法学民事法コンメンタール民事訴訟法

条文

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第197条  
  1. 次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。
    1. 第191条第1項の場合
    2. 医師、歯科医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、弁護人、公証人、宗教、祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合
    3. 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合
  2. 前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。

解説

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  • 第191条(公務員の尋問)

参照条文

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判例

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  1. 文書提出命令申立て却下決定に対する許可抗告事件(最高裁決定 平成12年3月10日)民訴法220条4号ロ,民訴法221条民訴法223条4項
    1. 証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対し不服の申立てをすることの許否
      証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできない。
    2. 民訴法197条1項3号所定の「技術又は職業の秘密」の意義
      民訴法197条1項2号所定の「技術又は職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの又は当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいう。
  2. 文書提出命令申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件(最高裁決定 平成16年2月20日)民訴法191条,民訴法197条1項1号,民訴法220条3号,民訴法220条4号ロ
    1. 県が漁業協同組合との間で漁業補償交渉をする際の手持ち資料として作成した補償額算定調書中の文書提出命令申立人に係る補償見積額が記載された部分が民訴法220条4号ロ所定の文書に該当するとされた事例
      県が,漁業協同組合との間でその所属組合員全員が被る漁業損失の総額を対象とする漁業補償交渉をする際の手持ち資料として作成した補償額算定調書中,その総額を積算する過程で算出した文書提出命令申立人に係る補償見積額が記載された部分は,県が各組合員に対する補償額の決定,配分を同組合の自主的な判断にゆだねることを前提とし,そのために上記総額を算出する課程の個別の補償見積額は上記の交渉の際にも明らかにしなかったこと,上記部分が開示されることにより,上記前提が崩れ,同組合による補償額の決定,配分に著しい支障を生じるおそれがあり,今後,県が同様の漁業補償交渉を円滑に進める際の著しい支障ともなり得ることなど判示の事情の下においては,民訴法220条4号ロ所定の文書に該当する。
    2. 民訴法220条4号ロに該当する文書と同条3号に基づく提出義務
      公務員の職務上の秘密に関する文書であって,その提出により公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるものについては,民訴法220条3号に基づく提出義務を認めることはできない。
  3. 文書提出命令申立て一部認容決定に対する許可抗告事件(最高裁決定 平成16年11月26日)民訴法220条4号ニ,民訴法220条4号ハ,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)242条3項,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項
    1. 保険管理人によって設置された弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会が作成した調査報告書が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないとされた事例
      破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため,上記命令の実行として弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会を設置し,当該調査委員会から上記調査の結果が記載された調査報告書の提出を受けたという事実関係の下では,当該調査報告書は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。
    2. 民訴法197条1項2号所定の「黙秘すべきもの」の意義
      民訴法197条1項2号所定の「黙秘すべきもの」とは,一般に知られていない事実のうち,弁護士等に事務を行うこと等を依頼した本人が,これを秘匿することについて,単に主観的利益だけではなく,客観的にみて保護に値するような利益を有するものをいう。
    3. 保険管理人によって設置された弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会が作成した調査報告書が民訴法220条4号ハ所定の「第197条第1項第2号に規定する事実で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」に当たらないとされた事例
      破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため,上記命令の実行として弁護士及び公認会計士を委員とする調査委員会を設置し,当該調査委員会から上記調査の結果が記載された調査報告書の提出を受けたという事実関係の下では,当該調査報告書は,民訴法220条4号ハ所定の「第197条第1項第2号に規定する事実で黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書」に当たらない。
  4. 証拠調べ共助事件における証人の証言拒絶についての決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件(最高裁決定 平成18年10月3日)憲法21条
    1. 民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができるかどうかを判断する基準
      民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきである。
      • 民訴法は,公正な民事裁判の実現を目的として,何人も,証人として証言をすべき義務を負い(同法190条),一定の事由がある場合に限って例外的に証言を拒絶することができる旨定めている(同法196条,197条)。そして,同法197条1項3号は,「職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合」には,証人は,証言を拒むことができると規定している。ここにいう「職業の秘密」とは,その事項が公開されると,当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうと解される(最高裁平成11年(許)第20号同12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁参照)。もっとも,ある秘密が上記の意味での職業の秘密に当たる場合においても,そのことから直ちに証言拒絶が認められるものではなく,そのうち保護に値する秘密についてのみ証言拒絶が認められると解すべきである。そして,保護に値する秘密であるかどうかは,秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられるというべきである。報道関係者の取材源は,一般に,それがみだりに開示されると,報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ,将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり,報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので,取材源の秘密は職業の秘密に当たるというべきである。そして,当該取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきことになる。
    2. 民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができる場合
