方程式,
(4.5)
の解を求めてみよう.
とおいて,上式に代入すると,
となる.これより,
高々
次の
の多項式
を得る.この多項式の係数は複素数でよい.また式 (4.5) の解の基本系は,
である.
次にもっと一般の複素係数の微分方程式,
(4.6)
を考えよう.ここに係数 はすべて複素数とする.この場合も実係数の微分方程式の場合と同様に,重ね合わせの原理,定常性の原理などが成立することは明らかであろう.複素関数の微分に関する基本的性質Ⅰ・Ⅱがあるので,前章での証明をなんら変更する必要はない.
また,微分方程式(4.6)に付随する特性多項式が,
と因数に分解できるとき,
も成立することも同様である.前章では述べなかったが,係数が実数であっても複素数であっても,次の補題が成立する.
補題 4.1
ここに, と は互いに素ならば,
かつ
が成り立つ.
証明
と が互いに素であるから,
となる多項式 が存在する.[7]
よって,
が成り立つが,仮定を満たすとき左辺は となるから, を得る.
系
同じ条件の下に,
ならば, と は 1 次独立である.
証明は演習問題とする.[8]
以上は同次方程式の場合だけを述べたが,非同次方程式の場合も前章と同じ結果が成立する.
- ^
- ^
連立微分方程式式 (4.4b) を実際に解いてみる.
…①
…②
にて,①の両辺を微分すると,
…①'
①'に②を代入して,
…③
①より だからこれを③に代入して,
これが連立方程式から導かれた,解くべき 2 階の微分方程式で,初期条件は ,.
として微分方程式をラプラス変換すると,
でラプラス変換公式を当てはめられるようにさらに変形して,
この原像は,
これで が再現できた.①より を計算すると,
- ^
の実部と虚部を実際に取り出してみる.
と先の連立微分方程式の解と一致する.
- ^
にて の加法定理に持ち込む.,したがって だから,
も同様に,
- ^
で を極形式に変形するとどうなるか?
- ^
.
これは 補題 3.3 の (ii) を再現している.
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多項式における互いに素をこのように定義してもよい.ベズーの等式によれば整数 が互いに素であるとき, なる整数 が存在し,これは多項式であっても同じ.
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を導く.
…① の両辺に を働かせる.
…②
ここで,,一方 で補題4.1より, はありえない,すなわち .
②が成立するためには が必要.
同様にして①の両辺に を働かせれば, の結論を得る.よって .以上により は 1 次独立である.