コンメンタール労働基準法

条文

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(労働時間等に関する規定の適用除外)

第41条  
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
  1.  別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
  2.  事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
  3.  監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

解説

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以下の者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない。
  1. 農業・水産業に従事する者(別表第1第6号又は第7号 - 林業を除く)
    • 天候などの自然条件に著しく影響されることから、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外となってたが、林業については1994年(平成6年)4月1日からこれらの規定も適用されることになった。
  2. 管理・監督の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
    1. 「管理・監督の地位にある者」-いわゆる管理職適用除外の根拠
      一般的には局長、部長、工場長等労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場に在る者の意であるが、名称にとらはれず出社退社等について厳格な制限を受けない者について実体的に判別すべきもの[1]
    2. 「機密の事務を取り扱う者」(機密事務取扱者)
      役員秘書などが典型とされるが、会社の枢要を企画する部門の従業員なども、これに含まれる。
      秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であつて、出社退社等について厳格な制限を受けない者[1]
  3. 監視又は断続的労働に従事する者で、行政官庁の許可を受けたもの
    1. 監視に従事する者
      一定の部署で監視することを本来の業務とし、常態として身体の疲労又は精神的緊張の少ない者[1]
      • 立法時は、門番・守衛などを想定。犯罪人の看視、交通関係の監視等精神緊張の著しく高いものは除外。現在において、入退出の管理が精神的緊張等が少ないかは疑問。
    2. 断続的労働に従事する者
      休憩時間は少ないが手待時間の多い者[1]
      • 宿直・日直業務(労働基準法施行規則第23条
        常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり定時的巡視や非常事態意に備えての待機等を目的とするもの。
  4. 深夜業に関する割増賃金の適用除外はない[1]

「名ばかり管理職」の問題

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名ばかり管理職」とは、店長・課長・マネージャーなど、名称だけ役職がついているが実態は管理職としての権限も与えられておらず本来、時間外手当の支払いの適用除外とされるべきではないのに、時間外手当が払われていない従業員をいい、長時間労働における時間外手当支払いの潜脱の目的でなされるものである。
したがって、実質的に管理・監督の権限などが与えられてはおらず、管理・監督される従業員等と間に明確な差異がない場合は、適用が除外された労働時間、休憩及び休日に関する規定が遡って適用され、その間に実施された時間外労働等については、未払いの時間外手当として、使用者に請求することができる。
実質的に「管理監督者(管理職)」とされる基準
判例・行政取扱では、概ね以下の3点を満たす場合、「管理監督者」と認め、これを欠く場合、一般労働者としている(基発第 0909001号平成20年9月9日報道発表)。対象は、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗」であり、実際の例も同業界が多かったこともあるが、他業種に対しても一般化でき、いわゆる「管理職」の要件を求めることができる。
  1. 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容及び責任と権限を有していること。
    • 労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること。
    • 労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要がある。「課長」「リーダー」といった肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎないような者は、 管理監督者とは言えない。
      以下の事項についての「責任と権限」があることを要する。
      1. 採用 - パート・アルバイトなどの採用(人選も含む)に関与している。
      2. 解雇 - パート・アルバイトなどの解雇に関与している。
      3. 人事考課
      4. 労働時間の管理 - 労働時間の管理(シフトや時間外労働の命令)を実施している。
  2. 現実の勤務態様が、労働時間等の規制になじまないようなものであること
    • 管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要がある。労働時間について厳格な管理をされているような場合は、 管理監督者とは言えない。
      1. 遅刻、早退等に関する取扱い
        • 遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いはなされないこと。
        • ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払の観点から労働時間の把握や管理が行われることから、これらの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはならない。
      2. 労働時間に関する裁量
        • 「営業時間中は店舗に常駐しなければならない」あるいは「アルバイト・パート等の人員が不足する場合にそれらの者の業務に自ら従事しなければならない」などにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
          業務を継続するに足る十分な要員が配置されておらず、恒常的に本人の労働が期待されている場合
      3. 部下の勤務態様との相違
        • 管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
  3. 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること
    • 管理監督者は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていることを要する。
      1. 基本給、役職手当等の優遇措置
        • 基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する補強要素となる。
      2. 支払われた賃金の総額
        • 一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となる。
      3. 時間単価
        • 実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となる。特に、当該時間単価に換算した賃金額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となる

参照条文

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判例

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脚注

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  1. ^ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 労働基準法の施行に関する件

前条:
労働基準法第40条
(労働時間及び休憩の特例)
労働基準法
第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
次条:
労働基準法第41条の2
(高度プロフェッショナル制度)


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