      民事事件において証人となった報道関係者は,当該報道が公共の利益に関するものであって,その取材の手段,方法が一般の刑罰法令に触れるとか,取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく,しかも,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため,当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く,そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には,民訴法197条1項3号に基づき,原則として,当該取材源に係る証言を拒絶することができる。
      • 報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき,重要な判断の資料を提供し,国民の知る権利に奉仕するものである。したがって,思想の表明の自由と並んで,事実報道の自由は,表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあることはいうまでもない。また,このような報道機関の報道が正しい内容を持つためには,報道の自由とともに,報道のための取材の自由も,憲法21条の精神に照らし,十分尊重に値するものといわなければならない(最高裁昭和44年(し)第68号同年11月26日大法廷決定・刑集23巻11号1490頁参照)。取材の自由の持つ上記のような意義に照らして考えれば,取材源の秘密は,取材の自由を確保するために必要なものとして,重要な社会的価値を有するというべきである。
      • 当該報道が公共の利益に関するものであって,その取材の手段,方法が一般の刑罰法令に触れるとか,取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく,しかも,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため,当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く,そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には,当該取材源の秘密は保護に値すると解すべきであり,証人は,原則として,当該取材源に係る証言を拒絶することができると解するのが相当である。
  5. 文書提出命令に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件(最高裁決定 平成19年12月11日)民訴法220条4号ハ
    1. 金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について,当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合に,同情報は,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるか
      金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について,当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には,同情報は,金融機関がこれにつき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有するときは別として,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されない。
    2. 金融機関と顧客との取引履歴が記載された明細表が,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえないとして,同法220条4号ハ所定の文書に該当しないとされた事例
      A,Bを当事者とする民事訴訟の手続の中で,Aが金融機関Cを相手方としてBとCとの間の取引履歴が記載された明細表を対象文書とする文書提出命令を申し立てた場合において,Bが上記明細表を所持しているとすれば民訴法220条4号所定の事由のいずれにも該当せず提出義務が認められること,Cがその取引履歴を秘匿する独自の利益を有するものとはいえないことなど判示の事情の下では,上記明細表は,同法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえず,同法220条4号ハ所定の文書に該当しない。
  6. 文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件(最高裁決定 平成20年11月25日)民訴法220条4号ハ,民訴法223条,民訴法337条
    1. 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しないとされた事例
      金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,次の1.,2.の事情の下では,上記文書は,当該金融機関の職業の秘密が記載された文書とはいえず,民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しない。
      1. 当該金融機関は,上記情報につき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有しない。
      2. 当該顧客は,上記民事訴訟の受訴裁判所から上記情報の開示を求められたときは,次のア,イなどの理由により,民訴法220条4号ハ,ニ等に基づきこれを拒絶することができない。
        ア 当該顧客は,民事再生手続開始決定を受けており,それ以前の信用状態に関する上記情報が開示されても,その受ける不利益は軽微なものと考えられる。
        イ 上記文書は,少なくとも金融機関に提出することを想定して作成されたものであり,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていないものとはいえない。
    2. 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が行った顧客の財務状況等についての分析,評価等に関する情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しないとされた事例
      金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客の財務情報等を基礎として行った財務状況,事業状況についての分析,評価の過程及びその結果並びにそれを踏まえた今後の業績見通し,融資方針等に関する情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,次の1.,2.などの判示の事情の下では,上記情報は,当該金融機関の職業の秘密には当たるが,保護に値する秘密には当たらないというべきであり,上記文書は,民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しない。
      1. 当該顧客は,民事再生手続開始決定を受けており,それ以前の財務状況等に関する上記情報が開示されても,その受ける不利益は小さく,当該金融機関の業務に対する影響も軽微なものと考えられる。
      2. 上記文書は,上記民事訴訟の争点を立証する書証として証拠価値が高く,これに代わる中立的・客観的な証拠の存在はうかがわれない。
  7. 検証物提示命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件(最高裁決定 令和3年3月18日)電気通信事業法4条
    1. 電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者と民訴法197条1項2号の類推適用
      電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者は,民訴法197条1項2号の類推適用により,職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて証言を拒むことができる。
    2. 電気通信事業者は,その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され,又は記録された文書又は準文書を検証の目的として提示する義務を負うか
      電気通信事業者は,その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され,又は記録された文書又は準文書について,当該通信の内容にかかわらず,検証の目的として提示する義務を負わない。

前条:
第196条
(証言拒絶権)
民事訴訟法
第2編 第一審の訴訟手続

第4章 証拠

第2節 証人尋問
次条:
第198条
(証言拒絶の理由の疎明)
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